第2話:三歳から四歳――積み重ねた努力と高まる期待 ②
四歳になる頃には、父の書斎にある本はほぼ読破していた。
知識が頭に入ると、今度は身体の管理に意識が向く。
ゲームで言えば、コンディション管理だ。幼少期に無茶な負荷をかけて『骨格歪み』や『成長阻害』のデバフを負うのは、育成における最大のプレイングエラーだ。
だからこそ、私は自重トレーニングと栄養・睡眠の管理を徹底した。
「アレク、今日も剣術指南の前に走るのか?」
庭に出てきた父が尋ねてくる。
「ううん。きょうは、ストレッチだけ」
私は自分のふくらはぎをぽんぽんと叩いた。
「ここ、すこしハリがある。むりすると、ケガする」
さらには食堂でも、野菜ばかりの皿を遠ざけ、肉とゆで卵を指さして「これ、もっと食べる」と要求し、食後はすぐにお風呂へ向かった。
自分の身体は、将来ダンジョン攻略で使う『唯一の機材』だ。メンテ不足で壊すのは三流のやることだし、何より怪我をして痛い思いをするのも、湿布を貼る無駄な時間を過ごすのも嫌だった。
だが、私の行動を見ていた父の表情が、どんどん引きつっていった。
「な、なんという……」
父はプルプルと手を震わせ、私の両肩を掴んだ。
「四歳にして……言葉足らずながら、すでに己の肉体の変調を完璧に感知し、必要な栄養と疲労回復のプロセスを導き出しているというのか……!? 感情に流されず、完璧なコンディショニングを行う……これは……すでに『完成された一流の探索者』の仕業だ!!」
違う。ただ痛いのが嫌なだけだ。
だが、私のこの「徹底的なリスク回避」は、周囲には「冷徹なまでの求道精神」として伝播していった。




