↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
356/394

ステラの帳面・その二十七 秤の欄

――ジュネプロ村 選別小屋


『収入。杜松の実の選別、手伝い賃。村の相場どおり。値切りも上乗せも、なし。正しい村である。正しい村の帳面は、書くことが少ない。少ないのは、良いことである。帳面が厚くなる村は、どこかが、間違っている。』


選別小屋の秤は、分銅が古くて、片側に癖がある。癖の分を指で足す婆の手際、玄人。足す量、見たところ、実にして三粒前後。三粒を指が覚えるまでに、何年かかるのか。聞かなかった。聞いたら、答えの年数に、値がつけられなくなる。うちの帳面の書式で言えば、あれは「補正込みで正確」である。


隣の席は、ノーラだった。十一歳。選別の速さ、大人の七割。速さより、止まらないことのほうが、玄人である。


「おねえさんの帳面、それ、なに書いてるの?」


「……実の数と、賃金と、秤の癖。」


「秤の、癖?」


「そこの分銅、片側が古い。婆さまが指で足してる分が、癖。」


ノーラは秤と婆さまを交互に見て、それから、真剣な顔で自分の掌を見た。


「わたしも、わかるようになる?」


「なる。」即答した。速さより、止まらないこと。この子はもう、それを持っている。この子の欄は、たぶん、いつか別の帳面に載る。載る側の帳面に。即答は、商人の禁じ手である。見込みに即答をすると、相場を見誤る。見誤ってもいい見込みというものが、あるとすれば、こういうのである。


『私事の欄。実を三粒、噛みながら書いた。歌の代わりに実を噛む国の、歌の代わりの帳面である。以上。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。