↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【部屋で快適に過ごす】とかいう不遇スキル、実はダンジョンの概念を書き換える神スキルでした  作者: 静寂 響
第一部:Fランクから始める快適部屋づくり編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/93

第4話:検証の十年間と、15歳の予備校最終試験①

神託の儀から、10年が経った。

5歳で【部屋で快適に過ごす】というゴミスキルを押し付けられて以来、俺はヴァルハイト家で完全に「空気」になった。

父さんの視線は通り過ぎ、教導役も寄り付かなくなったが、俺にとっては願ってもない環境だった。

(面倒な挨拶も期待もゼロ。検証に没頭するには最高の10年間だった)

この10年、俺がやったことと言えば、泥と埃とカビにまみれることだけだ。

自室から始まり、敷地の隅にある埃くさい納屋、蜘蛛の巣だらけの古倉庫。

一番苦労したのは、街外れの湿気た天然洞窟だった。最初は壁の亀裂から外気が入ってくるせいで「部屋」と認識できず、わざわざ泥を捏ねて隙間を埋めるという無駄な肉体労働を何時間もやった。あの作業で爪の間に詰まった黒い泥は、未だに完全には落ちていない。

(あのときはマジで徒労だったな……)

だが、苦労の甲斐はあった。

途切れなく囲まれた空間でありさえすれば、俺の頭が「よし、ここは俺の部屋だ」と無理やり認識した瞬間に、スキルは強制発動する。

湿度と温度の強制均一化。

洞窟特有の毒胞子や死骸臭は『不快な生活臭』として一瞬でろ過される。

足元をのたくる不快なスライムや毒ムカデの群れ。あれを「掃除すべき害虫・生ゴミ」と脳内で完全にカテゴリ分けできたときは、不気味なほどの衝撃音とともに、一瞬で消え去った。

(……うん。完全にシステムの権限を奪い取ってる)

つまりこの10年で、俺のスキルは「どんな極限環境だろうと、一瞬で俺にとって快適な絶対安全圏に書き換える広域バグ技」へと仕上がっていた。

「おいアレク! なにボーッとしてんだ、最終試験の受付が始まるぞ!」

後方から、予備校の教官の怒号が響いた。でかい声が耳に刺さる。

湿った風が頬をなでる。

15歳になった俺は、長年の実験で手のひらがゴワゴワに固くなった自分の手を見つめ、擦り切れかけた革手袋の指先をぎゅっと引っ張り直した。

目立つのも、自分の手の内をわざわざ見せるのも嫌だ。

俺は、探索者予備校の最終実技試験が行われる演習場のゲートを見上げ、そっと小さく鼻を鳴らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。