手紙の内容①
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――酒場 銀翼の夢
「よ、待たせたな。」
カインが酒場のドアを開けて、席へ向かってくる。
「おう、俺も今来たところだ。」
「…この会話、気持ち悪いな本当に。前にもやっただろ。」
「それが実際なんだから仕方ないだろ。」
「もう慣れたからいいけどよ。病院はどうだった?」
カインは心配そうに尋ねる。
「とりあえず問題なかったよ。アリスの監視付きにはまいったけど、なんだかんだ楽しかったさ。」
「へぇー、電話でちゃんと行くように言われたのか?Aliceちゃんらしいな。」
「いや、実際に病院まで付いてきた。」
「…は?」
カインはその言葉を聞いて固まる。
「…?あー…言ってなかったな…。」
「おいまさか…Aliceちゃんと実際に会ったのか…?」
「…まぁ、そういうことになるな…。」
「まじかぁ…」
カインは顔を両手で覆い、天を仰ぐ。
「…もうさ、Aliceちゃんは妹みたいな感覚でエロい目で見て無いんだけど、確認したいことがある。」
カインが真剣な顔で迫ってくる。
「…なんとなく予想はついているけど、とりあえず答えてやろう。」
「あのおっぱいと尻は本物だったか…?」
「…別に脱いだわけじゃないから本物かは分からないけど、少なくとも外見は同じだったよ…。」
案の定の質問に、悠仁は呆れながら答える。
「…いかん、Aliceちゃんを見る目が妹から普通の女に戻ってしまいそうだ…。」
「やめとけ。なんか、いいとこのお嬢様っぽかったし、俺達じゃ相手にならんさ。」
「…今はとりあえず、気にしないようにするか…。」
(今はってなんだ、今はって…)
悠仁はカインの発言に頭を痛めながらも、とりあえず流すことにした。
「そういや、さっきテッドさんのとこ行ってきたんだけどさ。昨日手に入れた手紙だけど、それを調べられそうな人がいるみたいだ。」
「ほー、やっぱりそういうのに詳しい人っているんだな。」
「人口の多いゲームだからな。そういったことを専門に調べている人もいるんだろう。だから、他の2人がきたらもう一回テッドさんのところへ行ってみようと思ってる。」
「それがいいな。あの女の子のことだけは少し気になるな…。ゲーム内で意識を長時間失っているのは、はっきりいって異常だ。」
「そうなんだよな。このゲームで意識を失うのは死亡も同義になるし、かなり危険な状態であることに間違いは無いんだが、あの様子だと、かなりの長時間寝かされているように見える。」
「結局は、あの手紙の内容がわからないことにはどうしようもないってことだよな。」
「ま、そういうことだ。ひとまずは飯でも食いながら待ってよう。俺の治療費もそれなりにかかったものの、余りがあるからみんなで分配しようぜ。」
「そうするか。っていうか、未だに換金が全然できないな…。」
「まだそのレベルに達して無いってことだろ。消耗品や武具の修繕、治療費を払ったら正直すっからかんだ。上のレベルに行けば、その分費用も多くかさんでくる。上級者はどうやって換金してるんだか…。」
もっと技能を高めて、武器の消耗を抑えながら戦うことができればできるのだろうが…。
「早くゲームだけで生活できるようになりたいぜ…。」
「焦るといいこと無いから、落ち着いていこう。」
「そうだな…。もうあんなことはごめんだ。」
1のダンジョンでのことを思い出して、少し憂鬱になる。
「そうそう。じゃあ、アルコール以外のもので頼んじまうぞ。」
「おう、注文は任せた。」
2人は食事をしながらアリスとミーナを待った。
男二人の卓は、話題が途切れても気詰まりにならない。この間合いに落ち着くまでに1年半かかったのだと思うと、それも悪くない時間だった。窓の外を、夜のバザールへ向かう人の流れがゆっくりと過ぎていく。
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「おまたせー、今日も疲れちゃったわ。」
「お待たせしました。悠仁さんは、さっき振りですね。」
「お、おう。そんなおおっぴらに言っていいのか…?」
アリスは今日の出来事を、あけすけにみんなの前で言ってしまう。
「え?2人で酒場に来る前に買い物でもしてたの?」
「そういうわけじゃないんだが…。忘れてくれ。」
「???、うん。」
「それで、全員揃ったところで話があるんだが…」
悠仁は、さっきテッドの店で聞いたことを話した。
「あぁ、そういえば手紙は私が持ちっぱなしだったっけ。」
「いや、何も言ってなかった俺も悪いから気にしないでくれ。誰も用事がなければ、まずテッドさんのところに行こうと思ってるんだが。それでいいか?」
「はい、大丈夫です。」
「俺はさっき言った通りだ。」
「私も問題ないわよ。消耗品はここに来る前に買っておいたしね。」
「よし、じゃあ早速いこう。」
4人はテッドの店へ急いだ。
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「いらっしゃ…、Yujiさんじゃないですか。随分と早かったですね。」
「ええ、思いのほか早く集合できたので…。早速で申し訳ないんですが、これが先ほど話していた手紙です。」
「なるほど、拝見します。」
テッドは悠仁から手紙を受け取ると、まじまじと眺める。
「ほう…、これは珍しい。…なるほど…」
テッドは手紙を見ながら、うんうんと頷いている。
「それで、これは誰かに解読してもらえそうなものですか?」
「…あ。あぁ、大丈夫ですよ。このくらいなら、私が解読できそうです。」
「「「「えぇ!」」」」
あまりの驚きに、4人揃って声をあげてしまう。
「実は私は戦闘向きではなくてですね。冒険をしていても、後方支援やこういった知識に関することばかりで貢献していたんですよ。その中には罠の解除に、ゲーム内の未知の言語を読み解かなくてはならないものもありましてね。その時に勉強したんです。」
「な、なるほど…」
ゲーム内で言語を一つ覚えたことをあっけらかんと言うテッドに、4人はたじたじである。
「それで、内容はどういったものでしたか?」
アリスが話を進める。
「おっと、そうでした。これは中々に衝撃的な内容でしたね。私も、こんなことは見たことがありませんでした。」
「引っ張りますね。」
ミーナも手紙の内容が気になるのか、口を挟んでくる。
「あぁ、すみません。こういうのを見ると、つい舌が回ってしまって…。仲間からも、お前にはそういうところがあるって言われてたんですけど…。では…」
テッドは軽く咳払いをして、手紙の内容を読み始める。
店の炉の火が小さく爆ぜる。四人は自然と姿勢を正していた。読めない文字で書かれ、地下の最も深い場所に残されていた手紙。その最初の一語を、誰もが固唾を呑んで待った。




