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驚愕

――カプランド 冒険者統括組合 迎賓室


「ささ、お座りください。」


支部長が悠仁達に席を勧めてくる。迎賓室の中は木造ながらも豪華な装飾が施されており、部屋の中央には大きな長机が置かれ、奥の窓はとても大きく、昼間はよく採光ができそうだ。


「さて、お茶は後で運んでまいります。お疲れだと思いますので、話はなるべく早く済ませます。ご容赦ください。」


支部長が丁寧にもてなす。


「それで、話というのは?」


マスターである悠仁が、代表して話を促す。


「はい、まずはノワールとの戦闘や外見、見つけたときの状況などをまとめたいので、詳しくお聞かせ願えますか?」


(さっきロビーで全体に話した時にも、対策を練るとか言ってたな。)


「わかりました。まず…」


悠仁はメンバーにも確認しながら、ノワールと初めて出会ったときから始め、戦闘中の様子や攻撃方法などを出来る限り詳細に伝えた。


「…なるほど。完全ではありませんが、ある程度まとめることが出来ました。これを元に、これからカプランドでの対策を練っていきたいと思います。お疲れのところありがとうございます。」


支部長は羽ペンと羊皮紙を置いて横にずらす。


「さて、次は報酬です。あまり公の場で渡したくなかったのです。どう見ても貴方方がノワール討伐に多大な貢献をしたのは確かで、貢献に応じて額も変わってしまいますので、このような形で申し訳ありません。持ってきてくれ。」


支部長は後ろに控えていた職員に声をかけ、報酬を持ってこさせた。


「これが今回の報酬になります。ご確認ください。」


悠仁は、片手でギリギリ持てるくらいの革袋を渡される。


「おお!金貨40枚くらい入ってそうだな!」


「おいカイン、失礼だぞ。」


「おっとわりぃ、報酬を目の前にしたら興奮しちまってよ。」


「はっはっは、無理も無い。ですが金額は、しっかりその目で確認していただいたほうがいいと思いますよ。」


(もう少し入っているのか。他のクランに分配する分も考えると、そんなに多く出来ないはずだが。)


「では失礼して。」


悠仁は革袋を開けて、金額の確認をする。


「はっ!!」


突然の大声に場が固まる。


「お、おいYujiどうした。まさか銀貨とか銅貨だったってオチはやめてくれよ…?」


カインが心配そうに声をかけてくるが、そんなのは杞憂だ。


「白金貨…」


「…まじ?」


声に出さないものの、周りのメンバーも驚いている様子が見て取れる。


「2枚…」


「…は?」


カインと悠仁だけの会話になっているが、周りの顔も同じような感じなので安心して欲しい。ただ1人、ステラだけが気だるげに眺めている。


「はい、白金貨2枚と金貨20枚が皆様への報酬となっております。組合として協議をした結果の報酬ですので、胸を張ってお受け取りください。」


「こ、こんなにいただいて、他のクランに回す分は…?」


悠仁は何とか平静を装い尋ねる。


「領主様からいただいた他に、緊急時に備えて組合でもある程度のお金を常備していますので大丈夫です。どうぞお納めください。」


「は、はい。ではいただきます。」


悠仁はそれをしっかりと収納に押し込む。


白金貨というものを、悠仁は初めて手に取った。金貨より存在感がまるで違う。これ一枚で一千万。指先が急に汗ばんで、収納の紐を二度確かめてしまった。


「お疲れのところだとは思いますが、次のお話があります。」


報酬の話が片付いたと思ったら、まだ話が続くらしい。


「領主様が、皆様にお会いになりたいと仰っています。」


「領主が…?」


「はい、ここより北西、カール高原を抜けた場所にあるウェイル領最大の街リアッツォでお待ちになっております。早馬で1日はかかる距離ですので、馬車ですとさらに時間がかかります。しっかりとした準備をしていかれるとよろしいと思います。」


「…?早馬で1日かかるのに、何故領主様は今回の依頼が大惨事になったことをご存知なので?」


「あぁ、それは鳩を使ったのですよ。」


「伝書鳩ですか?」


「よくご存知で。よく文書のやり取りをする街では、伝書鳩を育てているのです。」


「なるほど、鳥なら早く着きますからね。」


「左様です。他に質問はございますか?」


「ええと、2点ほど。」


悠仁は、疑問に思っていることをまとめて支部長に聞く。


「はい、なんでしょうか。」


「はい、まず1つ目が、いつまでに行けばいいのかということ。2つ目が、領主様が何故私たちを呼んでいるのかということです。」


「あぁ、お伝えしていませんでしたね。」


支部長はうっかりという表情をして続ける。


「まず1つ目のご質問ですが、特に期限は設けていないようです。まぁ1ヶ月もお待たせしなければ、いつでもいいと思われます。皆様にも予定があることは承知していると思いますので。2つ目のご質問ですが、今回の危機を救った人物に、領を代表して直々にお礼を言いたいと達しがあったためです。」


「領主様というのは、一介の冒険者にそこまでするものなのですか?」


「どうでしょう。私はこのウェイル領を出たことはありませんのでわかりませんが、領主様によっては、そういうことをするのではないでしょうか。」


(ま、領主がどんなこと考えてるかなんて分からないか。とりあえず大人しく従っといたほうがこの領地で活動もしやすいだろうし、行っとくか。)


「わかりました。出来るだけ近いうちに、リアッツォに向かいたいと思います。」


「それはよかった。他に何かございますか?」


「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」


「いえ、こちらこそお時間を取っていただきありがとうございました。君、見送って差し上げろ。」


「はっ。」


支部長は後ろに付いていた職員に声をかけ、悠仁たちの見送りに充てる。迎賓室を出て、組合の入り口まで送ってもらう。


「では、私はここで。」


職員は、悠仁たちが全員出たことを確認して立ち止まる。


「ありがとうございました。」


「…それと。」


職員の男性が何かを言いかける。


「はい、なんでしょう。」


「その、私からもお礼を。私はこの街で生まれ、この街で育ちました。他のクランの方も、この依頼を通して街を守ってくれたことは分かります。ただ、やはり貴方たち抜きでは守れなかったのも事実です。なので、お礼を。」


「…いいんですよ、冒険者としてやるべきことをやっただけですから。」


「そう…ですか。」


「はい。でも、感謝の気持ちは受け取っておきます。では。」


悠仁達は組合を背に、バーグの家へ向かって歩き出した。


夜更けのカプランドは家々の灯りがほとんど落ちて、水路の音だけが街を流れている。守られた街の眠りというのは、こんなに静かなものなのか。職員の礼の言葉が、その静けさの分だけ重く胸に残った。

「伝書鳩」(モンスター)

現実世界では鳩を調教して伝書鳩として使うが、HOPEの世界では「伝書鳩」というモンスターが存在しており、それを上手に使うことで現実世界の伝書鳩と同じような役割を担わせることが出来る。姿形はドバトに良く似ている。

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