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ステラの帳面・その二十 先輩の欄
――カシュカント クランハウス
『本日、現実の話が出た夜。記載は、要点のみ。要点のみ、と最初に書く夜は、要点の外のほうが多い夜である。書式の白状として、記しておく。』
夜更け、帳面を付けていると、ミーナが向かいに座った。白湯を、二つ持って。一つは、私の分らしい。頼んでいない白湯が卓に置かれた回数、当帳面の記載範囲で、これが四回目である。四回とも、置いた者は、同じ。
「ね、ステラ。私、いつも、『先輩』って言っちゃう。……今日も、言った。」
「……知ってる。うちの帳面には、先輩の欄が、とっくに、ある。」
「あるんだ!?……そっかぁ。……変かな。ゲームの中で、先輩って。」
「変じゃない。」帳面を閉じて、答えた。帳面を閉じるのは、記録より聞くほうが先の合図である。合図の存在は、誰にも教えていない。「上司より近くて、友より一歩だけ遠い。遠い一歩の分だけ、敬意が入ってる。……良い通貨だと思う。」
「通貨なんだ。」ミーナは笑って、白湯を飲んだ。「じゃあ私、けっこう貯めてるかも。」
貯めている、と思う。両替の利かない種類のを。両替が利かないから、目減りも、しない。
『私事の欄。現実の欄は、いつも書くことが少ない。少ないのに、頁の重さは変わらない。紙は、不思議である。以上。』




