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ステラの帳面・その一 新入りの欄

――宿


『新しい帳面、一冊。冒頭の頁に、構成員を六名、書き写した。並びは、加入の順。所持金、各自申告。うち一名、ゼロ。……所持金ゼロの欄に、記号でなく人が入るのを見たのは、初めてである。ゼロという数字は、帳面の上では静かである。隣で見ていると、存外、騒がしい。』


『書き写しながら、気づいた。この六名のうち、いちばん新しいのは、私である。当帳面の新入りは、記録係、ということになる。新入りの初仕事が全員の名を書くことだというのは、書式として、悪くない。名を書いた順に、顔が浮かぶ。浮かぶ順は、加入の順と、一致しなかった。』


『特記の欄。フルールが、私の筆を見て言った。「きれいな道具ですね。大事にされてるのが、わかります」。……ん、とだけ返した。ん、以外の在庫が、なかった。返事の在庫切れについて、後日、仕入れを検討する。』


『同じく特記。AliceとフルールとYujiの会話、抜粋。「困ったことがあったら、何でも言ってくださいね」「ありがとうございます。Aliceさんも、どうぞ」「え、私ですか?で、では、お言葉に甘えて、何かあれば」「はい、何でも」——丁寧語の在庫が尽きない二人である。尽きない在庫は、資産か、負債か。判定を保留して、観察を打ち切った。日が暮れる。』


『同じく特記。ミーナ、クランの名を、本日だけで十四回、口にした。数えた。出来立ての名前は、口が勝手に使いたがるものらしい。名前の減価は、当面、見込まなくてよい。』


『カイン、新入りに宿の飯の大盛りの頼み方を最初に教えていた。新入りとは、私のことである。教育方針に、その優先順位で、いいのか。……頼み方は、覚えた。覚えた、という事実は、ここにだけ書く。』


『私事の欄。この六名、よく笑う。帳面が、少し明るい。以上。』

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