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【部屋で快適に過ごす】とかいう不遇スキル、実はダンジョンの概念を書き換える神スキルでした  作者: 静寂 響
第一部:Fランクから始める快適部屋づくり編

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第26話:至高の「家具」と、絶対的な支配者

「……はぁ」

私は満足そうに息を吐き、静まり返った玉座の間で見据えながら小さく頷いた。

邪魔な障害物が完璧に消去されたことで、神殿の最深部には本来あるべき静寂と空間の広がりが戻っていた。私は滑らかな石床を静かな歩調で歩み寄り、目的の飾壇へと手を伸ばす。

壁面の装飾棚に嵌め込まれていたのは、あらかじめ目をつけていた二つの逸品――『永久温調の魔石』と『古代式・極上空気浄化の真珠』だ。

どちらも古代文明が遺した最高峰の魔導具であり、現代の技術では再現不可能とされる国宝級の宝物である。しかし私にとっては、自宅の居住空間を極限まで快適にしてくれる至高の「エアコン」と「空気清浄機」に他ならない。

リュックから慎重に取り出した柔らかい羊毛布でそれらを包み、傷がつかないよう丁寧かつ迅速に収納していく。ファスナーを締め、しっかりと担ぎ直した。

「よし、最高の戦利品(家具)が手に入ったな」

目的を果たした満足感とともに振り返ると、アリスが手帳を胸に抱いたまま床に両膝をつき、まるで神の降臨を目の当たりにしたかのような眼差しで私を見つめていた。

「ア……アレク様……」

「どうしました、アリスさん。お腹でも痛いのですか?」

「違います……! 恐ろしい……恐ろしすぎます……!」

アリスはガタガタと華奢な全身を震わせ、歓喜と圧倒に満ちた感極まった面持ちで叫んだ。

「S級ボスを……歴史に名を残すあの伝説のゴーレムを……『お部屋の邪魔だから』と消去なさるなんて……! あなたの『快適さ』に対する執念は、もはや神の領域です……!!」

「執念ではありません。ただの合理的な整理整頓です」

「それが恐ろしいんです……っ! その次元の違う領域におられることが……っ!」

アリスの熱狂と興奮の混ざった叫び声が、広大な神殿にどこまでも響き渡る。

その時、ゴーレムが鎮座していた中央の飾壇から、眩い光を放つ『ダンジョンコア』がぽつんと姿を現した。

主であるS級ボスが完全に消去されたことで構造の崩壊が始まり、グラグラと地鳴りのような振動が足元を揺らし始める。天井の亀裂からは小さな石片が落ちてきた。

(おっと……せっかくの清浄な空気ですし、崩落で服や髪が汚れるのは嫌だな)

私は揺れるダンジョンコアへと静かに歩み寄り、その表面にそっと手を触れた。

【スキル応用:物件維持(空き家管理モード)】

(崩落・消滅の禁止。ここを私の『第二の別荘(S級物件)』として維持・固定する)

『――ピキイィン!』

高らかな魔力音とともに、空間全体を激しく揺らしていた地鳴りがピタリと止まった。

ダンジョンコアから溢れ出していた暴走魔力は、一瞬にして私のスキルの支配下へと組み込まれた。ダンジョン全体の構造が恒久的に安定化し、永遠に崩壊することのない「アレク所有のプライベート物件」へと完全に書き換えられたのだ。

「ダンジョンそのものの崩壊術式すら……『物件の維持管理』として支配下に置いてしまわれるなんて……」

アリスは深く感銘を受けたように息を呑み、震える手でその神業のような光景と魔力場の変化を、一字一筆も逃さぬよう手帳へと書き記していた。

「よし、空間の安定も確認できましたね。これで最深部の環境整備は完了です」

ホコリ一つ落ちてこない清浄で静かな空気の中、私は満足げに微笑んだのだった。

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