第3話:五歳――神託の儀と、最低の「ゴミスキル」 ①
五歳の誕生日。
神殿の大聖堂は、異様な熱気と緊張感に包まれていた。
天井の高い大聖堂には、真っ赤な絨毯が敷かれている。
その両脇を埋め尽くすのは、親族やギルド関係者だけでなく、噂を聞きつけた新聞記者や王立アカデミーのスカウトたちだった。
「来たぞ……ヴァルハイト家の『神童』だ……」
「見ろ、あの落ち着き払った歩調を……! 余計な力みを一切削ぎ落とし、プレッシャーすら無効化している……!」
ざわめく大聖堂の中を、私は静かに歩いた。
(……いや、レッドカーペットで足をとられて転ぶと痛いから、ゆっくり歩いてるだけなのだが。)
周りの大人たちは興奮しているが、私にとって今日の儀式は単なる『ガチャ引き』に過ぎない。
私の目標は一貫している。「絶対に怪我をせず、安全かつ快適にダンジョン攻略(作業)を終えること」だ。
『聖剣技』なら敵を一瞬で倒せて安全。『極大爆炎魔法』なら遠くからボタン一つで全滅させられて安全。
どちらが出ても「安全に攻略するための便利ツール」としてどう使い倒すか、頭の中でコンボの組み立てはできていた。
祭壇の前で足を止める。
重厚な法衣を纏った大神官が、静かに頷いた。
「アレク・ヴァルハイト。神の与えし祝福を受け入れなさい」
「はい」
冷たい『神託の石盤』が、私の額に当てられる。
直後——石盤が、ふっと淡い光を帯びた。
大聖堂を包む息をのむような静寂。
「おお……きたぞ……!」
父が身を乗り出し、記者たちが一斉にペンを走らせる。
石盤の表面に、ゆっくりと古代文字が刻まれていく。
(よし、来た……!)
どんな戦闘補助ツールが手に入るのか。
私は期待を込めて、刻まれていく文字を凝視した。




