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閑話5 フルールと市場のお使い
――カンタヴィア 市場
白鳩亭の女将に、お使いを頼まれた。杜松の実をひと袋と、ブレ粉を二袋。フルールは、大任である、と背筋を伸ばした。
市場までの道は、覚えた。覚えたが、念のため、風の妖精に先導も頼んだ。
≪風のおしゃべりさんたち、市場までの道を、そっとお願いします≫
静かな都の静かな市場で、フルールの買い物は、しかし、静かには終わらなかった。杜松の実の露店の老婆が、フルールの肩の上を見て、目を丸くしたのだ。
「……あんた、あれだね。精霊連れだね。」
「わ、わかりますか?」
「あたしの婆さまが、そうだった。……ちょいと、頼まれとくれ。うちの水甕の水が、最近すぐ濁る。見てもらえんかね。」
水甕を覗くと、答えは簡単だった。甕の底で、水の妖精が一匹、拗ねて丸まっていた。長年この甕に住んでいたのに、新しい柄杓が鉄製になって、指を挟んだのだという。
「……だ、そうです。木の柄杓に戻してあげてもらえますか?」
「なんとまあ。……妖精の労災かい。」
木の柄杓に戻すと、水は、その日のうちに澄んだ。お礼に杜松の実をおまけしてもらい、帰り道、フルールはほくほくと呟いた。
「お使い、大成功です。……あ。」
ブレ粉を、忘れた。市場まで、もう一往復。風の妖精たちが、笑いながら、また先導した。




