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福引き②

(ま、こういうのは期待しすぎると…。)


ガラガラガラガラと長々しく音を出しながら抽選器を回転させる。コロンコロンと球を出す姿はさながら糞をしているウサギのようだった。青、青、緑、黄と球が出てくる。引き換えアイテムがどのくらい世界にあるか分からないがHOPEの人口はすさまじい、かなりの回数回せるようになっているだろう。その中で当たりを引くなど相当な幸運だ。


次々とあまり等級の高くない球が出てきて、ついに最後の1回になった。


(こういう福引きって昔から運がないっていうか…なんていうか…)


悠仁は過去を思い出しながら苦笑する。今までこうした福引きなどの運が絡むものは悉く弱かった。ただの偶然であることは分かっているのだが、それも続くと心に来るものがある。自分の運を笑いながら目を閉じるとふわっと風が吹く。


(ん?)


どこかで嗅いだことのある匂いだった。風上を見るとそこにはアリスがいた。ただ、悠仁の鼻を刺激したのはその香りではなく。


(フェリス?)


転職試験の時に首に巻き付いていたフェリス。その香りだった。


コロン。


最後の球が排出される。音がしたのでそちらに目を移すとそこにあったのは銀色に輝く球だった。


「…は?」


それを豆をつまむように取り上げて照明にかざす。白ではない確実な銀。先ほどの表を思い出す。銀色の等級は…。


「2等…。」


「え!?」


その声が聞こえたミーナは自分の抽選も放って悠仁の元に駆け寄る。ミーナは悠仁の持っている球を見て口をあんぐり開けている。


「…先輩今日死ぬんじゃないですか…?」


「…失礼だな。…だがそれの否定はしきれない。」


あまりこういう物を衆目に晒していると盗難の危険もあるので悠仁は素早く収納にしまいこんですぐに受付に向かう。


「あの、引き換えをしたいのですが…。」


「はいそれではプレイヤーカードと、抽選器から出てきた球をいただけますか?」


悠仁は収納からプレイヤーカードと15個程度の球を取り出して受付に並べる。


「えーっと…。まぁ!2等ですね!おめでとうございます!」


受付嬢の声が聖堂のロビーに響き渡る。悠仁は良く通る声というのにも欠点があることを初めて知った。


「ではこの箱から更にくじをお引きください。」


受付嬢は受付の下から手を入れることのできる箱を取り出した。コンビニエンスストア等でもよく見る箱なのだが、抽選器よりも更に原始的になっている。HOPEは何を目指しているのだろうか。そんなことを思いながら悠仁は箱の中に手を入れる。中には紙が入っているようで手にその感触が伝わってくる。いくら悩もうが結果は同じだと思い悠仁は手の甲にぶつかった紙を掴み、手を引き抜く。


「…弱見の水晶…?」


引き抜いた紙にはそんな言葉が書いてあった。初めて聞く名前だった。


「弱見の水晶ですね。……よいしょっと…。はい、これになります。」


受付嬢は再度受付の下から箱を取り出した。大きさはエンゲージリングが入っている箱よりも一回り大きいくらいの物だが、木製で随分と古めかしい。箱を開けると中には内部で赤い渦が漂っている拳大の水晶があった。どうみてもタダの水晶ではない。


「…これは。」


「これは弱見の水晶と言います。相手の弱点を視覚化できるようになるアイテムです。等級によって見ることのできるモンスターのレベルも変動し、高レベルのモンスターだったりエリアボスレベルになると等級が3や2、あるいは1の物でしか確認することができません。」


(なるほど、そんなものがあるのか。)


「それで、これの等級は?」


「2です。」


「は?」


「??2です。」


「あ、いえ、聞こえなかったわけでなく…。」


等級が2。どんなアイテムであっても等級が2というのは最高級のアイテムである。先ほどの話にあったようにこのアイテムで等級が2ということはボスクラスの相手でも使用に問題がないということである。


「それならなによりです。では、こちらが他の球でのアイテムです、ご確認ください。」


消費アイテムや素材アイテムなどがいくつも入れられた箱を目の前に出される。ほぼほぼ見たことのないものだった。


「これはなんですか?」


「それは胡椒です。」


「え?」


「???胡椒です。」


「あ、いえ…ってこれさっきもやりましたね。」


どうやら本当に何でも当たるらしい。ちなみにこの胡椒の等級は5だという。かなり高い等級だったようだ。料理の質も上がるようだが、こんなに良いものだとなかなか使えないかもしれない。どうしたものかと思って悠仁はそれらを収納にしまい込んで振り向くとわなわなと口を震わせているアリスがいた。


「アリス、どうかしたのか…?……!?!?」


そのアリスが持つブロンドの髪が保護色になっていて気が付かなかったが、その手には見間違えることのないほどに輝いている球が握られていた。


「ゆゆゆゆゆゆ、悠仁さん…どうしましょう……。」


今自身の手に持っている物をどうすればいいか分からないという表情だ。排出されてすぐに悠仁の場所に来たらしく他のメンバーはまだ気が付いていなかった。悠仁も気が動転しそうになったが、焦っているアリスの前で取り乱しても仕方がないので落ち着いて深呼吸をしてアリスに向かい合う。


「落ち着け、抽選は全部終わらせたのか?」


「い、いえ…3回目でこれが出てしまったので…。」


「なるほど、あと何回残っているんだ?」


「後22回です…。」


どうやらアリスは悠仁よりも遥かに多い交換アイテムを所持していたようだ。抽選器に戻って続きを行う様に促すとアリスは素直に机へと戻り抽選を再開した。他のメンバーは何が起きたのかと戸惑っていたが、なんでもないという様に手をひらひらと振る。


悠仁が遠目からみているとアリスは「あっ」とか「えっ」やら言葉を発しており見ていて飽きない。しばらくすると他の3人が抽選を終えて悠仁の元へやってくる。


「だめねー、どんな確率か知らないけどHOPEで行われる抽選を当てろって方が無理な話よね。」


そう言ってミーナは手を広げる。そこには色とりどりの球が並んでいたが、一番比率の大きかったのはやはり白色の球だった。冒険者の母数を考えれば妥当なところだろう。それでも赤い球などがあるのは運がいいのか悪いのか。


「そうですね。私も似たような結果でしたね。赤が3つあるだけマシなのかな?」


フルールも手を広げる。その手にはミーナと同じような配色の球が並んでいた。


「……じゃあ、私、当たりなのかな。」


そういってステラが手を広げるとそこには銅色に輝く球が握られていた。


「まぁ!ステラ、あなたすごいじゃない。3等なんて滅多に出ないでしょう。」


それを見たフルールが手を叩いて驚く。その手には球が残っていたので数個落ちてしまい慌てて拾いに行く姿が面白かった。そのまましばらく待っていると何故か涙目になったアリスが合流していた。


「アリス?どうしたの?」


普段と違う様子に違和感を覚えたミーナがアリスに声をかける。するとアリスはとんでもないことをしてしまったと言わんばかりに涙目になって震える右手を口元へ持って行きながら左手を広げる。そこには驚くべきものが並んでいた。


「き、金が…。」


「2つ…。」


既に金の球の存在を知っていた悠仁も言葉を詰まらせてしまった。ミーナもこれには唖然としている。


「しかも銀もあって銅もありますね…。」


「Aliceさん…。」


「どどどどどど、どうしましょう…。」


アリスは特に不正な手段を使ったわけではない。むしろHOPEの世界で不正な手段を使えという方が難しい。全てがシステムに管理されているこの場所では冒険者による不正行為は常に監視されている。


「違反行為をしたわけじゃないし、そのまま持っていけばいいんじゃないか…?」


さすがの悠仁もこれくらいしか助言ができない。


「ちょ、ちょっと怖いので悠仁さんもついてきてもらっていいですか…?」


「それは構わないが…。」


ひとまず5人は受付へ向かう。合流した順番、ミーナ、フルール、ステラの順番で景品と交換する。


「3等ですね!おめでとうございます!今日はすごい運を持った人が多いですね!」


どうやらステラの球を見ての発言だった。相変わらずの透き通る声はロビー中に響き渡って少ないが冒険者の視線を釘付けにする。ステラも少し恥ずかしそうだった。


「ではこの箱から更にくじをお引きください。」


悠仁の時と同じように受付の下から箱を取り出した。ステラがその中から紙を取り出す。


「……これって……!」


ステラが驚きの声を上げる。


「まぁ!おめでとうございます!アルケミストである冒険者様にはぴったりの景品ですね!」


そういって受付嬢は木でできた直方体の箱を取り出す。ステラがそれを開けると中には白く、長いものが入っていた。所々傷がついており、年季を伺わせる。


「ではこちらが景品であるフロストサラマンダーの尾棘です。どうか大切にお使いください。」


またもや悠仁の聞いたことのない名前が出てきた。どうやら3年近く活動をしているが知らないことの方が多いようだ。


「ステラ、それって?」


フルールがステラにそのアイテムの詳細を聞く。


「これ、フロストサラマンダーの尾棘っていって——高品質な、魔力筆。スクロールを描くのはもちろん、この硬度なら、魔石に刻印もできる。……買うと高いし、こんなものを手に入れるのは、まだ先のことだと思ってたのに……。」


世界と道具の話になった途端、ステラの言葉から「……」が減っていく。ステラは嬉しそうにそれを抱きしめた。相当嬉しかったようだ。こういった抽選では目当ての物が出ることはなかなかない。ステラもなかなかの幸運の持ち主だ。それを見ている受付嬢もなんだか嬉しそうだった。そしてステラの順番が終わったことで問題の順番がやってくる。


道具を抱きしめる仕草は、年相応というより子どもみたいで、誰も指摘しなかったが全員の口元が緩んでいた。当たりの景品より、この顔が見られたことのほうが得だった気がする。

フロストサラマンダーの尾棘 (アイテム)

フロストサラマンダーの尻尾に生えている棘。2本しか生えていないそれはスタンガンでの電気のようにマナを2本の棘で放出して魔力回路を作り出し、短時間で高度な魔法を作り出せるようになっている。フロストサラマンダーの討伐難度は高めである上に個体数も多くない為あまり市場に出回らないものであり、装備品の材料としても使用されることがある。中に細い空洞がありその構造的特性を用いて筆に使うこともでき、これによって書かれた文字には魔力が帯びる。

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