予期せぬ再会
――3のダンジョン 4階層目
「ふっ!」
カインの横薙ぎが空を切る。バックステップでかわしたスケルトンはすぐに身構える。
「さすがにはえぇな。避けた後の隙も少ない。」
「3のダンジョンで、しかも4階層目だし、敵も手ごわくなってくるからな。」
「ま、こんなところで躓いてたら先にいけないな。」
カインは盾を構えて守りを固める。
「依頼達成まで、あとどの位だ?」
「依頼は3のダンジョン以上にいるスケルトンナイトの核30個だから、あと18個だ。」
「気が遠くなるな…。」
「アンタが頑張ればすぐよ、引き離して!」
ミーナがカインに指示をする。
「よっしゃ、まかせろ!」
カインの声に釣られたスケルトンナイトの攻撃を右手に持った剣で薙ぎ、体がのけぞった所で突進する。
「おら!シールドバッシュ!」
ギンッ!という鈍い音と共に、敵が数メートル後ろに弾き飛ばされる。
「いい感じ!」
ミーナが弓を引き絞る。
「それっ!」
放たれた矢は綺麗に核を射抜く。
「命中!」
ミーナがガッツポーズする。
「残りは2体ですね。Yujiさん、左をお任せしてもよろしいですか?」
フルールが杖をもったまま確認をしてくる。
「わかった、じゃあもう片方は任せた。」
フルールはにこりと笑って詠唱を始める。
「私にも感じさせて 身を焦がす嫉妬の焔を」
杖を振りながら、唄うように詠唱を終わらせる。
「フレイムウェッジ」
スケルトンの眼前で炎で出来た短剣が出現し、次の瞬間にはスケルトンの核に突き刺さる。
「あんな魔法もあるんですねぇ…」
アリスが感心したように頷く。
「切り裂け わが障害を」
フルールに続いて悠仁も詠唱を終わらせる。
「ウィンドカッター!」
圧縮された空気が核を真っ二つに切り裂く。
「よし!…って、がっつり穴開いちまってたり切れてたりしてるけど、いいのかこれ…?」
カインが敵の体から取り出した核を手に持ち、こちらに聞いてくる。
「核の状態は問わないってことだし、問題ないだろ。」
悠仁は受け取った核を収納にしまう。
「あっちゃー…もう収納いっぱいだよ。いい収納買わないとダメだなこれ。」
「収納は高いですからね…。私もあまり買い換えられてません…。」
アリスは困ったように笑う。
「仕方ないさ、収納は装備アイテムの中でも高級なものだ。次の核からは誰か違う人が拾ってくれ。」
「はいはい、街についたら渡せばいいわね。」
「あぁ、それで頼む。」
今回は露店で受けた依頼でやってきた。3のダンジョン以上の迷宮に住んでいるスケルトンの核を30個納品して欲しいという依頼だった。報酬が金貨5枚だったので、小遣い稼ぎにはいいと思って受けることにしたのだ。綺麗な核30個となると問題だが、どんな核でも5枚を支払うというので、他の依頼よりも比較的難易度が低かった。
依頼を受けて狩るというのは、自分たちの都合で狩るのとは少し勝手が違う。数を数えながら戦い、質を見ながら拾う。仕事として組み立てられた狩りには、稼ぎとは別の張り合いがあった。
「じゃあ戻りながら狩るか。残り半分だろ?」
「あぁ、さっきので15個になったからな。」
「やっぱり地下は気が滅入るからな。さっさと地上に戻りたい。」
そういってカインは最後尾まで回り、今度は地上に向けて進みだすのだった。
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「おぉ!こんなに早く!ありがとう、しかも質のいいものも混じってるね。これは報酬だ。少し色をつけておいたよ。」
「ありがとうございます。では、これにて。」
悠仁は依頼主に納品をして報酬をもらう。金貨6枚を受け取って仲間の下へ戻る。
「よし、これで依頼達成だ。報酬はまた酒場で渡すよ。とりあえず行こうか。」
悠仁を先頭に酒場に向かう。人が減ってきたとは言え、銀翼の夢を始めとした酒場は毎日大繁盛だ。
カウベルを鳴らし店の中に入ると、熱気が5人を包み込んだ。店に入るや否や、ウェイトレスがこちらへ駆け寄ってくる。
「すみません、今満席なんですぅ…」
「そうなんですね、では他の店を…」
「……あ。Yujiだ。」
気だるげなのに、不思議と雑踏を抜けて届く声だった。遠くで小さく手を上げて、こちらにアピールしている影を見つける。
「あれは…」
灰がかった藤色――モーブグレーのローブに、星をあしらったつばの広い魔女帽子。どこかで見た覚えがある。
「…あ。」
悠仁は、スクロールについて話を聞いた女性であることに気がつく。ひとまず手を振られているのに無視するのも失礼なので近づく。
「お久しぶりです。えと、ステラさん…でしたっけ。」
「……ん。覚えてて、くれたんだ。……あと、さん、いらない。ステラで、いい。」
「えと、じゃあ…ステラ。」
「……ん。それで。お店、変えるみたいだったけど……ここ、座る? 席だけ広くても、一人だと、つまらないし。」
「いいんですか?私達は5人もいますけど。」
「……酒場って、気の置けない相手が多いほど、楽しいものなんでしょ。」
ステラは眠たげな半眼のまま、わずかに口の端を上げた。
一人で広い卓に座るステラの前には、飲みかけの一杯と、読みさしらしい本が一冊。騒がしい酒場の真ん中で、そこだけ静かな島のようだった。誘われたのはこちらの方なのに、なぜだか少し、こちらが招き入れる側の気分になる。
「なるほど、それもそうですね。ではお言葉に甘えて。」
悠仁は、入り口でこちらの様子を伺っている4人に向かって手招きをする。
「みんな、こちらステラだ。前に露店を開いている時に買わせてもらってな。相席をしてもいいそうだ。」
「わぁ、ありがとうございます!」
ミーナが頭を下げる。
「すんませんね、お嬢さん。折角なんでお言葉に甘えさせていただきます!」
カインは頭を下げる前に席に座る。
「……どうぞ。……今日の話、聞かせて。」
ステラは、まだ立っている4人を手のひらでゆるく席に促し、飲み物の追加を行う。
初対面の四人を前にしても、ステラの調子はまるで変わらない。人見知りをしないというより、人との距離の詰め方が独特なのだ。近づくでも遠ざかるでもなく、ただ同じ卓に置いておいてくれる。この距離感は、存外に居心地がよかった。
「ステラは今日も露店で?」
「……まあ、細々と。……Yujiたちは、今日は?」
「私達は依頼で3のダンジョンに行ってました!」
ミーナが元気よく答える。
「……3のダンジョン。懐かしい。私も、前に行った。……まだ、アンデッド、湧くの?」
アリーシャ周辺のダンジョンでアンデッドが湧いていたのは、しばらく前の話だ。今では湧くモンスターの種類が変わっていることを知らないのだろう。
「いや、今はスケルトンナイトが湧きますね。おかげで魔具製作をしている人達が大喜びらしいです。」
「……ああ、それで。露店に魔具、増えてたんだ。」
ステラが納得したように、ぽんと小さく手を合わせる。
「……みんな、楽しそうで、なにより。」
「そうですね、ぼちぼちやらせてもらっています。」
「……それにしても、Yuji。ずいぶん、華やかになったね。……こんな綺麗どころに、囲まれて。」
帽子のつばの下から、からかうようにこちらを見てくる。
「ステラほどじゃないですよ。」
社交辞令を述べておく。
「……ふぅん。」
相手も社交辞令とわかっているので、さらりと受け流される。
「……でも、そういうの。周りを見ながら言ったほうが、いいよ?」
「はい?」
周りを見渡すと、アリスが膨れている。
「…どうした?」
「…なんでもありません。」
一体なんなのだろうか。
「……Yujiたちって、依頼も、受けるんだ?」
「えぇ、私達に可能なことなら受けようと思っています。まぁ、なかなか報酬がいい依頼は無いんですけどね。」
「……それなら……あ。飲み物、来た。……飲みながらに、しよ。」
「それもそうですね。じゃあ…」
それぞれ飲み物を手に取り。
「じゃあ、今日も無事に帰ってこれたことに!」
「「「「「乾杯!」」」」」




