1のダンジョン
剥ぎ取りをしたカインと、付いていったミーナが戻ってくる。
「いやぁー!どうだったよ!俺の華麗な戦闘は!」
剥ぎ取りを行ったばかりの毒腺を持ちながらカインが尋ねる。
「いやいや、それこっち向けるなって。死んでても効果ありそうだ。」
「あぁわりぃわりぃ、で、どうだったよ!」
「あぁ、確かにすごかった。お前いつの間にスキルなんて取ったんだ?金も無かっただろ。」
「色々あってな、特訓の末スキルを習得したのだよ。」
カインは腕を組んで胸を張る。
「まぁいいさ、カインが攻撃もできるようになると、パーティー全体としても助かる。」
「そうですね、カインさんも攻撃に移れるようになれば全体のDPSは向上しますね。ただ、敵が強くなっているので、被弾が多くなると場合によっては命に関わるので気をつけてくださいね。」
「おうよ!任せとけ!」
「初のダンジョンで仲間が死亡、なんて後味が悪すぎて困るからやめてよね。」
「その時はみんなで遺体を持って帰ってくれよ!」
「いやよ、誰がそんなことするもんですか、自分の足で帰りなさい。」
「馬鹿なことしてないでいくぞ。Alice、先導を頼む。」
「分かりました。」
気を取り直した4人は、Aliceを先頭に1のダンジョンに入っていくのであった。
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――1のダンジョン 入り口付近
しばらく進むと階段が曲がっており、その先は真っ暗であった。
「光よ…」
Aliceが短く詠唱をする。
「フォトン」
Aliceが目の前の見えない壁にノックするように杖を振ると、杖の先の魔法石が強く光る。
「しばらくはこれを松明代わりにして進みましょう。ダンジョンの奥は、何故か分かりませんが壁に松明がついていて消えることは無いので、明かりに困ることはなくなると思います。」
「へぇ、そんなギミックがあるのか。」
「そうね、何故かわからないけど消えないのよね。水で消してもすぐに点くのよ。」
「暗いといいことも無いしちょうどいいな。」
いよいよ地下迷宮っぽくなるようだ。
階段を降りるごとに空気は冷えて、乾いた砂の匂いが石と黴の匂いに変わっていく。地上の灼熱が嘘のようで、汗の引いた背中がかえって薄ら寒い。同じ砂漠の下に、これほど別の世界が埋まっているとは。
「そうですね、ただ、松明が点いているところは漏れなくモンスターが出現しますので気をつけてください。」
「んじゃ俺がAliceちゃんの前にいとくわ。Aliceちゃん、俺の足元を照らしながら頼む。」
「分かりました。ですがそこまで遠くを照らすことはできないので、奇襲に注意してくださいね。」
「そうか、じゃあ。」
カインは盾を取り出し、前に構えながら前進する。ただそんな心配も杞憂に終わり、松明がついている階層まで降りてくることができた。
「そしてここからは迷路のような様相を呈しているので、これを使います。」
そういってAliceは収納の中から、白に淡く光る石を取り出した。
「それってマーカーストーンか?」
「その通りです。場所が分からなくならないように、これを落としながら進みます。今回私達は白を使いましょう。」
そういってAliceは石を足元に落とし目印にする。
「さすがAlice、準備万端って感じね。」
「私ももう長いですからね。」
えへんと胸を張りドヤ顔をするAliceと対照的に、ミーナの顔はやつれていた。
マーカーストーンの白い光が、通路の暗がりに点々と道しるべの尾を引いていく。振り返れば来た道が光の列で示されていて、それだけで背中の不安が半分になる。道具ひとつで恐怖の量が変わる。ダンジョンとは、そういう場所であるらしい。
「さてAlice、ダンジョンというのだから何かトラップなんかあるのか?」
「もちろんです。そこかしこにトラップがあって、そしてなにより、ダンジョンは生きているんです。」
「生きてる?ってどういうことだよ。」
どうみてもダンジョンの壁は石でできており、無機物だ。
「そうですね、例えば今のこの道、私は通ったことありません。」
「え?通ったことないってどういうことだよ、ここまで道は1本しかなかったぜ。んでAliceちゃんはこの場所に来たことあるんだろ?」
「このダンジョンは定期的に道や設置物の場所を変えるんです。」
「えぇ!それって迷いに迷うじゃねぇか!」
(カインが驚くのも無理はない。事実俺も驚いている。途中で道が変わってしまったら帰宅は困難になるだろう。)
「えぇ、その通りなんですけど、実は冒険者が中に入っていると活動が急に遅くなるので、私達が入っている間にダンジョンの構造が変更されるということはありませんのでご安心ください。ただ、一回生還して戻ってくると全く違うダンジョンだったってことはよくあることです。」
「へー、意外とシャイなんだな。」
「ふふふ、そうですね。ダンジョンというのは意外とシャイなのかもしれません。」
Aliceがコロコロと笑う。
「シャイならシャイでもっとアイテム多目でモンスター控えめに、しかも大人しくしててほしいわね、お金はいくらあってもこまr……ちょっと待って。」
ミーナが停止を要求する。
「…どうした。」
「あそこ…、地面が少し他よりも出っ張ってない?」
「…そうか?」
悠仁は目を細めて見てみるが、他との違いはわからない。
「確かに…よく気付きましたねミーナちゃん。」
「他の二人は分かってないみたいだけどね…」
「「???」」
「気をつけてあの辺りに近づいて見てみなさい。」
「お、おう…」
カインは近づいて、ミーナが指差した辺りを見渡してみる。
「っていっても何も…いや、確かにここだけおかしいな、不自然に盛り上がってる。」
よく見ると石レンガが数センチ出っ張っている。ただの荒れた道だと言われれば信じてしまうレベルの突起だ。
「でしょ?それ押すと罠が起動するはずよ。」
「罠!?」
「そうね、ここのダンジョンだとちょっとモンスターが沸いたり、ギリギリ致命傷にならないような矢を飛ばしてくる罠もあるわ。」
「そうなのか、で、もしかしてこの罠の位置も…?」
「はい、ランダムになっています。なので、ダンジョンを覚えて再攻略!ってことはできないので、毎回毎回しっかりと準備をしてこないと大変なことになるんです。」
「それはやっかいだな…」
「今回私が見つけられたのはたまたまよ、罠検知スキルはシーフのスキルだから、そこまで完璧にできないわ。」
「俺達も気をつけて進まないといけないな…。」
悠仁は気を引き締める。
「そうですね、まだ序盤のダンジョンですが、気を抜いた冒険者が重症を負ったり死亡するのはよくあることですからね…。私も気をつけます。」
うまく罠を避けつつ、4人は前へ進み続ける。
「でもよ、罠だけあるっていうのもなんか味気ねぇな。宝箱とかないのかよ、RPGの定番だろ?」
「もちろんあるわよ、ただしっかりと確認してから開けないと、それに罠が仕掛けてあったり、ミミックだったりするから気をつけなさい。」
「そこまで再現しなくてもいいんだよなぁ…」
カインはがっくりと肩を落とす。
「でもまぁ宝箱の中には等級の高いアイテムだったり、珍しい武器が入っていたりするわ。開けるか開けないかはパーティーで相談するとして、開けていいことも多いのは事実よ。」
「その辺はAliceとミーナに頼むよ。俺達はまだダンジョン初心者…というか初体験だからな。」
「まぁできる限りやってみるわよ…っていうかお客さんがお出ましよ。」
前方からカラカラという小気味いい音と、サーベルだと思われる鈍い光が見える。
「さて、ダンジョンの初戦闘と行きますか。カイン頼んだぞ。」
「おう、任せろ。」
4人は数体のスケルトンナイトを前に戦闘態勢を取った。
「ダンジョン」(施設)
地下、地上問わず迷宮の総称。中では様々なギミックとモンスターが出現する。ここを探検することこそがRPGの醍醐味というプレイヤーも少なくない。ダンジョンは毎回構造が変化するため、必要な対策を十分に取る必要がある。




