ステラの帳面・その八 他人の数字
――宿
『本日、全員のステータスを写した。他人の数字を写す趣味は、ない。ないが、写した。全員分。理由、資料価値。配置は、見開きに三名ずつ。比較は、同じ見開きの中でだけ許す決まりとする。決まりは、いま作った。』
『特記の欄。ミーナ「見て見て、私の敏捷、Yujiより上!」。Yuji「そこは職業補正だろ」。ミーナ「補正込みで人生だよ?」。……補正込みで人生。今週いちばんの格言が、いちばん雑な文脈で出た。帳面は、文脈を選べない。選べないので、格言の欄も、ない。余白に書く。余白は、こういう時のために、ある。』
『カイン、防御297。写すのに、三度、見直した。写し間違いを疑う数字と、疑わない数字が、ある。297は、前者だった。本人「これはあれだ、数字っつうより、古傷の記録だな」。数字を情緒で読む男である。読めてしまうのが、悔しい。』
『フルールの頁、スキルの行が、多い。書き写していて、欄が足りなくなった。欄が足りない、という事態は、この帳面で初めてである。理由、不明。不明の欄に、線を一本引いておく。線は、埋まる日まで、引いたままにする。』
『自分の頁は、最後に、いちばん小さい字で写した。写す者と写される者が同じだと、検算が、利かない。検算の利かない頁は、小さく書くに限る。』
『私事の欄。数字は六人分。食卓の椀も、六人分。帳尻、合っている。以上。』




