ステラの帳面・その十七 現実の口座
――ヴァリエスタ 組合5F クランハウス
『換金、800万円。ゲーム内通貨から、現実の口座へ。数字が大きいほど、帳面は静かになる。静かな数字の周りで、人間だけが、騒がしい。本日の記載は、その騒がしさのほうである。』
『特記の欄。分配会議、抜粋。カイン、山分けを宣言した後、悠仁の袋に金貨を投げ込んだ。正当な報酬、だそうである。投げ込みの動作、無造作。金額、無造作ではない数字。無造作の演技に金を使う男である。ミーナ「貯金します」(即答・0.2秒)。即答の速さは、日頃の検討の長さである。アリス「私は……教会に寄付を——ゲーム内の教会でした、すみません」。悠仁、幹事の顔で分配表を作り始める。会議の結論より先に、表ができた。あの人は、表を作ると落ち着く。私にはよく分かる。分かってしまうことは、書かない。書いた。書いた行に線を引こうとして、やめた。上から読めるようにするのが、うちの訂正の作法である。読めてしまうなら、引く意味が、ない。』
『フルール「私の分は、皆さんで……」に全員が被せ気味で「駄目」。五人の声が揃った速さ、今旅最速。連携の完成度は、戦闘より分配で測れる。測れてしまったことを、戦闘の欄には、内緒にしておく。』
『私事の欄。800万。私の帳面に載らない通貨で、私の知らない口座へ。……それでも全員の顔が同じ卓にあるなら、勘定は合っている。以上。』




