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証②

――工房 頑固一徹


「お、帰ったな。金属の準備は終わらせてある。気合を入れていくぞ。」


「はい!お願いします!」


悠仁は再度ギューヴの工房に足を運び、一緒に作業をするのだった。作業は夜になっても、空が白んでも続いた。

ある程度手先が器用とはいえ、失敗したら再度金属を溶かしてやり直し、というのを繰り返してたら、いくら時間があっても足りなかった。


「うわっ…また同じところで失敗した…。」


悠仁は金槌と細工用ノミを持ちながらぼやく。


「あせるなあせるな。そこは今回の作業の中でも特に難しいところだ。落ち着いて、しっかりと、集中してやれ。」


「はい。」


悠仁は再度金を溶かして固め、細工をしていく。慣れない装飾品製作を始めて、28時間が経過した。


「…よし、ここまで進んだな。後は最後に、これを嵌め込むだけだ。」


ギューヴはとても小さい黒い粒を取り出す。


「…これは?」


「オニキスだ。小さすぎて何にも使えないと思ってたんだが、まさかここで使えるとは思わなかったぜ。」


「使っちゃってもいいんですか?」


「おうよ、これはもともと処分するつもりだったんだ。好きに使ってくれ。」


「ありがとうございます!」


「ただ、それを嵌め込むのが最後の手順であり、最も難しい。1つ目は一緒にやってやるから、しっかり見て覚えるんだ。」


「はい!お願いします。」


悠仁は最後の集中力を振り絞って、作業に取り組んだ。

その作業を始めてから1時間半後…。


「終わった…。」


「おうよ、頑張ったな兄ちゃん。」


悠仁の前には、装飾品製作師として作った初めての作品が並んでいた。


「製作師のレベルは8だっけか?そのレベルを遥かに超えてる作品だ。これは実績としても評価される。自信を持っていいぞ。」


「はい!ありがとうございます!」


胸の中に充実感が満ちていく。


「よし、じゃあ片付けをするか!早く仲間のところにも届けたいだろ。」


「はい!」


悠仁とギューヴは後片付けをする。道具一個一個に感謝をしながら片付けた。


28時間分の疲れは肩に積もっていたが、悪い疲れではなかった。炉の熱の名残と金属の粉の匂いの中で、掌に残る鎚の痺れを開いたり閉じたりして確かめる。杖を振るのとも剣を振るのとも違う、作る側の疲れだった。


「よし…では代金を支払います。」


片づけがひと段落付いたところで、代金の話に移る。


「そうだったな。折角の意気込みだから、ただにしてやろうかと思ったんだが、作ったものが無料だったら、それは本当に価値があるとはいえねぇかも知れないと思ってな。しっかり請求させてもらう。」


「それで問題ありません、お願いします。」


「そうだな…、使った銀は全部で150g、金は失敗して使い物にならなくなったもの含めれば55g、後は工房の使用料と、指導代を含めて…。金貨3枚ってところだな。」


「わかりました。ではこれで。」


悠仁は自分の収納から金貨を取り出し、ギューヴに手渡す。


「おう、確かに。じゃあ届けてやれ。きっとみんな喜ぶぞ。」


「はい、ありがとうございました。何から何まで。」


「いいってことよ。またうちの工房を使ってくれよ。」


「はい、是非!」


悠仁は作品を収納にしまいこんで、仲間がいるであろうバーグの家へ向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


――カプランド バーグの家


「あ!悠仁さん!」


玄関先で手持ち無沙汰に地面を眺めていたアリスが、悠仁の姿を見つけて駆け寄ってくる。


「お、アリスか。何してたんだ?」


「えっと悠仁さんを。じゃなくて、明日のことを考えていて。」


「あぁ、明日だもんな、依頼の日は。」


「そうですそうです!そういえばフルールさんから聞いていましたけど、何をされてたんですか?」


「あぁ、そうだ。折角だし。」


悠仁は作ったものを、アリスに見えないように収納から取り出した。


「ちょっと目を瞑っててくれ。」


「…?はい。」


素直に目を瞑ったアリスの神官服に手をかける。


「え、え!悠仁さん!」


「じっとしていてくれ。」


「で、でも!心の準備が!」


「大丈夫だ心配ない。痛くしないから。」


「そ、そういわれましても!」


アリスが身悶えしているので作業がしにくかったが、とりあえず完了する。


「よし、目を開けていいぞ。」


「ふぇ…?」


アリスは悠仁の手があったところに目を向ける。


「わぁ!これって!」


「あぁ、襟章だ。クラン設立の記念として。」


工房で悠仁が作っていたものは、クランのメンバーに配るための襟章だった。銀の丸い台座の上に、金細工で止まり木に佇むケツァールの姿を彫りこんであるものを嵌め、目には小さなオニキスを埋め込んでいる。


止まり木は、アリスの言った「パーチ」をそのまま形にしたものだ。六つ作って、六つとも羽の彫りが微妙に違う。腕のせいだが、ギューヴは手作りの証だと笑ってくれた。裏に名前を彫る時が、28時間の中でいちばん緊張した。


「すごいすごい!こんなの見たことありません!」


アリスは自分の左襟に付けられた襟章を見て、大げさなくらい喜ぶ。


「弾みでとった装飾品製作師のスキルだったから大変だった。もう失敗続きでな…。次に何かを作るときには、もっと下調べをしようと思ったよ…。」


「そんな風に見えないです…!鳥の羽1枚1枚丁寧に彫り込んでありますし、ベテランの方が作ったものにしか見えません!」


「そうか、ありがとう。いやぁでも疲れた。みんなにも渡したら、ちょっと休ませてもらおう…。」


「そうですね、それがいいです。じゃあ、みなさんに渡しにいきましょう!これをもらって喜ばない人なんていませんよ!」


アリスは悠仁の手を取って、家の中に駆け込んでいくのだった。

「クラン『パーチ』の襟章」(アイテム)

悠仁が製作した襟章。パーチのメンバーのみが所持している。金・銀・オニキスが使用されており、装飾品製作師のスキルを用いて製作したため、ダメージカット、俊敏性上昇の追加効果が付与されている。

襟章の裏には、それぞれの名前が刻まれている。

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