第18話:完全オフの休日と、侵入を許さない「絶対領域」 前編
日曜日。
探索者ギルドの依頼も、アリスからの執拗な「専属掃除係」としての猛追もなく、私に約束された完全なるオフ(休日)が訪れた。
「素晴らしい……素晴らしい朝だ」
カーテンを開けると、秋の澄み切った日光が部屋を満たしていた。
【スキル:部屋で快適に過ごす】
室内は室温21.5度、湿度42%。
空気清浄機能により、微小なホコリすら存在しない完璧な空気環境が保たれている。
ベッドメイキングを完璧に済ませ、お気に入りのパジャマのままリビングへ移動する。
自分で挽いた豆で丁寧にドリップしたコーヒーを淹れ、トーストにバターと自家製ジャムを塗る。
BGMには心地よいクラシックを流し、ソファに深々と身を沈めた。
「仕事のない日に、誰にも邪魔されず、自分の部屋でコーヒーを飲む……これ以上の幸せがこの世にあるだろうか」
読みたい本を片手に、一口コーヒーを啜る。
まさに、平和そのものの休日。
――その静寂が打ち破られたのは、午前十時ちょうどのことだった。
『ドゴォォォォン……!!』
突如として、邸宅の庭の方角から凄まじい爆発音が響き渡った。
「ん……?」
私はコーヒーカップをソーサーに戻し、静かに眉をひそめた。
ガラス窓越しに庭を見下ろすと、我が家の庭園の中央に、黒い巨大な幾何学模様の魔法陣が展開されていた。
そこから現れたのは、漆黒の甲冑に身を包んだ不穏な集団だった。
「ハハハ! ヴァルハイト家の『神童』改め『ゴミスキル保持者』のアレクだな!」
リーダーと思われる仮面の男が、庭から屋敷の二階バルコニー(私がいる部屋のすぐ外)へ向かって叫び声を上げた。
「我々暗殺ギルド『黒き蛇』は、貴様が予備校の試験や平原で起こした『謎の現象』の情報を掴んでいる! 貴様はFランクの皮をかぶった危険人物……我が組織の脅威となる前に、この場で暗殺させてもらう!」
暗殺者たちが一斉に毒塗りの短剣や魔導弓を構え、屋敷へと一斉に跳躍した。
「喰らえ! 結界を打ち破るA級呪導弾――」
彼らが叫び、バルコニーの手すり(我が家の敷地境界線)を越えた、まさにその瞬間。
私はソファから立ち上がることもなく、ただ静かに溜め息をついた。
(……せっかくの休日だぞ)
読書とコーヒーの時間を邪魔された不快感。
商売道具や武器を携え、「休日の自室に不法侵入しようとしてきた」という決定的な禁忌。
私の中で、「絶対に踏み込ませてはならない一線」が警告音を鳴らした。
「……私の部屋に、土足で入ってくるな」
ズキリ、とこめかみに軽い頭痛が走り、私はサイドテーブルの缶からアメ玉をひとつ口に放り込んだ。
【スキル:部屋で快適に過ごす(休日防衛・完全自動排除モード:出力20%)】




