第41話 気配
探索隊は階段を上る。
懐中電灯の光だけが闇を切り裂く。
ヘリオス本社は静まり返っていた。
異様なほどに。
ガチャ組の姿はない。
レイジャーも。
あるのは死体だけだった。
*
「いると思うか?」
ロイドが聞く。
「何がだ」
「ガチャ組だよ」
カイは考える。
一瞬だけ。
分からない。
だが。
何かはいる。
そんな確信めいた感覚があった。
「いるとしても上だろ」
ロイドが言う。
「動画のオフィスも上階だったよな」
目的地でもある。
カイは振り返った。
「今は忘れろ」
短く言う。
「まず生き残る」
*
さらに上る。
五階。
六階。
七階。
途中で寝袋を見つけた。
放置されたままの。
空の缶詰。
ペットボトル。
誰かがいた痕跡。
しかも最近まで。
だが。
人影はない。
*
その時だった。
カイが足を止める。
「どうした」
モーゼスが聞く。
答えない。
違和感。
ずっと感じていたものだ。
上。
さらに上階。
そこに何かがいる。
澱。
濃いセド。
だから皆も無意識に上を警戒していた。
だが。
違う。
「……変だ」
「何が」
ロイドが聞く。
「下にもいる」
全員が振り返った。
*
静寂。
誰も動かない。
モーゼスが眉をひそめる。
「何がだ」
カイにも説明できない。
見えない。
聞こえない。
それでも分かる。
濃い澱の塊。
上だけじゃない。
下にもある。
しかも複数。
「気のせいじゃねえのか」
若い難民が言った。
その瞬間。
*
咆哮。
下階から響いた。
全員が凍り付く。
人間じゃない。
レイジャーだ。
「下だ!」
誰かが叫ぶ。
そして。
ほぼ同時に。
上階からも咆哮が返った。
*
空気が張り詰める。
マスタングが即座に拳銃を構えた。
ドラウナー離反者たちも武器を抜く。
ロイドの顔が青ざめる。
「おい……」
階段の下。
暗闇で何かが動く。
上も。
懐中電灯の光が届かない闇の奥で。
何かが動いた。
「挟まれた」
モーゼスが低く言う。
その直後。
上階。
下階。
両方からレイジャーの咆哮が響いた。




