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第三十二回


 家に帰った祐介は、父、母、姉と食事を摂った。ハンバーグ定食だった。

「祐介、あんた、何か顔がさっぱりしたわね」

と母に言われ

「そう?ともかく今日、多分成功したと思うけれど良かったよ」

「水木さん、情熱家なのね。ともかく祐介が他の人の前で話せたから母さん、安心だわ」

 食事を終えると、彼は自室に向かい、CDMDプレイヤーで、ロックンロールを爆音で流しながら、寝室を掃除しはじめた。姉が

「お兄ぃがなんかはじめた」

と茶々を入れて来た。

「掃除だよ、掃除」

「掃除か、わたしもやろうかな」

窓を開け放した。秋だった。顔を出すと、虫の声が聞こえた。山の中なので、星がよくみえる。

 掃除を終えると、彼は、さて、と言って、今まで書いてきた随筆に目を通した。

 そうして、A4サイズの封筒に入れて封をして、そこに手紙を添えた。香奈に、時間があれば読んで下さい、と言った内容だった。彼は、彼女ならば「わかってくれるんじゃないか」という甘さが出て、この随筆の原稿を託そうと考えた。

「母さん、ちょっとポスト行ってくる」

「えっ。はい。こんな遅くに・・・」

固いアスファルトだけを頼りにすっかり暗くなった道を歩いていった。途中、帰り花が咲いていた。祐介の行き先の方に散っていた。やがて、ポストのあるコンビニに着き、彼はコンビニで切手を買うと、それをA4サイズの封筒に貼った。そしてそれをポストに投函した。


 香奈から、葉書が送られてきた。内容は簡潔に

〈面白い。当方、今、郵便局で働いておりまして、朝は時間がありませんが昼以降暇。ドシドシ送って下さい〉

と会った。祐介はフウ、とため息をつき、それから

「郵便局で働いているのかぁ、凄いなぁ」

と、独り言を言った。

心が熱を持っていた。彼は新しく、随筆を書く必要性に迫られた。しかし、新しく随筆を書くといって、これといってネタが無い。苦心して書いてみたが、まるで読書感想文のようになってしまったが、ええい、ままよ、と言った形で香奈に送った。すると、その原稿がそっくり返ってきた。

 見ると、原稿の誤字脱字、慣用句の間違った使い方に逐一、赤ペンで訂正がされている。

付された手紙には

〈焦らなくても宜しい。しかし編集者ごっこも愉しいものである〉

と書いてあり、祐介は苦笑した。


 

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