ステータス確認④
悠仁はもう一枚ある書類を開く。
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名前:フェリス
職業:幸運の運び手
体力:777
魔力:1211
STR:23
DEF:34
DEX:68
AGI:159
MGC:213
スキル
もふもふ尻尾 甘い星屑
跳ねる 七色の花弁
???
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「……なるほど。」
悠仁は合点がいった。思えばアリスはポッドへ入る時にフェリスを肩から下ろすのを忘れていた。一緒にポッドに入ってしまったことでステータスの確認が行われてしまったのだ。
「そういえば私、フェリス連れたままでした……。」
アリスはフェリスの頭を撫でながら思い出す。
「……でも、モンスターの詳細なステータスって、滅多に見られないから。……これ、結構、貴重。スキルも、見たことないものばかり。……この、はてなって、何なんだろう。」
ステラはフェリスのスキルに興味津々だった。星をあしらった魔女帽子の鍔の下、いつもは眠たげな目がこの時ばかりは輝いている。確かに見たこと無いスキルばかりだ。特に「もふもふ尻尾」なんていうのは人間には無理だろう。
「ねぇフェリス?もふもふ尻尾っていうのやってくれない?」
アリスはフェリスのおやつであるストリダの実を与えながらお願いをすると「しかたねぇな……」と言わんばかりにそれを口に入れながら尻尾を差し出してくる。その尻尾は淡く光っており、そこからはマナが漏れているように見えた。
「わぁ……♪いつもよりもふもふしてますぅ……」
アリスがうっとりしながらフェリスの尻尾を撫でる。確かにいつもより毛並みがよさそうに見える。
「そんなスキルがあるんだな……確かに職業に偽り無しかもしれないが……。」
職業は幸運の運び手、アリスは今幸運を感じているのだろう。それを見るフルールは少し羨ましげだった。
「……さて、恍惚としているアリスは少し置いておくとして、これからについて話そう。」
悠仁が話の流れを変えると皆が少し表情を引き締めて悠仁に視線を向ける。アリスも視線を向けているが少しだらしが無い顔をしている。それを見て悠仁は噴き出しそうになるが、我慢をして続ける。
「こ、これでステータス確認書は発行してもらったから後で届けよう。それと宿を探す必要があるな。今日はここに泊まりになりそうだ。できればもう少し違う形で来たかったが仕方ない。それと……」
悠仁は少し声を低くして続ける。
「もうゲームにずっとログインをしている状態だ。そろそろ一度ログアウトをしないと健康上の被害が出かねない。それともう一つ。勘違いなら良かったんだが……」
悠仁はこの階層に来る前に見たものについて共有する。
「実はこの階層に来る前に何かに襲われただろ?意識を失う前にそいつらの着ているものが見えたんだが、紫色のローブを着ていた……。」
記憶を浚うと、耳の方にも残っているものがあった。落ちる寸前に短く言い交わしていた、複数の声。低いのと、高いのと、掠れたの。姿を全部見たわけではないが、声だけ数えても最低3人はいた。
「おいおい、洒落になんねぇぞ。そもそもこのダンジョンには入って来られないように制限がかかっているはずだろ?」
カインが訝しげに発言する。確かにこのダンジョンはウェイルの権限によって立ち入りが制限されているため、システム的に誰も立ち入れないはずである。
「つまり……、誰も入ったことの無い場所なのに、先回りしてたってこと?」
ミーナが仮説を立てる。突拍子も無いような意見に見えるが、現実的にはそれが一番可能性としてありえるのが困る。
「どんな手段を使ったかはわからないがその可能性が高い。各地に飛ばされるなんてダンジョンは前代未聞のはずなのに先回りできるってどんなことをしたんだか……。」
「……もしかして、岩戸に入る前の攻撃も……?」
ステラが思い出す。確かに岩戸に入る前には原因不明の攻撃が何回も行われており、結局それを回避するために岩戸へ進入したのだった。
「確かにおかしいと思ったんです……。」
アリスも何か思うことがあるようで、顔はまだ引き締まりきってないが発言を進める。
「あの攻撃はなんか……、あそこに誘導しているような感じがして……。」
「……思い出してみると確かに……。」
フルールも覚えがあるようだ。攻撃は止んだり止まなかったりしていたが、あれだけ数を撃ってくるのに誰に命中することも無かった。とある方向へ走っているときには攻撃が止んだりしていたことから誘導されていたと思っても不思議ではない。
「何が目的でどこまで介入してくるのか、わかったもんじゃないな……。」
仲間が死ぬという最悪の実害が出ていない以上、まだ許せるがこれがどんどんエスカレートして行くのは困る。
「それにしても何であの岩戸に誘導されたんですかね。」
アリスが首を傾げながら質問する。首をかしげたことによって尻尾に頬が埋まり、まただらしない顔をしているが見なかったことにしておく。
「あぁ、それなんだが……。」
こういった話題に関して珍しくカインが発言をし始める。
「多分、あの巨木を倒させたかったんだと思うんだよ。」
「何のために?」
ミーナはその発言に質問をする。確かに何故あの巨木を倒す必要があったのか。マジックシャードの原料であるシュミッククリスタルは大量に手に入り、巨木の種も手に入ったが、それ以上のことは特に無かった、と皆が思っている。
「まぁあくまで仮説なんだけどな。まず俺とYujiが30レベルになってるって異常だと思わないか?だってAliceちゃんと会った時にはまだ10台の前半だったのにこの短期間で30レベル。史上最高速って言ってもいいくらいの速度だ。」
「なるほど……。」
そう言われてみると確かにそうだ。悠仁はカインの仮説の続きを待つ。
「んで、コアって言うかなんか核みたいなやつをYujiが壊しただろ?その時の光を浴びた時、なんか違和感を感じなかったか?」
「あー、思い出した。なんか感覚が鋭くなったっていうか、そんな感覚がしてたっけ。」
ミーナが思い出したように手を打つ。悠仁もそれを聞いて思い出した。マナの流れをいつもより敏感に感じられるようになった気がしていたのだ。
「もちろんしばらくレベルなんて確認してなかったし、連戦に次ぐ連戦で多少レベルが上がっていてもおかしくはないんだけど、俺はあの光を浴びたことで大量の経験値を得られたって思ってるんだよ。」
「経験値か……。」
悠仁には何を目的にやっているかわからないが、確かに経験値という線は濃厚なように感じた。カインの言う通りレベルがこんなに早く上がるのは不自然だ。そんなにポンポンとレベルが上がるほどHOPEは甘くない。
「カインにしては頭使ってるじゃない。」
フルールがカインの頭を撫でる。
「や、やめろって。俺にも頭ぐらいあるっつーの。」
口ではそんなことを言っているが、耳がピクピクと動いているので、悪く思っていないことは周りの全員には筒抜けである。フルールもそれを見て満足そうに撫で続けている。
「カインの説が濃厚そうだな。結局原因っていうか動機はそいつらに聞いてみないと分からないけど……。レベルが上がるデメリットは思いつかないからいいが……。」
デメリットは無くとも、原因がわからないと不気味である。誰だって目の前に出てきて急に踊られたら恐怖を感じるだろう。
善意に見える介入ほど、値札が見えないから怖い。経験値という贈り物の請求書が、いつどんな形で回ってくるのか。悠仁には見当もつかず、それが一番の不気味さだった。
「ひとまず警戒は怠らないようにして行こう。一先ず情報の共有も終わったことだし宿屋を探そうか。」
一行は目の前に広がっている書類を丸めなおして収納に押し込み、立ち上がった。結局アリスの顔が元に戻ることはなかった。
もふもふ尻尾 (スキル)
一時的に自身の尻尾の毛並みを向上させるスキル。動物があまり得意ではない人もこの尻尾に触ったら虜になってしまうことは免れないだろう。顔の筋肉を緩ませて顔をだらしなくさせる特殊効果がある。隠しステータスLCKが向上する効果がある。




