ステラの帳面・その二十三 貫いた雷の修繕費
――カシュカント
『模擬戦、終了。演習場の壁、修繕費の請求、一件。中盤のヴォルトペネトレイション、盾の先の壁の分。請求書の宛名は「パーチ御中」。御中、の二文字が、妙に、他人行儀である。壁に穴を開けた間柄で。』
『特記の欄。責任の所在会議、抜粋。カイン「あれは悠仁の雷だろ」。悠仁「受け流したのはカインだろ。受け流した先に壁があった」。カイン「壁の位置は俺のせいじゃねぇ」。……議論が建築の責任に到達したところで、私が按分を提示した。六対四。詠唱者六、受け手四。算定根拠——威力の出所、六割。軌道の選定、四割。根拠を読み上げたら、両者とも、黙った。数字は、声より大きい。』
『異議、二件。両者から。「「四(六)は多い」」。声が揃ったので、両異議とも却下。揃った異議は、実質、和解である。和解、という科目は帳面にないので、雑益に計上する。』
『ミーナ「私の矢は刺さってないから無関係」。刺さってないのは回収したからである。回収の所要、会議開始前の三分。手際だけなら、表彰ものである。証拠隠滅を無関係とは言わない。ただし請求もされていないので、帳面上は、無関係。……納得はしていない。納得していない件の一覧は、当帳面の巻末に、ある。頁が、そろそろ、足りない。』
書き終わりかけたところで、肩越しに、声がした。
「……おい。今の按分会議、まさか全部書いてんのか。」
「……ん。議事録。」
「『実質、和解である』って何だよ。俺は和解してねぇぞ。」
「異議は、締め切った。」ステラは、頁で手元を隠した。「次回から、発言は、記録される前提で。」
カインが唸り、ミーナが「あ、私の証拠隠滅のとこ消して」と寄ってきて、帳面は、その夜二度、取り返される危機を越えた。危機の回数は、正の字で数えている。正の字が、この頁だけ、妙に、育っている。
『私事の欄。按分、六対四。全額、樽一杯の果実水で手打ち。修繕費より高くついた。こういう帳尻を、たぶん、仲間と呼ぶ。追記——本日、当帳面の閲覧希望者が、また増えた。警備を、強化する。以上。』




