↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【部屋で快適に過ごす】とかいう不遇スキル、実はダンジョンの概念を書き換える神スキルでした  作者: 静寂 響
第1部:『Fランクから始める快適部屋づくり編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/95

第21話:S級ダンジョンは超良質物件?

「ええ、物件です!」

アリスは興奮冷めやらぬ様子で胸元から一冊の分厚い手帳を取り出すと、パラパラとページをめくり、素早い手つきでペンを走らせて見せた。手帳には、彼女の固有スキル『魔力視覚』によって把握されたダンジョン内部の構造が、恐ろしいほどの精度で描き出されていく。

「ご覧ください! あのS級ダンジョンは、古代の『地下神殿』の構造をそのまま保っているんです! 外部の風雨を完全に遮断する頑丈な四方の石壁、重厚で分厚い天井、そして一切の起伏がない完璧に平坦な石造りの床……! すべてが完璧な『ひとつの閉鎖空間』として完成されています!」

「……ほう」

アリスから差し出されたスケッチを、私は少し身を乗り出して注視した。

確かに、アリスの言う通りだ。一般的なダンジョンに多い、境界があやふやでどこまでが範囲なのか分からない天然洞窟や、吹き抜けで開放的すぎるフィールド階層と違い、古代神殿型のダンジョンは密閉性が極めて高い。

これは私のスキルにとって、非常に重要なポイントである。

私のスキルは『部屋で快適に過ごす』――。

一見すると単なる日常系の生活スキルに過ぎないが、その真価は「空間の境界(壁・天井・床・扉)」が明確であればあるほど、発動コストが極限まで下がり、空間全体へ効率よく概念や効果を浸透させられる点にある。

つまり、広大な内部面積を誇りながらも完璧に密閉されたその地下神殿は、私のスキルを応用・適応させる上で、これ以上存在しないほどの「超良質物件」ということだ。

「さらに 私の『魔力視覚』は捉えました! 最深部の宝物庫と思われる最奥の部屋には、古代文明の遺物である『空気浄化の魔導具』や『環境調整の超魔石』が眠っています! あれほどの高純度な環境制御用マギアがあれば、アレク様の日常の『お部屋の快適度』がさらに底上げされるはずです!」

手帳をぎゅっと握りしめ、身を乗り出して熱弁を振るうアリス。

彼女の瞳は、自身の知識と推察を証明したいという期待と、何より「アレクの魔法の深淵を見たい」という純粋な探求心で爛々と青く輝いていた。

(……魅力的だな)

アリスのプレゼンは、私の琴線に見事なまでに触れていた。

自宅の自室のクオリティをさらに高めるインテリア、および空調システムの強化パーツ。

季節の変わり目における温度・湿度の自動調整機能や、いつでも清浄な空気を保つ環境魔導具が手に入れば、今後の睡眠や読書、そして午後の微睡みの質が劇的に跳ね上がることは間違いない。

(よし、決まりだな)

私はポケットの中でミントのアメ玉をひとつ転がし、小さく息を吐いた。

「……よし。現場の『内見』に行きますか」

「はいっ! アレク様があの広大な密閉空間で、どうやって『部屋で快適に過ごす』スキルを応用されるのか……専属掃除係(仮)として、一番近くで見届けさせていただきます!」

アリスは「待ってました」と言わんばかりに嬉しそうに胸を張り、ぴんと背筋を伸ばした。

(※ちなみに、まだ専属掃除係として正式に許可した覚えはないのだが……まあ、案内役としては優秀だから放置しておくとしよう)

ギルド内はいまだに「S級特異点発生!」の悲鳴と怒号でごった返している。

私は混乱する職員や探索者たちの隙間をすり抜けながら、「ついでに現場の危険生物(ゴミ)を片付けてギルドのパニックを収め、定時までに何事もなかったかのように帰宅する」という隠された目的を頭の中で上乗せした。

こうして私とアリスは、ギルドの喧騒をあとにし、静かにS級ダンジョン――もとい「新居候補の巨大物件」の現場検証へと向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。