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ポーションの材料

――ノワール討伐から2日後 18:10 カプランド 新緑の欠片


「悪い悪い!遅れた!」


「よし、じゃあカインで全員だな?後はアリス、頼んでもいいか?」


「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」


全員が見渡せる位置にアリスが立ち、今回の説明を行う。


「今回は一緒に来てくださるということで、助かりました。カプランドの大森林は数百年前から人々と一緒に成長してきた森林で、『自然』が非常に豊かであるとされています。未だに最深部の探索は難しいそうです。」


アリスが大森林の概要から説明する。細かい設定にこだわるアリスらしい。


「数百年も成長を続けた森の中では様々な植物が自生しており、その中には薬用のものもあれば、毒性が非常に強いものも確認されています。HOPE内で手に入るポーションの原料として使われる薬草の多くは、この大森林で採集されているといっても過言ではありません。」


「へー、それは知らなかった。」


「はい。なのでこの街では、高位のポーション製作師が多数活動していて、生計を立てていると聞いています。」


アリーシャが宝石の採掘量が多い故に装飾品製作師の人口が多かったように、薬草の採集量の多いこの街ではポーション製作師が多いようだ。


土地が採れるものを決め、採れるものが職人を呼び、職人が街の匂いを作る。宝石の街には砥石の音があり、薬草の街には煮出しの湯気がある。旅をするというのは、その連なりを一つずつ確かめて歩くことでもあった。


「ということで、原料さえ持っていけば手間賃だけでポーションを作ってもらえるってことです。生産職系のスキルレベルだけじゃなくて、戦闘職のレベルも上げている凄い方もいますが、基本的には材料は外注していることが多いです。今回は、この花とこの花をみんなで摘んでこようと思っています。」


アリスが収納から、瓶詰めされた花を2つ取り出す。


「こちらの赤いスズランのような花が、『クレイドルスノーフレーク』と呼ばれている、ヒーリングポーションに使われる花です。」


右手に持ったビンには、赤い可愛らしい花をつけた植物が収められている。


「そしてこちらが『ラウシュロータス』です。蓮の花のような綺麗な花ですが、青色をしています。こちらがマナポーションと、色々な用途に使われる花です。」


「色々?」


フルールが、その誤魔化したような言葉を見逃さない。


「ま、まぁ!色々な用途があるってことです!」


「は、はぁ…。」


無理矢理納得させたような形になる。


「クレイドルスノーフレークは、夜間花が淡く発光するので探しやすくなります。木の根元なんかに自生しています。ラウシュロータスのほうは水辺に咲いているのですが、水の質が良くないといけないのと、その水に魔力が流れ込んでいないといけません。十分に魔力を吸った花のみが青くなり、未成熟な花はまだ黄色いです。」


「色んな見分け方があるのねぇ…。」


こういったことに疎そうなミーナが、感心したように声を上げる。


「さすがアリスだな。よくそんなに覚えていられるもんだ。」


「えへへ、実は昨日教えてもらったばかりなんです。街中にポーションの醸造所があったので、ポーションを売ってくれるか聞いたら、材料さえ持ってくれば安いよって。」


「それでも、それだけ知ってくれていると今後の冒険にも役に立つ。頼りにしてる。」


「そ、そうですか。ありがとうございます…。」


アリスがうつむく。


(しまった、期待をかけすぎたか。)


「気軽にやってくれればいいさ。どうする、二手に分けるか?」


自生地が違うので、二手に分かれたほうが効率がいいように思える。


「そうですね…。夜間なので分けたくは無いのですが、効率を考えると仕方ないような気もします。集合時間だけ決めて、3人ずつに分かれましょう。」


「そうか。じゃあ、とりあえずミーナとフルールは索敵のために分かれてもらうとして…。男性陣も分かれるか。」


「ま、妥当だろうな。」


カインも納得する。


「後は、知識的にこういうことを知っているアリスとステラに分かれてもらったほうがいいかな。」


「……そうだね。私も、Aliceほどじゃないかもだけど、薬草のことは知ってるし。そうするのがいいと思う。」


「それじゃ、後はくじ引きだな。適当に棒もらってくる。」


悠仁はカウンターで箸を3膳もらってくる。


「3本は赤、もう3本は青に塗ってあるから。ミーナとフルール、アリスとステラ、俺とカインで引いて、その色の花を捜しに行くって事で。」


「わかりましたぁ。」


「それじゃ…、せーのっ。」


ペアで一斉に箸を引き抜く。


「俺は…、青か。」


「こっちは赤だな。」


悠仁が青、カインが赤だった。


「私が青です!」


「……私は、赤。」


何故か少しテンションが高いアリスが青、ステラが赤。


「私がー、青ね。」


「私が赤みたいですね。」


ミーナが青、フルールが赤という結果になった。


「よし、じゃあメンバー分けが終わったところで出発するか。荷物が多くなりそうだから、馬車で行こう。馬もしばらく運動して無いから、動かしてやらないとな。」


「そうですね。多く取れたら、それはそれでポーションに加工してもらえばいいことですからね。」


一行は酒場を出てバーグ邸へ向かい、馬車を使いカプランドの大森林入り口まで向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


――カプランドの大森林 入り口


「馬車はここでいいな。」


森から少し離れた、草が食める場所に杭を打ち係留する。


「水辺が多くあるのが左方向なので、必然的に青組は左ですね。私たちは右方向になります。」


アリスが、これから進む方向の説明をしてくれる。


「分かった。じゃあ、ここで分かれよう。もしもの時の合図は、ファイヤーボールを上空に打ち上げること。でいいかな。」


「はい、こっちはステラさんもいて、すぐに発動できるので。」


「そうか、じゃあそれで頼んだ。カイン、そっちは任せたぞ。」


「おう!…と言いたい所だが、2人とも俺よりレベル高いから、守ってもらう状況になりそうだぜ…。」


「大丈夫だ、こっちも大して変わりない。」


ちょっとゲームの中では頼りない男性陣である。


「そんなことないですよ。カインさんがいると安心できますから。やっぱり、前に立ってくれる方がいるというのは心強いです。」


フルールがカインのフォローをする。


「そ、そうか。なら頑張るかな。」


カインのやる気が上がった。


「わ、私も!悠仁さんがいるだけで安心できますから!」


「Alice、Alice。それだとちょっと違う意味にとられるわよ。」


「あわわ!心強いって意味です!」


「大丈夫、分かってるよ。ありがとう。」


フォローをしてくれたアリスの頭に手を置く。


「は、はいぃ…。」


「それじゃ、集合は2時間後ってことで。時間を20分くらい過ぎても帰ってこなかったら、相手の方向を捜索するってことで。」


「「「「「はーい」」」」」


こうして、パーチにしては珍しい別行動が始まった。


夜の森の入り口で二手に分かれると、互いのカンテラの灯りはすぐに木々へ吸われて見えなくなった。半分になった足音が、いつもの倍たよりなく聞こえる。二時間後、と悠仁は胸の中で復唱した。

クレイドルスノーフレーク(アイテム)

世界各地に生息するヒーリングポーションの材料。カプランドの大森林に自生するものは品質が良いとされ好まれる。その赤い花びらがポーションの色をつけるとされている。大きさに差異はあまり見受けられないため花の数が多ければ多いほど等級が高くなる。老木の根元に自生していることが多く夜間にはその生命力を使い淡く発光する。花の妖精がその花弁で生まれだすという御伽噺が名前の由来。


ラウシュロータス(アイテム)

見た目は小さめな青い蓮の花。水質が良い場所にしか生育せず、カプランドの大森林並みに多く自生している場所は世界的に見ても珍しい。その葉の色がマナポーションの色をつけるとされている。成長しきった花は香しい香りを放っているためすぐに選別することが出来る。ポーションの材料以外に香水の材料として使用されることも多い。女性に人気だが値段は高い。名前の由来はその香りから。

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