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情報収集②

――聖堂の図書館


「おー、数値化はされてないけど、どれくらいの防御力かとか、他のモンスターとの比較とかあって分かりやすく描いてあるな……。」


「この本は当たりですね。それじゃあ、あのモンスターについては……。」


アリスがページをパラパラとめくって、該当の項目を探すと……。


「あ、これですね。えーっと……。」


アリスが、例の巨大モンスターについての項目を読み始める。


「『スカルオブバーミリオン』って言うらしいですね、あのモンスター。そもそもバーゴルドンは常に夕暮れ時らしいです。その夕暮れ空に浮かんでいる骸骨だから、ってこの名前なんですね。」


アリスはその後も読み進める。


「えと……、あっ、倒す方法についても書いてありますね。……でもこれ、かなりの力技ですね……。上空に向けて魔法を放ったり、天から落ちてくるような魔法を使ったり、場合によってはペガサスを使役して空中まで上がる、なんて方法も書かれていますが、どれも今の私たちには難しいですね……。」


「そりゃ無理だな……。体力も……、かなり高いって書いてあるし、これは少人数で討伐するモンスターじゃないだろう。」


「でも、基本的には攻撃してこないみたいですよ。こちらからちょっかいを出さなければ。ただ、あの口から流している液体は猛毒らしいです。あれに触れると、再生不可の身体損傷が起きるらしいです。」


「再生不可って……とんでもないな……。」


再生不可ということは、いかに高レベルの回復職が回復をしても戻らないということだ。つまり、失った手足は戻ってこない。


「素手で触れた場合のみ、みたいですね。高級な毒として使用もできるみたいです。加工にはかなり高度な知識が要求されるって書いてます。」


「あれを武器として使うってことか……。まぁ、使われたほうはたまったもんじゃないな……。」


確かに、上手に使えば恐ろしい威力を発揮するのかもしれない。脅威を上手にコントロールできれば、それは素晴らしい武器になる。それは、人類の争いの歴史からも読み取れる。


「ただまぁ、討伐難易度から考えると、あいつはボスじゃなさそうだな。」


「恐らくそうですね。森とか平原にいるモンスターが相手になるんでしょう。他には……。うわぁ……。」


アリスが嫌そうな声を上げる。


「どうした?」


「あの森の中、沼地になってるみたいで、中にリザードマンがいるらしいです。」


「リザードマンか……。」


悠仁たちの収納の材料にもなった生物だ。ここが生息地だとは知らなかったが。


「エリアボスはワイバーンですね。何回か討伐された記録も書いてあります。」


本には、採集できる薬草やモンスター、その他数々の情報が記載されていた。本は図書館の外に持ち出すことができないため、アリスと悠仁はそれを眺めて頭に叩き込んだ。


覚えるべきことを指で押さえ、目で二度なぞり、顔を上げて頭の中で言い直す。隣ではアリスが同じことをしていて、時折二人の指が同じ行で止まった。命を預ける知識は、こうやって身体に入れるしかない。


「……よし、こんなもんか。」


「そうですね。これだけ調べれば問題ないでしょう。」


アリスが本を閉じて立ち上がり、書架に仕舞おうとするが、届かないことを思い出して悠仁のほうをチラッと見る。


「あぁ、そうだったな。」


悠仁はアリスから本を受け取って、書架に仕舞った。


「ありがとうございます。」


「いや、これくらいなんでもないさ。」


「これからどうしますか?」


「そうだな……。」


かれこれ2日ほどHOPEに入りっぱなしだ。そろそろ戻って、現実世界のことをしなくちゃいけないだろう。


「一度休止してログアウトしたほうがいいな。もう今の時間帯だと、丸々2日はこっちに来てるからな。女の子だと、やらなくちゃいけないこととかもあるだろう。」


男の悠仁はシャワーなんて浴びなくても問題ないが、女の子だとそういうわけにはいかないだろう。いくらポッドの中の液体で綺麗になるといっても。


「そうですね。じゃあ、皆さんが戻ってきたら一旦解散して、明日再開しましょうか。」


「それがいい。空いてる時間は……。」


調べ物は早く終わったが、買い出しはもう少し時間が掛かりそうだった。


「新しい魔法の習得なんてどうですか?ここ、図書館なので魔法に関する文献もありますし。」


「……そうだな。こういった空いてる時間に覚えるのが一番効率がいい。」


「そうですそうです!よーし、私も何か新しい魔法覚えるぞー!」


テンションが上がったアリスが、右腕を上に突き出して楽しそうにはねているが。


「……こほんっ。」


司書と見られる女性に、咳払いをされてしまう。


「す、すみません……。」


「よし、じゃあさくっと調べよう。できれば試験まで受けられるといいな。」


丁度ここは聖堂だ。覚えたそばから試験が受けられる。

悠仁たちは、買い出し組が帰ってくるまでの間、魔法についての学習をした。アリスは1つ、悠仁は2つの新しい魔法の試験を受けて、どちらも合格し、習得したのだった。


試験を終えて聖堂を出る頃には、空いた時間がそのまま力に変わっていた。覚えたての魔法はまだ手に馴染む前の靴のようなものだが、履き慣らす場所ならこれから嫌というほどある。準備が整っていくこの感じが、悠仁は嫌いではなかった。

スカルオブバーミリオン(モンスター)

バーゴルドンの橙に染まる空を悠々と飛び続ける骨の怪物。頭部は人間、体は蛇の骨を使用しているように見える。体側には蜘蛛の足と見られる巨大な骨がびっしりと生えており、それを動かし、体をくねらせるようにして空を飛んでいる。口からは常に腐汁をあふれ出させており、猛毒である。触れるとモンスター、冒険者問わず再生不可の損傷を受ける。その不気味な外観からは想像がつかないが意外と穏やかな気性をしており、こちらから仕掛けなければ、運が悪くない限り襲われることは無い。討伐することは可能だが遥か上空にいるため困難を極める。


アイシクルアントラー(モンスター)

第2階層にて出会った鹿型のモンスター。角が氷でできており、地面に埋まっている時にはそれだけを出しているため、さながら氷の木である。地面で凍土を食み、外気で更に凍らせることで角を成長させる。角が大きければそれだけ魅力があるとされ、群れの長になれるとされている。そのため角を非常に大事にしていて、攻撃をされると激怒する。神経質になる割に、氷の角はかなりの強度を誇っており、攻撃に使用しても滅多に折れることは無い。上手く角を採集できれば有用な素材になるだろう。


リザードマン(モンスター)

沼地に生息している二足歩行の蜥蜴。レベル差はあるものの広域に生息しているため、割とどこでも見ることができるが、初心者が行ける範囲にいるのは大抵低レベルの集団で、リーダー不在の群れが多い。

地域にもよるが、知能が高い群れは鎧や武器を装備していることがある。大抵そういった群れは優秀なリーダーがおり、人間のような社会構造を構築している場合が多い。


ワイバーン(モンスター)

現在のバーゴルドンのエリアボス。ワイバーンはその機動性から定期的に生息する地域を変更する習性があるため、その動向は常に気を配っておく必要がある。以前にヴァリエスタ近郊で姿を確認されたことがあり大騒動になった。多種多様な攻撃方法を有しており非常に危険であるため、パーティーを複数編成し、レイドパーティーを作って挑むのが一般的である。その体の全てが優秀な装備やアイテムの素材になるため、ワイバーンを追っている冒険者もいるとか。

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