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【部屋で快適に過ごす】とかいう不遇スキル、実はダンジョンの概念を書き換える神スキルでした  作者: 静寂 響
第一部:Fランクから始める快適部屋づくり編

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第27話:快適さの神域と、熱狂の観測者

神殿の重厚な扉を開け、私たちが外の眩しい光の中へと足を踏み出すと、そこには異様な緊張感が漂っていた。

眼下に広がっていたのは、重装備に身を包んだ王立騎士団の精鋭たちと、青ざめた表情で固まるギルド幹部たちの姿だ。誰もが武器を構え、いつS級ボスが飛び出してくるか、あるいはダンジョン全体が大規模な崩壊を起こして呑み込まれるかと、死を覚悟した眼差しで最深部の出口を注視していたのだ。

そんな彼らの前に、リュックを背負った私と、手帳を大切そうに抱えたアリスが何事もなかったかのように姿を現した。

「で、出たぞ! 無事に戻ってきた……!?」

「おい、一体どうなっているんだ!? 最深部から生きて戻るなんて……! それに、さっきまで地響きを立てていたダンジョン崩壊の兆候が、完全に消え去っているぞ!?」

あまりの事態に、現場を指揮していた騎士隊長が血相を変えて駆け寄ってきた。彼は私とアリスの全身を交互に見回し、傷一つなく、埃すらついていない異常な美しさに目を見開いている。

「中の……中のS級モンスターたちはどうなったのだ!? 伝説のゴーレムは!? 内部で何が起きた!?」

矢継ぎ早に問い詰めてくる騎士隊長に対し、私は肩にかかるリュックのベルトを軽く背負い直し、至って平然とした調子で答えた。

「中の害虫および通行の妨げとなる障害物は、すべて綺麗に処理しておきました。崩壊現象もスキルの応用で抑え込み、我が家の『第二の別荘(プライベート物件)』として恒久的に固定してありますので、ご安心ください」

「ぷ……プライベート物件……!? 国を滅ぼしかねない最恐のS級ダンジョンを……個人の所有地にしたというのか……!?」

「ええ。崩落で服が汚れるのも困りますし、何より最高の環境パーツ(家具)が手に入りましたから。今後は私が静かに過ごすための快適な別荘として管理させていただきます」

「な……何を言っているんだ君は……!? 意味が……意味が分からん……!!」

あまりにも規格外すぎる回答に、騎士隊長どころか周囲で聞き耳を立てていた騎士やギルド幹部たち全員が、開いた口が塞がらない様子で絶句した。世界を揺るがす大災害の渦中において、目の前の少年だけがまったく別の次元で『部屋の快適さ』を追求しているという事実に、脳の理解が追いつかないのだ。

そんな混乱の渦中、私の背後からアリスが感極まった面持ちで一歩前へと出た。

「騎士隊長さん、アレク様のおっしゃる通りです……! アレク様は恐ろしいS級ボスを一瞬で消し去り、この恐ろしい魔域を『快適な別荘』に変えてしまわれたんですよ……! その偉業、あまりにも崇高で……私、感動で手が震えて止まりません……っ!」

胸に手帳を強く抱きしめ、頬を紅潮させて感極まるアリス。彼女のあまりにも純粋で熱っぽい崇拝の眼差しに、騎士隊長は気圧されるように後ずさった。

「よし、これで今回の環境整備とパーツの回収はすべて終了ですね。素晴らしい収穫でした」

清々しい空気の中で私が満足そうに頷くと、アリスが嬉しそうに目を輝かせた。

「はい、アレク様! 持ち帰る環境パーツの設置作業、私も記録を執筆しながら全力でお手伝いいたします!」

恐れおののく騎士たちをあとに、手帳を抱えてどこまでも熱心に付いてくるアリスとともに、私のマイペースで快適な日常は続いていく。

こうして、国を揺るがすはずだったS級ダンジョンの発生という大災害は、一人の少年の「部屋の家具探し」によって、何事もなかったかのように完璧な快適空間へと書き換えられたのだった。

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