薬草採集 side.B①
「あっちは大丈夫そうですね。」
「まがりなりにもパーティーの盾役がいるんだから、問題ないだろ。」
「それよりも強い二人がついてるんだから、むしろ守ってもらう側じゃない?」
クレイドルスノーフレーク採集の3人は、さほど心配しなくてもよさそうだ。
「それにしても、何で一緒の方向から行かないんだ?」
自生地が違うとはいえ、途中までは一緒に行ってもよさそうな気もするが。
「それが、残念ながらこの2つの植物はこの森に自生しているのですが、向こうにはラウシュロータスが育つような水源がないんです。逆にこっちは、ぬかるんでいてちょっと足場が悪いところがありますが、それなりの数があると聞きます。」
「この森には何回か入ったことあるけど、狩り中心でそんなの気にしたこと無かったわ…」
「目的が違うと目が行きませんよね。」
「そんなもんだろ。で、どのくらいの場所にあるんだ?」
「もうちょっと先ですね。近場にもあるにはあるんですけど、もう採集されてしまっていることが多いと思います。」
「あー、生産系のスキルしか上げて無い人は奥まで行けないから、ここで採集するのか。」
「ご名答です。どちらも上げている人は珍しいですからね。私たちみたいな冒険者はもう少し奥までいけるので、そこで採集したほうが品質の高いものもあっていいんです。」
「最深部に行くほどいいのか?」
「基本的にはそうだと思います。生育している場所も関係するので一概には言えませんが、長く成長を続けていれば、それだけ良いものができますから。噂ですけど、最深部らへんでは『秘薬』ともいえる位のポーションの材料が採れるらしいですよ?」
「へぇー、それは一度でいいから見てみたいな。」
レアアイテムに心が躍るのは、ゲームを嗜む人間なら皆そうだろう。
夜の森の空気は湿って甘く、遠くで夜鳥が間遠に鳴いている。青組の道は徐々に下りで、土の匂いに水の匂いが混ざり始めていた。水源が近い。教わったばかりの知識を鼻で確かめられるのが、少しだけ嬉しい。
「2人とも、この先コケが多くて滑りそうだから気をつけてー。」
先頭で索敵をしながら進んでいるミーナから声が飛ぶ。
「おう、わかった。ありがとな。」
足下に気をつけながら、3人は奥へ奥へと進んでいった。
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「んと、そろそろですかね。光が見えますし。」
しばらく前から、空気中に青白い粒子のようなものがふよふよと漂っている。
「これ、何なんだ?」
「これはマナそのものですね。我々は、空中に漂っているものを使用することはできませんが…。」
「マナって青白いんだな。」
苔生した巨木に、光が湧き出すせせらぎ。暗いのに大した光源が必要ないくらいに明るい。これぞファンタジーという光景に、質問が止まらない。
漂う粒子は近づくと淡く揺れて、手をかざしても触れられずにすり抜けていく。呼吸のたびに、胸の奥まで仄かに明るくなるような気さえした。この世界に2年いて、まだこんな場所が残っている。
「マナの色は決まってないんですよ。ここのが青白いだけで、他の場所では赤かったりすることもあるみたいです。」
その一つ一つに、アリスが丁寧に答えていく。
「Alice、あれがラウシュロータス?」
先を歩いているミーナが、水溜りに浮かぶ花を見つけたようだ。
「どれですか?」
アリスはミーナが指差す先を見る。
「あ!あれですあれです!しかも、しっかり青いですね。あれを持ち帰りましょう。」
「なるほど、あんな感じで生えてるんだな。」
本当に、湖に浮かぶ蓮のように葉と一緒に青い花が浮かんでいる。
「花の部分だけ上手く採集できれば、そこからまた花が出るので、気をつけてあげてください。」
「わかった。じゃあこの辺りで採集しようか。」
「「はーい」」
3人は水溜りが多い場所を発見し、そこで採集をするのだった。
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「っと…。気を抜くと落ちそうになるな…。」
大きい水溜り、池のレベルになると、中心にまだ採集されていない大きめな花があるのを見つけることがあるが、さすがに深いので手が届かない。
「こっちに近づけるような魔法も知らないしな…。採れるところで我慢しとくか…。」
膝まで浸かれば採れる範囲で我慢をする。
「これでー…13個か。多いのか少ないのか分からないな…。そもそも、何個でポーションが作れるんだ?」
アリスに聞いておけば、もう少し採集の張り合いが出たかもしれない。
「ま、多ければ多いほどいいか。ポーションの使用期限なんて無かったはずだし。」
ぶつくさぼやきながら採集をしていると…
「わ、わ!悠仁さーん!ミーナさーん!」
遠くでアリスの呼ぶ声が聞こえる。わざわざ名前を呼ぶというところに、緊急性を感じる。
「アリス…!」
慌てて水から上がり、声の聞こえた方向へ走り出す。
「うぉっ!」
足を引っ掛ける罠のようになっている蔓で倒れそうになりながらも、持ち直して走り続ける。
(くそっ!無事でいてくれ!)
何度も倒れこみそうになりながら走り続け、視界が開けた瞬間――そこには、アリスが座り込んでいた。




