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受注

――翌日 悠仁の自宅


悠仁は調べ物のためにPCを起動し、検索を続ける。


「ほー、なるほど。へぇ、こんなのも…。いやでもこれは…」


何かを検索しているようだ。


「そうだな。これが安定か。よし、じゃあこれにするか。あとは戻って確認だな。」


悠仁は席を立ち、洗面所に向かう。


「とりあえず軽くシャワー浴びて、コンビニで飯買って…。」


これからの予定を確認しながら、身支度をするのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


――カプランド バーグ宅


「お、みんな集まってるな。おはよう。」


悠仁がログインしてバーグの家に来る時には、全員が揃っていた。


「おせぇぞ、組合に依頼が掲示されるのいつかわからないんだから、早く来いよ。」


「悪い悪い、ちょっと調べ物しててな。」


「へぇ、何してたんだ?」


「それは後で分かるから楽しみにしててくれ。それじゃあ、一度みんなで組合に行こうか。そろそろ張り出されてるかもしれないしな。」


全員が同意するのを確認して、悠仁達は組合へと向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


――冒険者統括組合 カプランド支部 ロビー


悠仁たちがロビーに入ると、既にかなりの人が集まっている。


「昨日はあんなに少なかったのに…」


「……組合の人と仲がいいと、珍しい依頼の内容とかも、先に聞けるから。……情報が、出たんだね」


ステラはこの辺のシステムに詳しそうだ。しばらく待っていると、昨晩の受付をしてくれた男性が、羊皮紙を持って受付カウンターの前に立つ。見た目からして、かなり疲れていそうだ。一晩中会議をしていたのかもしれない。


「…冒険者のみなさま。組合より緊急の依頼を発注させていただきます。詳細は後ほど掲示板をご覧になっていただきたいのですが、まずは口頭で失礼します。」


男性は紙を広げ、読み上げ始める。


「昨日カール高原にて、エリアボスに該当するモンスターの出現の報告がありました。容姿、再出現時期からみて間違いないと思われます。」


それを聞いた冒険者の何割かは、ざわつき始める。


「ごほん。静粛に願います。」


男性が咳払いをすると、場は再度静まり返る。


「このモンスターは、その外見からノワールと呼称されています。前回の出現では発見が遅れたため覚醒をしてしまい、街の住人が被害にあったり、家畜に甚大な被害がでたり、森の生態系が崩れたこともありました。その時には街に十分な冒険者がおらず、大森林に住むエルフに救援を求め何とか撃退をしましたが、エルフ陣営にもかなりの被害が出たと記録されています。」


エルフってあの魔法適性の高い…、森に住んでいるエルフってかなりのレベルなんだろ?大丈夫かよ…。などと声が上がる。


「今回は体の大きさから見て、まだ覚醒にはいたっておらず、討伐は前回よりも容易だと考えられます。」


(あれだけの瘴気を身にまとっていたにもかかわらず、まだ覚醒していないとなると、覚醒したらどんなことになるのか…)


「この件を組合は非常に重く受け止めており、領主であるウェイル候にも支援をいただき…」


男性は一呼吸置く。


「全体への報酬として、白金貨3枚分の報酬を用意いたしました。」


金額を聞いて、再度ざわつき始める。


「白金貨3枚っていくら分だっけ?かなり高いのは分かるんだけど…」


ミーナは高額通貨の日本円換算が上手くいかないようだ。


「ミーナさん、白金貨3枚となると、日本円で3000万円分ですよ。」


「さ、3000…」


アリスがミーナに換算額を伝える。ミーナは高い金額を聞くとフリーズする傾向にあるようだ。


「静粛に願います。確認をいたしますが、今回はエリアボスの討伐という非常に危険度の高い依頼となります。皆様が普段行っている狩りとは死亡率が違います。仮に死亡をしても組合、ALGOとして一切の責任を取ることはできませんので、重々承知いただければと思います。」


その言葉を聞いて、全体は静まり返る。


「エリアボスというのは、そんなに強いのですか?」


フルールが悠仁に尋ねる。


「あぁ、強い。まずその地域の適性レベルを遥かに超える強さを持っている。加えて、そのモンスターだけの固有の攻撃をしてくることもあって対策が難しい。絶対数も少ないから討伐のセオリーなんかも存在しないし、毎回ぶっつけ本番をする感じになる。1度でもエリアボスと戦ったことのある冒険者がいたら、それはとても貴重だ。」


「なんだか怖いですね…。」


「だからクランの専用依頼だし、報酬も段違いなんだ。」


「なるほど…」


「取り急ぎ、このような内容になります。参加していただけるクランがありましたら、後ほど受付にて受注を行ってください。日時は3日後の18時。その他細かい規約は受注時に書面としてお渡しするので、それでご確認ください。では、よろしくお願いいたします。」


男性が持っている羊皮紙を掲示板に貼り付けて、受付に引っ込む。掲示板の前はすぐに多くの人で埋め尽くされ、近づくことすら出来なくなった。


「わぁ…私もこのレベルになりますけど、エリアボスの依頼なんて初めて見ました。」


アリスもさすがにエリアボスの依頼を見たことは無かったようだ。


「俺もだけどな、エリアボスの出現自体珍しい。ひとまず受注だけして帰ろう。」


悠仁は受付へ向かう。


「おっと、あなたは昨日の。クラン『パーチ』のマスターさんですね?」


「はい、エリアボス討伐の依頼を受注しにきました。」


「なるほど、ではこちらにサインをお願いします。念のためお伝えしておきますと、クラン専用依頼はマスターさんかサブマスターさんしか受注が出来ませんので、ご注意ください。」


「なるほど、分かりました。…ではこれで。」


「はい、確かに。非常に危険な依頼です。十分にお気をつけください。これが規約が書かれている用紙になります。熟読してから参加をしていただきますよう、お願いいたします。」


「はい、ありがとうございます。では。」


悠仁は受付から立ち去る。既に悠仁の後ろには、何人かの冒険者が並んでいた。


規約の紙は思ったより厚く、危険の等級や免責の文言がびっしりと並んでいる。死という言葉が事務の書式に収まっているのを見るのは、掲示板の数字を見るのとはまた別の寒さがあった。それでも受注の列は伸びていく。この世界の冒険者は、その寒さごと引き受けて並ぶのだ。

「クラン専用依頼」(システム)

冒険者統括組合から出される依頼。通常の依頼とは異なり、クランとしてしか参加が出来ないようになっている。クランは最低6人からの集団なはずなので、最低限の人数を確保し、安全に依頼が遂行できるようにという配慮が含まれている。難易度は高いものが多く、報酬も多いことが通常である。珍しい報酬や依頼内容もあるのが特徴。

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