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第三十三回

 

 祐介、彼は随筆を書いては、香奈に送った。彼女からは葉書で感想が送られてきた。

 そうして、香奈から

〈わたしの父があなたに会いたがっている。是非に、と言っている〉

と、連絡を貰った。

 父の香奈は仕事で忙しいらしく、日時指定までついてきた。

 祐介は、ちょっと不安に思った、考えたが行く事にした。しかし、あのしっかりした香奈の父である。一体どんな格好をしていったらいいのか?

 箪笥を探ると、スーツがあった。紺色のスーツだった。青いネクタイもある。

 約束の当日になり、彼はそのスーツに身を通した。鏡の前でじっと自分の姿を見た。そして、時間を気にしつつ、窓の外を眺めたり、本をめくっては閉じて本棚に戻したりした。

 バスの時刻に近くなったので、彼は出掛けた。

 バスはガラガラだった。彼はバスの一番奥に座った。香奈が下りた電車の駅は知っている。そうして、持参した香奈の葉書には簡単な地図も書かれていたが、この葉書の住所にしっかり向かえるか、だけが心配だった。

 そしてバスを下り、電車に乗り、二駅目で下りた。

 わからなかった。香奈の自宅の住所が分からない。どうしようか?香奈に電話する事にした。

「もしもし、葉山です。今、そちらのお宅に向かっているんですけれど・・・」

「祐介君?祐介君なんで今になって電話してくるの。電話するタイミングなんて幾らでもあったじゃない!」

 喜んでいるのか、怒っているのかわからない声であった。

 そうして、香奈の自宅を捜して住所と睨めっこしている祐介を、香奈が発見した。

「いた!いた!」

「あ、香奈さん、こんにちは」

「やだ、なんでスーツで来た、スーツで来たの」

 香奈は恥ずかしそうにして、祐介の肩をバシバシ叩いた。

「痛いですよ」

「あ、ごめんなさい」

 

 香奈のお父さんは長身を、カジュアル・ウェアに身を包んだ方だったので、祐介はこのスーツという選択が大間違いだった事に気づいた。ああ、っとした気持ちが祐介を襲った。

「きみが葉山君?ハロー、こんにちは」

「お父さん、軽い!」

「こんにちは、今日は宜しくお願いします」

 香奈のお父さんはコーヒーを淹れてくれた。

 その際に、小さな赤い薔薇に水をやっていた。


 

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