証①
――翌日 カプランド 大広場
「んーっと…明後日が依頼の日だろ…?間に合うか…?」
悠仁は広場で探し物をしていた。
「経験無いけどレベル8だろ?道具と場所さえあれば、ある程度のものは作れると思うんだが…。」
露店を転々とすると、やっとお目当てのものが見つかる。
「お、あったあった。すみません。いいですか?」
露店を開いていたドワーフの男性に声をかける。
「はいよ、いらっしゃい。何をお探しで?」
「銀のインゴットと、金を少しをいただきたくて。」
「銀と金か…、そうだな。純度はどれくらいだ?」
「やっぱり色が綺麗に出るのは、純度が高いものですか?」
「そうだな、純度が低くても物は作れるが、効果は落ちるし、見た目はくすんで見える。どの程度のものを作るかにもよるが、高くて損をすることはないな。」
「なるほど…。」
「何か作りたいものでもあるのか?わざわざインゴットを買いに来るってことは、物作りをする人間だろう。」
「えぇ…実は…。」
悠仁は事情を話す。
「ほう、それはめでてぇな!今までに作ったことはあるのか?」
「いえ…、スキルもなんかの弾みで偶然取れてしまったようなものなので…。」
「そうだな…、よし、じゃあ俺が工房を貸してやる。ついでに手ほどきもしてやるよ。」
「いいんですか!?こんな見ず知らずの男に…。」
ドワーフの男性は、悠仁に魅力的な提案をしてくる。
「いいんだよ!後輩冒険者を応援するのは先輩の役目だし、俺達鍛冶職はみんなの役に立ちたくてやってんだ。」
「ありがとうございます!」
戦闘支援ではなく、こういった装備関係の支援をしている冒険者はこういった気質の人間が多いのは、職業柄ってやつなのか。
「いいってことよ。じゃあ先にインゴットだな。」
「はい、じゃあ折角なのでいい純度のものをお願いします。大きさはこのくらいのもので…」
悠仁は作りたいものの寸法を伝える。
「となると…、銀はインゴットの半分で、金はもっと少なくていいな…。ええいめんどくせぇ!向こうで使った分だけ請求するからいくぞ!時間はあるのか?」
「はい!これから作ろうかと思っていたので、時間はあります!」
「よし、じゃあいくぞ!」
何故か悠仁よりも意気揚々な男性に連れられて、悠仁は工房へ向かうのだった。
初対面の男の頼みに工房を貸すという話の早さは、ジマルやテッドと同じ匂いがした。物を作る人間には、国や街をまたいで似た気風が流れているらしい。
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――工房 頑固一徹
「よし、じゃあ作るんだが、厳しくいくぞ。折角なんだから妥協したくないだろう。」
「はい、よろしくお願いします。」
「っと、自己紹介がまだだったな。俺の名前はギューヴ、お前さんは?」
「私はYujiといいます。」
「Yujiだな、よしじゃあまずは銀の取り扱いだ。まず基本知識として…。」
銀の取り扱いについて説明される。化学的な組成は現実世界となんら変わりなく、融点や釜の使い方を説明された。
「…後は装飾品として製作するんだから、細かい加工が必要になる。少しは手伝ってやるが、大体はお前さんの作業だ。」
「はい、お気遣いありがとうございます!」
「よせやい、じゃあ始めるぞ。」
悠仁とギューヴは作業を始めた。型を作るだけでも大問題だった。初めての作業に手が震えて何回も失敗したが、型は何とか完成した。説明から型の作成まで、既に3時間ほど経過している。
「型はこれでいいな。次はここに銀を流し込む。記念品みたいなもんだし、売るわけじゃないだろうから採算は度外視してるが、それでも失敗し続けると費用がどんどんかさんでいくから気をつけろよ?」
「わかりました…。ちょっと休憩していいですか…?」
「おいおい兄ちゃん、もうへばったのか?これからが大変なんだぜ?」
「それに備えてってことで…。」
型作りだけでも悠仁には大変な作業で、既にへとへとだった。備え付けの椅子に座り込む。
「ちょっと動画で調べてきたんですけど、こんなに大変なものだとは思いませんでした…。」
「そうだな、見るのとやってみるのとでは違うのと、どんなことにも言えることがあるが、難しい手順って言うのがある。型作りはこれから作るものの形を決めるものだから、妥協するわけにはいかねぇんだ。だから大変だ。次の型に流し込むのはそんなに難しくないが、その次の細工がまた大変だ。しっかり休んどけ。」
「わかりました…。ちょっと、今日は一緒に行動できないことを仲間に伝えてきます。」
「おう、これが理由なら仲間も許してくれるだろうよ、金属の準備はしといてやるから行って来い。」
「はい、ありがとうございます。ちょっと行ってきますね。」
この調子だと今日はまともに行動できそうに無いことを悟った悠仁は、工房から出てバーグの家へ向かった。
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――カプランド バーグの家
バーグの家に着くと、フルールがネイトと一緒に庭先の掃除をしていた。
「お、フルール、ネイト。」
「あ!Yujiのおじちゃん!」
「Yujiさん、お1人ですか?」
「あぁ、そうなんだが、ちょっと伝えることがあってな。」
悠仁は手が離せない作業があって、明日の夕方から夜まで一緒に行動できないことを伝えた。
「なるほど、わかりました。それはそうと、手が離せない作業とは何をなさっているのですか?」
当然のことだが、フルールが尋ねてくる。
「それはまだ内緒にさせてくれ、ちゃんと明日には話すから。」
「わかりました、では皆さんにはそう伝えておきますので。」
「おう、悪いな。」
「いえ、Yujiさんのことです。きっと大切なことなんでしょう。」
「ま、それはみんなの反応しだいかな?じゃあ行ってくる。」
「はい、行ってらっしゃい。」
悠仁はフルールに見送られ、再度工房へとんぼ返りをした。
振り返るとフルールとネイトがまだ手を振っていて、箒が二本、塀に並べて立てかけてあった。誰かの家の庭先の、なんでもない夕方の景色だった。エリアボスの依頼を前にして、守りたいものの顔ぶれが増えていくのは、きっと悪いことではない。




