第三十一回
水木さん、香奈、祐介の三人で帰る事になった。三人電車に乗った。
「今日の祐介さんの話、どうでした?香奈さん」
水木さんが訊く。すると
「なんか、客寄せパンダって感じ」
水木さんは、あー、そう捉えたか、といった風な顔をして祐介に
「あんまり気にしなくていいですよ。手厳しい方ですから」
とニコニコして言った。それから
「さっき、頂いていた名刺、見せて頂いていいですか?」
と言うので、祐介は貰った名刺を水木さんに渡した。
「ふむふむ、あー、ここわねぇ、新聞も発行している所なんですよ。祐介さんの事を掲載したいのかも知れません」
すかさず香奈が
「そんな話があっても乗っちゃ駄目よ。今日話した分で、この子充分よ。そう思わない?祐介さん」
祐介さん、と下の名前で呼んでくれた。それを祐介自身、内心驚くと共に、どうしてこんなに香奈さんは世話を焼いてくれるのだろう?
「あ、私はここの駅なので」
水木さんが電車を下りて、祐介と香奈、二人になった。
「空いてきたから座りましょう」
祐介と香奈は向かい合って座った。互い黙っていたが、その内、二言、三言、話すようになった。
そうして祐介は香奈に想いをぶつけようとした。それがこんな言葉になった。
「僕は・・・そんなに悪い事をしていましたか」
香奈は
「なにそれ」
と、返した。続けて
「そのね、障碍者の偏見が無くなるなら、無くなるで、全く異論はないわよ。わたしも当事者だし。でも、活動というか運動というか、そういうものに熱を上げるとのと、祐介さん、あなたがあなたらしく生きるのは全く別の問題よ」
この台詞を聞いて、祐介は、自身が置かれている状況というものを明確に理解した。祐介は、額をポリポリと掻いた。
「話を全部、聞かせていただいたけれど」
香奈がつづける。
「今までこんなにさびしい人に会った事がない・・・手厳しいかしら。私はそう思われて全然構わないんだけど」
電車が新しい景色に入ってゆく気がした。
もう夕方で、陽は暮れかかっている。
祐介はまた、香奈と話がしたい旨告げて、家族会のパンフレットに住所、連絡先を頂いた。その文字は、達筆だった。




