第22話 ロック解除
寄宿舎の部屋は静まり返っていた。
古い換気扇の音だけが響く。
ロイドは画面を見つめたまま固まっている。
「……開いたな」
「ああ」
ロック解除されたフォルダ。
中には大量のデータが並んでいた。
メール。
PDF。
画像。
音声ファイル。
そして暗号化された文書群。
「うわ……」
ロイドが小さく漏らす。
「企業端末だこれ」
ファイル名は崩壊前形式。
英数字。
管理コード。
一般人のスマホではない。
ロイドは最初の画像を開く。
スーツ姿の男。
以前動画へ映っていた人物だった。
背景には港。
その横には外国人らしき男たち。
「やっぱ政府関係か?」
「いや……」
ロイドが別ファイルを開く。
社員ID。
企業ロゴ。
港湾物流会社。
「表向きは普通の物流企業だ」
「表向き?」
「こういうのは大抵裏ある」
さらに別データ。
通信履歴。
監視対象一覧。
政府関係者名。
実験データらしきもの。
「……スパイかなにかか」
カイが眉をひそめる。
「どこの」
「分からん」
ロイドは画面をスクロールする。
「でもアメリカ側じゃない」
「外国系だ」
寄宿舎の外で誰かが笑っていた。
遠くではスマブラ大会の宣伝放送。
だが部屋の空気だけ妙に冷たい。
「待て」
ロイドが別文書を止める。
タイトル。
“Continuity Site”。
「継続拠点?」
「多分」
ファイルを開く。
地下図面。
通信設備。
発電設備。
備蓄庫。
武器保管区画。
「避難用シェルターじゃない」
ロイドが言う。
「有事活動用だ」
「活動?」
「崩壊後も任務続けるための施設」
カイが黙る。
さらにメールを開く。
『市場崩壊は不可避』
『エネルギー供給優先』
『避難枠追加』
『計画前倒し』
どれも崩壊前の日付だった。
「……知ってたのか」
カイが呟く。
「世界が終わるって」
「少なくとも」
ロイドが低く言う。
「準備してた奴らはいる」




