表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/46

第40話 離反者



 血痕は廊下の奥へ続いていた。


 新しい。


 まだ完全には乾いていない。


 マスタングがナイフを構える。


 カイたちは後に続いた。


 懐中電灯の光が暗闇を切り裂く。


 誰も喋らない。


 外では鳥が鳴いている。


 だがヘリオス本社の中は異様なほど静かだった。


     *


 最初に見つかったのは死体だった。


 壁際。


 黒い覆面。


 防刃ベスト。


 胸部には大きな裂傷。


 死後それほど時間は経っていない。


「ガチャ組じゃねえな」


 モーゼスが呟く。


 マスタングも頷いた。


 装備が違う。


 サルベージャーではない。


 もっと慣れている。


 暴力に。


 戦いに。


 そして死に。


「ドラウナーか」


 マスタングの声が低くなる。


 死体を蹴る。


 強い力だった。


     


「その通りだ」


 奥から声がした。


 全員が武器を構える。


 暗闇の中から三人の人影が現れた。


 全員覆面姿。


 だが武器は下げている。


「争う気はない」


 先頭の男が言った。


「ドラウナーか」


「元な」


 男が答える。


「今は違う」


     *


 数分後。


 双方は距離を取ったまま話していた。


 信用などしていない。


 当然だった。


「ドラウナーを抜けた?」


 ロイドが眉をひそめる。


「そんなことできるのか」


「できたからここにいる」


 男は苦笑した。


「死にかけたがな」


「理由は」


 男は少し考えた。


「最初はただのギャングだった」


「食うために集まった」


「略奪もした」


「人も殺した」


 誰も口を挟まない。


「だが途中からおかしくなった」


     


「おかしく?」


 若い難民が聞く。


「シリアルキラーや異常者が増えた」


 静寂。


「人を殺すためだけに生きてる奴が何人もいる」


「仲間を殺して笑う奴もいた」


「必要もないのに拷問する奴もいた」


「自分の歯を抜いて笑ってる奴もいた」


男は疲れた顔をしていた。


「俺たちは無理だった」


     


 別の男が呟く。


「特にボスだ」


 全員がそちらを見る。


 男は少し黙る。


「車椅子に乗ってる化け物」



 それ以上は語らなかった。


 語りたくないらしかった。


     


「信用できねえな」


 マスタングが言う。



「俺もだ」


 男は答える。


「だが今は争ってる場合じゃねえ」


「知るか」


 マスタングの目は冷たい。


「ドラウナーは仲間を何人も殺した」


 バラクーダ。


 イーグルズ。


 利用され。


 殺された。


 その怒りは消えていない。


「本来ならここで撃ってる」


 男は何も言わなかった。


     


「待て」


 モーゼスだった。


 全員が振り返る。


「何だ」


「今争ってどうする」


 マスタングが睨む。


「ドラウナーだぞ」


「元ドラウナーだ」


「同じだ」


「違う」


 モーゼスは即答した。


「少なくとも今は俺たちと同じ状況だ」


     


 モーゼスは周囲を見回した。


「外は鳥」


「ボートは無い」


「上には何がいるか分からん」


 そして。


「人手が足りねえ」


 それが現実だった。


 崩落で多くを失った。


 戦える人間はさらに少ない。


「信用はしねえ」


 モーゼスが言う。


「だが利用はできる」


 離反者の男が小さく笑った。


「正直で助かる」


「勘違いするな」


 モーゼスは睨む。


「怪しい真似したら殺す」


     *


 長い沈黙の後。


 マスタングが舌打ちした。


「……好きにしろ」


 明らかに不満そうだった。


 だが反対はしなかった。


 今は生き残る方が先だった。


     


「一つ教えとく」


 離反者の男が言った。


「俺たちはここへ五人で入った」


 モーゼスが眉をひそめる。


「今は三人だな」


「ああ」


 男は頷いた。


「二人死んだ」


「何にやられた」


 男は少しだけ暗い廊下の奥を見る。


「レイジャーだよ。複数いる」


 ガチャは失敗したようだ。


 マスタングは懐中電灯を握り直した。


「行くぞ」


 探索隊はさらに上階を目指した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ