表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/46

第44話 夜明け



 夜明け前。


 最初に異変へ気付いたのはコックローチだった。


「落ち始めたぞ」


 全員が空を見上げる。


     *


 鳥レイジャーだった。


 昨日まで金融街上空を埋め尽くしていた群れ。


 その一羽が。


 ふらりと高度を落とす。


 翼が止まる。


 そして。


 水面へ落下した。


 派手な水音。


 しばらく羽ばたく。


 だが再び動くことはなかった。


     


「休眠だ」


 モーゼスが言う。


 その後も。


 一羽。


 また一羽。


 空から落ちていく。


 黒い雨のようだった。


 大半はそのまま溺死する。


 休眠したレイジャーに水から這い上がる力は無い。


     


 難民たちは安堵した。


 誰も昨夜は眠れていない。


 鳥の群れが戻れば終わりだった。


 だが。


 朝になっても戻らない。


 ようやく希望が見えた。


     *


「筏を出すぞ」


 マスタングが言う。


 難民たちが昨夜までかけて作った筏。


 粗末だった。


 だが渡れないこともない。


 ここに留まる方が危険だ。


     *


 荷物を積み込む。


 はぐれドラウナーも乗せられた。


 誰も歓迎していない。


 だが追い出せば死ぬ。


 男は居心地悪そうに視線を逸らした。


     *


 筏が出発する。


 静かな水面。


 昨日までの地獄が嘘のようだった。


 沈んだビル群の間を進む。


 時折。


 休眠した鳥レイジャーの死骸が浮いている。


 誰も触れなかった。


     *


「船だ」


 若い難民が言った。


 遠く。


 エンジン音。


 複数。


 全員が顔を上げる。


     


 ロイドが目を細めた。


「イーグルズか?」


 コックローチへ聞く。


「知らねえ」


「呼んだのはイーグルズだ」


 コックローチは答えた。


「それ以外は知らん」


     *


 船団は近付く。


 やがて。


 マスタングの顔が曇った。


「違う」



「イーグルズじゃない」


     


 重武装。


 軍用ライフル。


 防弾装備。


 見覚えのある紋章。


 カイも気付いた。


「アイスマン……」


     *


 船が横付けされる。


 部隊が周囲を警戒する。


 統率が取れていた。


 イーグルズとは明らかに違う。


     


 その中から一人の男が現れる。


 ルシアだった。


 彼女は周囲など見ていなかった。


 真っ直ぐカイを見る。


「無事だったのね」


 珍しく安堵した顔だった。


 カイは少し驚いた。


「まあ」


「死にかけたけど」


     *


 ルシアは小さく息を吐く。


「そう」


 それだけだった。


 だが本当に安心したらしい。


     *


 ロイドは隣で腕を組んでいた。


 何かがおかしい。


 コックローチが呼んだのはイーグルズ。


 なのに来たのはアイスマンの部隊。



「……なんでだ?」


 誰にも聞こえない声だった。


     


 その時。


 はぐれドラウナーが前へ出た。


「待ってくれ」


 部隊が銃口を向ける。


 男は慌てて両手を上げた。


「俺は戦う気はない」


「知ってること全部話す」


「だから撃たないでくれ」


     


 部隊の男がルシアを見る。


 ルシアは少し考えた。


 そして頷く。


「話を聞く」


「全部」


     


 ドラウナーは何度も頷いた。


 助かった。


 そう思った顔だった。


     *


 金融街の上空を見上げる。


 最後の鳥レイジャーが水面へ落ちた。


 大きな水音。


 それを最後に。


 空は静かになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ