スケルトンナイト
前衛のカインは、スケルトンナイトとの間合いを計る。初めての相手を前に緊張が漂う。
「…変な汗かいてきたぜ…。」
カインが前を向きながら呟く。
「敵さんは汗かいてないっぽいぞ。」
「かくわけないだろーが…。」
「軽口に返事できるなら大丈夫だ、お前ならできる。」
「おうよ、まかせとけ。」
「それでAlice、スケルトンナイトには何か弱点とかあるのか?」
ここで戦闘をしたことがあるであろうAliceに解説を求める。
「スケルトンナイトは攻撃特化のモンスターです。武器を持っているので攻撃力が強いですが、胸郭の中にあるあの紫色に光ってる核を壊せば、体全体が崩れて戦闘不能になります。物理攻撃でも魔法攻撃でも壊れるので、なんとかして当てれば大丈夫です。」
相変わらずの知識量である。
話を聞きながら、悠仁は敵の胸郭の奥で明滅する紫の光を確かめた。骨と骨の隙間で、心臓の代わりに光が脈打っている。生き物ではないと頭で分かっていても、あの規則正しい明滅にはどこか生き物じみた嫌らしさがあった。
「なるほどな…、それじゃあ!!」
そういってカインが飛び出す。その動きは外でレッドスコーピオンを狩った時と同じ動きだった。
「一閃!!」
剣が敵の体を通り抜ける頃には、核にヒビが入っていた。
「よし!手応えあり!」
構えを解いたカインは剣を振り回す。
「わぁお、見事なもんね。ちょっと前までまともな攻撃なんてしたこと無かったから気付かなかったわ。」
「筋力値だけは高いみたいだからな、骨だろうが何だろうが砕いてたけど、そこにスキルが加わったから綺麗に切断できるようになってるな。」
「お見事ですね。これで武器もしっかりしたものに変えれば、パラディンとしてもやっていけそうですね。ただ…」
「そうね…」
「まぁそうなるよな…」
「だよなぁ…」
4人もそろそろ分かっていた。このレベル帯のこの強さの敵が、1体で行動しているはずがないと。
松明の灯りの届かない通路の奥から、乾いた音がいくつも重なって近づいてくる。
後ろからは何体も何体も、カラカラという音と共にスケルトンナイトが出現した。
「こうなったら俺は基本防御に徹して、隙を見て攻撃するスタイルに変更する。Yuji、ミーナ、頼んだぞ。」
「おう、こっちこそ頼んだぜ。」
「さくっと片付けてやるわよ。」
「回復はできますけど、くれぐれも気をつけてくださいね。」
サムズアップしたカインは
「ウォオオオオオオオオオオオオオ!!!」
咆哮をあげて敵の注意を引く。壁全体がびりびりと震えているようだ。
挑発を受けたスケルトンナイトはカインに向かって飛び掛かってくる。
(ちょうどいい、新しいスキルを試すときだな。)
「水よ…」
悠仁は杖を構え、新しく覚えた呪文の詠唱を始める。
「そんなちんたら詠唱してると、先に狩り終わっちゃうわよ!」
そういってミーナは弓を取り出し、器用に肋骨の隙間から核を射抜く。
「やるじゃねぇか!」
「ざっとこんなもんよ!どんどんいくわよ!」
そういって弓を構えなおすときに、悠仁の詠唱が終わる。
「地より敵を串刺しにせよ…アイシクルパイル!」
詠唱を終えると、Aliceの背くらいの氷の杭が地面から飛び出し、3体のスケルトンナイトの体を核ごと串刺しにする。
「ひゅー!すげーなYuji!ファイヤーボール撃ってたころのお前とは大違いだぜ!」
「お前が成長したってことは俺も成長してんだよ!任せとけ!」
「ふふっ…じゃあ私もお手伝いを…」
そういってAliceも杖を構える。
「風よ…、彼の者達の自由を その力で縛り給え」
杖で目の前の空間をとんっと叩きながら詠唱を完了する。杖を振るAliceの動きはいつもながら軽やかだ。
「エアバインド」
すると次々に、見えない力によってスケルトンナイトの足が止まる。個体によってはつんのめって倒れこんでいる。
「おぉ…あれって複数体にも使えるんだな…。」
悠仁は初めて自身に使われた時のことを思い出す。
「っていうかAliceちゃん3小節の呪文使えたのか…」
目の前で倒れこんでいくモンスターを見て、カインは驚きを隠せないようだ。
「ほらカイン!目の前で動きが止まっている敵がわんさか居るんだから、さっさと攻撃してよ!」
「そうだった…!いくぜ!」
そういってカインは背中からの抜刀の構えになり、野球選手がバットを振るように腰をひねりながら斬撃を繰り出す。
「爪痕!」
そういって剣を振りぬくと、その軌跡は何故か3本に見えた。そして倒れるスケルトンナイトも3体であった。どうやら同時に3回分の攻撃判定があるらしい。
「おっしゃあああ!初めて使ったけどこいつはいいぜ!」
(動きが止まっている今なら、もっと正確に貫ける…)
「水よ…、地より敵を串刺しにせよ……アイシクルパイル!」
再度アイシクルパイルの詠唱をし、今度は4体の体を串刺しにする。
「よし…!4本とも命中だ!」
「私も負けてらんないわね…」
ミーナは弦をきつく引き絞る。この戦いの最中でも、ギリギリという軋みの音が聞こえてきそうなくらい手に力がこもっているのが分かる。
「ペネトレイト…ショット!」
掛け声と共に放たれた矢は、1体目の核を貫いても尚勢いが衰えず、その後ろのモンスターの核も粉砕した後に壁に突き刺さった。
「ミーナお前…どんな筋力してんだよ…。そんなの俺でもできねぇよ…」
「スキルよスキル!普通に撃ってあんなに力出るわけ無いじゃない!」
「どうだか…だけど少し落ち着いたみたいだな。」
「そうだな、全部で…11体か。あの頃の俺達から信じられない数だな。」
「誰も攻撃を受けていないので万々歳ですね。スケルトンナイトは、この核が魔具の材料になるのと、持っている武器は等級の低いものばかりですが、たまに良い金属が使われている場合があります。そしてなにより、アクセサリーとして貴金属を身につけている場合があるので要チェックです。」
Aliceがドロップ品についての解説をおこなう。
「おお!!そいつは盛り上がるぜ!!今回の敵になんかアクセサリーをしてるやつはっと…お!こいつ指輪つけてるぞ!」
「それはいいですね、貴金属でできている可能性もあるので、帰ったら鑑定をしてもらいましょう。少し高く売れると思いますよ。」
「はっきり貴金属って分かるのはこっちとしても励みになるな。」
目に見えないものよりも、やはり目に見えるものの方がやる気になるのは、人間なら誰しも当てはまるだろう。
「貴金属は効果付のアクセサリーを作るのにも使うからね、どこでも引っ張りだこよ。」
「こいつはテンション上がってくるな!!!ガンガン行こうぜ!」
「どこぞのRPGの作戦じゃないんだから…」
ミーナが肩を落とす。
「…?」
Aliceは何のことについて言ってるのか分からないといわんばかりに首を傾げる。
「…え、嘘…、Alice…何を言ってるかわからないの…?」
「は、はい。すみません…。」
某RPGが最終作を発表してから、既にかなりの年月が経っている。学生であるAliceは知らなくてもおかしくないが、それよりも…
「嘘よ…、私が知っててAliceが知らないなんて…」
戦闘で盛り上がっていた空気はどこ吹く風で、ミーナは虚ろな目でぶつぶつと呟いている。
「ミーナ…」
カインはミーナの肩に手を乗せる。
「カイン…」
振り返りカインの顔を見る。
「ようこそ、こっち側へ。」
カインはニカッと笑いかける。
「いやぁあああああ!私をそっちに連れて行かないでぇえええ!」
「何やってんだお前ら…。ほらさっさと次に行くぞ。」
「あはは…」
悠仁の促しで、一行は更に深部へ歩を進めた。
「スケルトンナイト」(モンスター)
砂漠のダンジョンに存在する骸骨型のモンスター。全身が骨でできているが、胸郭の中に紫色の鈍く発光する核がある。この核が動力源になっており、破壊すれば戦闘不能になる。人間が使用する剣や盾を使い、場合によっては徒手格闘を挑んでくる場合があるので、攻撃パターンに注意する必要がある。
「スケルトンの核」(ドロップアイテム)
スケルトン全般のドロップアイテム。状態がいいものは魔具の素材として重用される。そのため、状態の良い核は高値で取引される傾向にある。しかしながら、これが動力源なのでうまく機能停止するのはとても難しいため、ほぼ運任せになる。




