第67話:完成した要塞と、どこまでも続く快適な日々
「すごい……すごいですアレク様! これが……私たちの求めていた、アレク様の最高のお部屋なんですね!」
アリスさんが特注のふかふかとした高級絨毯の上で、まるで小さな少女のように目をキラキラと輝かせながら満面の笑みで歓声をあげている。
その足元ではガルムがどこか誇らしげな表情を浮かべながら、最高級の革製スリッパをピカピカになるまで丹念に磨き上げていた。要塞の至る所に組み込まれた魔導音響の術式からは、まるで貴族のサロンにいるかのような極上のクラシック音楽が優雅に響き渡っている。
その繊細で美しい音色にルードもうっとりと深々と酔いしれており、小さなルルは庭園エリアに生い茂る青々とした特別な草花の上で、心地よい温風を感じながら幸せそうに丸くなっている。
「ふぅ……これでようやく、誰にも邪魔されることなく、理想のインドア生活が送れます」
要塞の中央リビングで、私は手触りの良いふかふかのソファに深々と腰掛け、焼き立ての香ばしいクロワッサンと温かいカフェオレを口にした。
この要塞は古代の遺産『創世の神座』の神秘的な力と高度な複合術式により、大空を自在に飛び、地底を深く潜り、どこへでも世界中の好きな場所へと瞬時に移動できる優れものだ。
外の世界で魔王軍がどれほど派手に暴れていようが、人間界で複雑な国家の陰謀がどれだけ渦巻いていようが、この要塞の内部は古代障壁と環境調整の付与術式により、完全に絶対不可侵かつ完璧な快適空間が保たれている。
私としてはただ、人間として生きていく上で最低限必要となる快適な居住環境と、平穏な引きこもり生活を確保したに過ぎないのだが、仲間たちがこうして心から喜んでくれているのなら、苦労して要塞の設計と構築を行った甲斐があったというものだ。
どれだけ外の情勢が荒れていようと、この分厚い外壁の内側には一切の騒音も理不尽な外圧も届かない。この、外界から完全に遮断された静寂こそが、私にとって何よりも代えがたい至高の財産なのである。
◇
その頃、要塞の外の荒野では――
「なんだと……!? アレクのマイホームが、ついにこの手で完成しただと……!?」
緊急報告を受け取った実の兄レオンが、感動のあまり大粒の涙をハラハラと流しながら、王国の最高機密書類に次々とサインしていた。
「よし、ただちにこの要塞を『王国特命絶対不可侵領域』として全国家に通達せよ! 寄ってくる害虫や余計な外圧は、すべてこの私が裏で完璧に処置する! アレクの平穏を脅かす者は、我が国の国家権力と全戦力をもって全力で潰す!」
相変わらず兄が裏で勝手に国家権力をフル動員し、改心した元刺客たちを使い走りにしていることなど、要塞の中で静かに温かいお茶を飲み、読書に浸る私が知る由もない。
私としては、ただ平穏に引きこもっていられれば、それで十分なのだが。
「アレク様、お茶の準備が整いました。次は何の本を読みますか?」
「そうですね、アリスさん。まずはお茶をお代わりしてから、ゆっくりと続きを読むとしましょう」
外界の面倒なしがらみや大層な世界情勢など、私にはまったく関係のないことです。
室温21.5度、湿度45%の完璧に管理された理想郷のような環境に包まれながら、私は今日も今日とて、最高に平和で省エネなマイホームライフを満喫し続けるのでした。
第一部 完
ここまで『【部屋で快適に過ごす】とかいう不遇スキル、実はダンジョンの概念を書き換える神スキルでした』
第一部をお読みいただき、本当にありがとうございました!
引きこもりライフを満喫したいだけなのに、なぜか周りが勝手に大騒ぎして最高級の要塞まで完成させてしまう主人公・アレクと、彼を全力で(そして少し過剰に)支える個性豊かな仲間たちの日常、いかがでしたでしょうか。
外の世界では兄のレオンをはじめとする面々が相変わらずバタバタと走り回っていることとは裏腹に、室温と湿度を完璧に保った部屋でお茶をすするアレクのマイペースぶりを、少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。
皆様の温かい応援のおかげで、無事に第一部を完結させることができました。
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これからもマイペースに、かつ全力で快適なインドア生活を追求していくアレクたちの行く末を、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、第二部でお会いしましょう!




