ステラの帳面・その六 祝いの相場
――リアッツォ 宿
『昨夜、Alice、カーディナル合格。祝いの夕食、二名で外食。当帳面の管轄外の支出につき、金額、不明。不明の欄は、不明のまま置く。埋めに行かないのが、管轄外というものの作法である。』
『特記の欄。朝食の席、報告会。報告者、Alice。聞き手、全員。以下、記録。「それでですね、その、お店がとても素敵で、それで、その……Yujiさんが……」。ここで報告、中断。中断、四拍。ミーナ「Yujiさんが、何!?」。Alice「な、なんでもないです! お料理が、おいしくて!」。ミーナ「絶対なんでもなくない!」。以降、追及と防御、四半刻。決着、つかず。中身の九割は、略、と記載する。略の行の余白は、通常より広く、空けておく。埋まる日が来た場合に備えての、引当である。』
『同じく特記。当のYuji、報告会の間、干し杏の種を皿の上で三回、並べ直していた。並べ直しは、手持ち無沙汰の書式である。手持ち無沙汰は、無実の書式では、ない。』
『同じく特記。祝い金の相場、検討。カーディナルは大陸に数えるほどしかいない。数えるほどしかいないものに、相場は、立たない。相場の立たない祝いは、現物で払うのが商人である。結論、詠唱補助の封蝋、上等の。本日渡す。』
『同じく特記。フェリス、祝いの菓子の包みを開封(単独犯)。証拠、髭の砂糖。量刑、Aliceの膝(本猫にとって恩赦と同義)。判例として、記録に残す。』
『私事の欄。合格の欄に人の名前を書く日は、自分の黒字より、頁が明るい。以上。』




