転職試験(ウィザード)③
悠仁は動くようになった両足に力を込めて走り出す。せめて物理攻撃だけは避けようとしたためだ。20m程の距離では尾による攻撃が予想されたため、戦闘開始時よりも多く距離を取る。
「はぁ…はぁ…くっ…」
抉られた右足と左脇腹から激痛が伝わってくる。これ以上の戦闘はつらいという体からの信号だ。しかしそれをまともに受け取ることはできない。悠仁はヒーリングポーションを飲み干した後に傷口へかける。それにより出血は止まったものの、組織の損傷は完全に治ることはなかったようで疼痛は収まらない。一歩踏み出すたびに右足が地面を蹴り返してくる痛みを脳が直に拾う。
(どうする…どうする…。)
悠仁は自分に言い聞かせる。周囲の状況把握にダークスプライツを使用したが、あまり効果がないことがわかった。もし悠仁に人間の限界を超える程の反射神経があったら話は別だったのだが、そういうわけにもいかない。
(当てる側じゃなくて当てられる側になると、途端に意味を成さなくなる…。)
ここまでの戦闘で分かったことは少ない。デーモンに限定的ではあるが高い魔法防御力があるということ、上空からの攻撃ができるということ、魔法の使用を行ってくるということだ。正直なところ、この程度の情報ではまともに戦闘などできない。特に悠仁のようなローブ職は接近戦に持ち込まれると脆いため、自身から仕掛けることもできない。並べた手札を頭の中で広げる。攻撃魔法はあらかた撃ち尽くした。残った札はどれも決め手にはなりきらない。器用貧乏――こういう局面でこそ、その言葉が喉の奥に苦く沁みる。
(こうなると、取れる選択肢は…。)
もう悠仁の手元には2枚程しかカードは残されていない。しかもそれはかなりの危険を伴う物だ、できれば使いたくはない。だが、と悠仁は考える。これがもしイザベラとの戦闘の時のような緊急事態だったら、横に誰かが倒れていたのなら、と。実際にはここには悠仁しかいない。だがそのような状態がやってこないとも限らない、その時に自分は行動できるのか。それを自問自答する。
(決断は慎重に、だが早く…。)
慎重すぎる決断は行動全部を鈍らせる。残されている選択肢が少ないのであれば、早くそれを選ぶしかないのだ。これから来るであろう苦労に薄ら笑いを浮かべながら悠仁は行動に移す。
「ふぅ……。」
ぐぐぐっと杖を握りしめる。ここまで来て若干覚悟が決まっていない自分が恥ずかしくなってくるが、それも少しは許してほしいと天に言い訳をする。ゆっくりと息を吐いて切りたくないカードを切った。
「彼の敵を打ち倒す力を 我が命を糧に この手に掴む」
3度目の使用。次に使うのはもっと先だと思っていた、否、思っていたかった。呼び水のように頭の奥から詠唱文が滲み出てくる。炎よ、水よ、と精霊に呼びかけるあの感触はない。代わりに、何かが舌なめずりをしながらこちらを覗き込んでいる。腹の底でそれがゆっくりと身を起こした。
「あぁ…馨しい恐怖の香 怯えに震える命の甘さよ 愛しい名を呼ぶ声さえ啜り 築き上げた日々を一匙ずつ舌に乗せ 骨の髄まで饕餮し あぁ…馥郁たる終焉を」
一節吐き出すごとに舌の上へ味が広がっていく。蜜のような、肉のような。誰一人倒れていないこの試験場で、それでも自身の削れていく命さえ甘く感じられて、悠仁は本気で吐き気を催した。痛みじゃない。気持ちがいい。それがたまらなく怖い。喰っているのか、喰われているのか――その境目が一節ごとに溶けていく。
「Delivora」
静かにそれを呟くと、先ほど閉じたばかりの傷口から再度出血が始まる、まるで今攻撃を受けたかのような出血量なのだが、既に足の感覚は鈍化しており流れる血液を感じることはできない。
「ぐぅぅううう……!」
激痛に対して反射的に叫び声を上げそうになる体を、唇を噛みしめることで必死に抑える。
視界が赤い。確認することはできないが、恐らく右目から血涙を流しているだろう。全身の筋肉をゆっくりと鋸で切断しているような痛みに襲われている体はびくんびくんと痙攣をしているが、それでも叫び声を上げない。犬歯が唇を裂き、口の中には血の味が広がり、唾液と一緒に地面へと流れている。杖を持ち上げるのも億劫になるのだが、それでも唱えなければこの痛みが無意味になることは分かっていたので、相手からは何事も無いように見えるよう詠唱を行う。代償を払った分は必ず取り返す。それだけがこの苦痛を意味あるものにする唯一の道だった。
「律せよ其の心 朱く染まる騒擾の中でも 常に蒼く響け」
本当は初めて使うのはカインにして驚かせたかったのだが、まさか自分に使う羽目になると思わなかった。しかもデリヴォラで過剰に強化したものを。
「コンセントレーション」
魔法を発動した瞬間、後頭部を金槌で殴られたかのような錯覚が悠仁を襲う。しかし頭部を襲う激痛と吐き気は錯覚ではない。脳細胞がバチバチと音を立てて破壊されていくようだった。目の前がチカチカする。そしていつまでたっても攻撃を仕掛けてこない悠仁に痺れを切らしたのか、デーモンが魔法を発動してくる。
デーモンが口を動かして何かを詠唱した後、目の前の空気が歪んだのが見える。ゆっくりとそれは、刃の形になり始める。
(なるほど、こんな効果なのか…。)
不思議と、痛みも遠のいているように感じる。
コンセントレーション。その名の通り精神の集中を促し、感覚を鋭敏化させる魔法で、比較的最近作られたものだ。特に思考速度と反応速度を劇的に上昇させる。効果が切れたときデバフがかかるが、それを補って余るほどの効果を得られる。そして今回はそれをデリヴォラで強化したものを自分に使用した。悠仁には空気が圧縮され刃の形になる瞬間までがはっきりと視認できるほどに、脳の処理速度が上がっている。世界が、蜜の中を進むようにゆっくりと流れ始めた。
「炎よ…」
悠仁はすぐさまそれに対応するために、短い詠唱を完了させて杖を振る。
「ファイヤーボール!」
これから発動するであろう魔法に向けてファイヤーボールを放つ、今の悠仁には空気の刃が視認できているため、それに魔法を当てることすら可能になっている。反応速度が上昇しているため、傍から見ると悠仁が急に虚空に向かって魔法を発動したように見えるだろう。
パァァァアン!!
ファイヤーボールはその刃にぶつかり、発動前に消滅させる。急な出来事にデーモンは組んでいた腕を解いた。この時点で悠仁の脅威度を上げたのだろう。もうこうなってしまっては今後の油断はありえない。つまり悠仁はここで勝負を決める必要がある。盤面はひっくり返った。だが、ひっくり返したのは命と引き換えだ。長くは保たない。
悠仁もそれがわかっているため、痙攣をしている右腕を何とか動かしてマナポーションを口に運ぶ、連続したマナポーションの使用によりただでさえ催していた吐き気が更に強くなり、地面に吐瀉物をまき散らしてしまう。アリスは弱音も吐かずにポーション酔いを我慢していたのに、自身の様子を見て嘲笑がでる。
(でもまぁ、限界に挑戦するならこれくらい…)
これから待ち受ける限界に立ち向かうには、これくらいの苦痛はあって当然なのかもしれない。多かれ少なかれ他の冒険者も同じような気持ちを抱いたことがあるだろう。悠仁は杖を握って詠唱を開始する。残された時間は少ないのだ。コンセントレーションの効きがいつまで続くか分からない。この一瞬の冴えのうちに畳みかける。
「顕現せよ我が炎 峻烈なるその揺らぎで包み込み 焼き尽くせ」
詠唱を終えると悠仁は走り出す。時間が細分化されているようでゆっくりに感じた。視界がぼやけて相手のことが正確に視認できない為、接近するしかない苦肉の策だ。辛うじて姿がくっきり見える場所まで接近する、その距離15m、デーモンの物理攻撃範囲内だ。後衛が一番踏み込んではいけない間合い。それでも当てなければ意味がない。そこで先ほど詠唱を完了させていた魔法を発動する。
「フレアトルネード!」
次の瞬間、デーモンの体が炎の渦に包まれる。前に使用した時には少し大きめのつむじ風程度だったのだが、今回はさながら竜巻である。数m上空まで立ち上る炎はデーモンの体を完全に覆いつくして視界を遮る。熱気が頬を灼き、髪が炙られる匂いがした。その時、悠仁の右に違和感を感じる。
(これは…尾か!)
ダークスプライツの効果で視界外の攻撃も感知できるようになっている悠仁は、右からの尾による攻撃を事前に察知できた。本来であれば気が付いたところでその攻撃を受ける覚悟を決めるくらいしかすることはないのだが、今回は違う。スローモーションに見える程の集中力、この速度なら対応できそうだと思える。おかげで先ほどから頭が割れそうな程の激痛が悠仁を襲っているのだが。布石と冴え、二つの札がここで噛み合った。
(へぇ…こんな風になってるのか…。)
デーモンの尾は蛇腹構造になっているようで伸縮性に富んでいた。見た目は4m程しかないのに、この距離まで届くのはそういう機構があったからだろう。それすらも見ることができる悠仁は、その尾に足をかけて乗り越える。この状態が後何秒続くか分からない。悠仁はすぐに次の魔法の詠唱に移る。
「水よ 槍持たぬ我の槍となり 我らの敵を討て」
フレアトルネードが解けるその瞬間を狙って発動できるように詠唱を終わらせる。デリヴォラの効果で全ての魔法にかかる魔力量が膨大に増えているため、悠仁は魔法発動の前にマナポーションを一気飲みする。視界がぐわんぐわん揺れて立っているのも困難になっているが、意地で立ち続ける。膝が笑う。それでも倒れるなら撃ってからだ。
「アイススピア!」
悠仁が詠唱を完了させると、上空にはデーモンと同じように20本程の氷の槍が出現する。先刻向こうが見せつけた物量を今度はこちらが返す番だった。段々と火の勢いが弱くなっていくのを確認し、悠仁はそれを射出する。視界が晴れたと思ったら急に目の前に現れた氷の槍に反応できなかったデーモンは、身を捩り回避に専念するが、全てを避けることはできない。
ドドドドドド!!
氷の槍は鈍い音を立てながらデーモンの体を貫く、特に翼膜を破ったことにより飛行能力も失わせることに成功した。これ以上ない状況だ。これを逃せばもう勝利はない。地面がないように感じるくらい平衡感覚がくるってきている。時間の流れも速くなっており、コンセントレーションが切れかかっているのがわかる。蜜の中の世界が、また元の速さへ戻っていく。つまり次が最後だ。悠仁はありったけの魔力を杖に注ぎ込んで詠唱を始める。
「炎よ その權勢留まることを知らず 沸き立つ喊聲のように燃え盛れ」
一語一語に魔力を込める。マナだけでなく生命力までもが引き抜かれていく感覚がする。体が冷たい、これ以上の使用は死に繋がると本能が訴えかけてくる。だからこそここで終わりにするのだ。最後の札をここで切る。飛び上がることができなくなったデーモンを視界内に収めて魔法を発動する。
「インシニレイト!」
その瞬間、超常現象のようにデーモンの体が燃え上がる。設置型魔法であるインシニレイトは、動きを止めている相手であれば絶大な効果を発揮する。座標の指定さえ間違えなければ内部から発火させることも可能だ。ボンッ!ボンッ!と音を立ててデーモンの体が破裂する。いかに魔法防御力が高くとも、所詮はソロで狩ることを想定されたモンスター。増幅された効果と悠仁の持てる魔力を全て注ぎ込んだその攻撃は、簡単に防げるものではない。
「どうなった…。」
意識と視界が朦朧としていて状況が上手くつかめない。カメラのオートフォーカスのように、視界がくっきりしたりぼやけたりしている。辛うじて見えたのは、左腕と腹部の右半分が吹き飛び、壊れた蛇口のように血を噴き出しているデーモンの姿だった。攻撃は通った。しかしそれよりも気にしなくてはいけない点があった。
(嘘だろ…あれでまだ歩けるのか…。)
そう、悠仁が致命傷を与えたにもかかわらず、デーモンはこちらに手を伸ばしながらゆっくりと歩いてきているのだ。ふらふらしているのでかなりのダメージであることに変わりはないのだが、悠仁はもうコンセントレーションの効果も切れ、デリヴォラの効果も切れている。全身は激痛に襲われ、右目の視力はほぼなくなっているに等しい。度重なる出血により体温は維持するのが困難になっている。歩行はおろか、立っているのも歯を食いしばっておかなければ厳しい。切れる札はもう一枚も残っていなかった。
(くそっ…もうこれ以上は…)
一歩、また一歩と近づいてくるデーモン。その爪の長い手が悠仁の眼前に来る。匂いすらも感じそうな距離に来て、悠仁は諦めたように目を閉じる。
(これまでか…。)
これから来るであろう衝撃に耐えるために、歯を食いしばる。
「…………?」
しかし1秒、2秒と待ってもそれはやってこなかった。悠仁が恐る恐る目を開けると、悠仁の前で停止したデーモンがすれ違う様に倒れ込んでくるのが見えた。ドスンッと音を立てて倒れたデーモンは、その後動く気配はなかった。
(勝った…のか?)
実感はすぐには湧かなかった。ただ、張り詰めていた糸がぷつりと切れたように全身の痛みが一斉に押し寄せてくる。あまりの激痛に動けずにいると、ゆっくりと近づいて来る足音が聞こえた。
「うむ、とてもウィザードの戦い方には見えなかったな。ほっほっほ。」
笑いながら、聞き覚えのある声が近づいてきた。
「最後に立っていたのはお主だったようじゃのう。途中もう駄目かと思ったわい。」
ウィンストンは満身創痍の悠仁を見ながら髭を撫で、興味深そうに眺めている。その目はただ笑っているだけではなかった。倒れたデーモンと立ち尽くす悠仁を交互に検めるように、幾度も視線を往復させている。
「その精神力には感服したのう。見たことも聞いたこともない魔法が使用された時には、驚いたわい。それでも勝利したのはお主じゃ、いくらボロボロでもな。そしてこの試験の合格条件は、全てのモンスターを倒すということだった。手段は問うてなかった。つまり…。」
ウィンストンは、話をすることができない悠仁に対して一方的に話を進める。
「冒険者Yuji。お主をウィザードの資格ありと認めよう。この場所から帰ったその瞬間からお主はウィザードとして活動することが認められ、スキルの習得ができるようになり、ステータスもウィザードの補正がかかる。尚、ステータスはある程度現職から引き継がれるが、レベルは1に戻るので無理な活動は死を招くので心得ておくように。」
定型文と思わしき言葉をウィンストンが述べた後、更に言葉が続いた。
「お主の持っている魔法はまだ少ない。ウィザードとは、叡智を求める者。魔法というものを理解し、使役し、一体化しなくてはならない。これから先はもっと多彩な戦術と、多彩な魔法と判断が必要になる場面が必ずやってくるだろう。ウィザードに許された特権もある。それらを上手く使い、魔法職全体に尊敬の眼差しで見られるようなウィザードになってほしい。」
「は、はい…。」
辛うじて返事をするが、悠仁は今にも倒れ込みそうだ。
「お主は前衛職の方が向いていたのかもしれんのう…。ちょっと待っとれ。」
未だに動けずにいる悠仁を見かねて、ウィンストンは机から1つの小瓶を取り出してくる。それをもって悠仁の下へ近づき振りかける。するとどうだろう、傷は癒えていないが痛みはかなり軽くなったではないか。
「おぉ…これは…?」
「これはのう、デッドスカルスコーピオンというモンスターの毒を利用して作ったものじゃ。その毒は全身を麻痺させる効果があるのだが、上手く効能を調整して鎮痛薬の効果を強めたのじゃ。ヒーリングポーションのように傷を癒す力はないが、痛みを抑えて一時的な行動を可能にしたものじゃ。中毒性があるから公にはしておらんがのう。良いものを見せてもらった礼じゃ、レシピを教えてやろう。お主の方が使いそうだしのう。」
そういって、ウィンストンは羊皮紙に素早くレシピをしたためて、悠仁に手渡した。
「ありがとうございます。」
「うむ、ポッドを通れば試験中の怪我に関してはある程度治るが、体が痛むようじゃったら治療を受けるといい。」
ウィンストンは、そういいながらポッドを指差す。悠仁はもらったレシピを収納にしまい込み、ポッドへ入り込んだ。
「…お主の戦い方は、死を厭わぬ様子が見える。自分の命を大切にするのじゃ…。自分の命よりも仲間の命が重いと考えているのかもしれんが、そういった場合、仲間も同じようなことを考えていることがあるからのう。お主の命を自分の命よりも重いと思っている仲間が、のう。自分を大切にすることは、仲間の命を救うことにも繋がるのじゃ。それを肝に銘じておいてほしい。」
ウィンストンは、ポッドに入り込んだ悠仁に悲しそうな顔をしながら伝えてくる。あの命を糧にする魔法を、この老翁は確かに見ていた。だからこその忠言なのかもしれない。
「わかりました。善処します。」
「そうしてくれ。ではの。」
疲れているであろう悠仁の代わりに、ウィンストンがポッドの蓋を閉じた。
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――リアッツォ 大聖堂
悠仁が目を開けると、そこは見慣れた天井だった。ざわざわと騒がしい声が聞こえて、少し埃っぽい匂いが鼻腔を刺激する。両目を開けて視界に問題がないことを確認した後、体を起こしてポッドの外に出る。試験場であれほど霞んでいた右目も今はちゃんと天井を映している。体を動かすが、特に問題はないようだった。
ロビーの方を見ると、既に試験を終えたメンバーがベンチに座っていた。皆合格したようで表情は明るい。そんな姿を遠目で見ていると、アリスが悠仁の姿に気が付いて駆け寄ってくる。
「おかえりなさい、悠仁さん、フェリス。どうでしたか?」
「あぁ、なんとかな。フェリスにも助けてもらったような気がするよ。」
悠仁は首に巻き付いていたフェリスをトントンと叩き起こす。戦闘に参加していなかったはずなのだが、かなり疲れた様子のフェリスは移動しようとしなかったので、仕方なく悠仁がフェリスの体をもってアリスに返す。
「あらら、ずっと首にいたから疲れちゃったのかな?」
「結構激しい戦闘だったからな。疲れさせちゃったのかもしれない。すまなかったな。」
悠仁は、フェリスの頭部をゆっくりと撫でた。
「それはともかく!皆さんが全員合格したんです!これは快挙ですよ快挙!上級職へ転職は簡単なものではありません!それをメンバー全員が達成するなんて!これはお祝いです!」
常にロビーでみんなの試験結果を待っていたアリスも、それはそれで緊張したのだろう。自分のことのように嬉しがっている。
「そうだな、ここはうるさいし、少し離れた場所で祝賀会でもしようか。」
「そうしましょうそうしましょう!では皆さんに結果を伝えて呼んできますね!」
そういって、アリスは走り出す。
「あぁおいっ……こっちに連れてきても、店は聖堂の外なんだから…。」
舞い上がってそれすらも気が付いていなかったのだろう。そんなアリスの様子を見ながら、悠仁は少し嬉しそうに息を吐いて小さく呟いた。腹の底でまだ微かに疼いている"何か"には、気付かないふりをして。
「あぁ、疲れた…。」




