表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
114/182

狼耳の親切

――ウェイル領 バロック平原


リアッツォの西、バロック平原にカインの姿はあった。


「っし!これで!」


カインはシールドバッシュで仰け反ったコボルトの首を刎ねる。余裕そうに聞こえるがカインの身体はボロボロで頭からは血を流している。コボルトの血だけでなく自身の血もたっぷり含まれている。


「つーっ…派手にやられちまったな。」


カインは腰に据えてあるヒーリングポーションを一気飲みする。ここに来てからやや等級の高いものに変えたので傷口は塞がったが多少の痛みは残る。


「でもとりあえずこれで依頼達成か?」


コボルトの死体にナイフを突き刺してドロップ品の確認をする。ドロップ品の中にある『コボルトの舌』が今回のお目当てだ。


「1、2、3、……よし12枚あるな。」


個数が揃っていることを確認して収納にしまいこむ。何故こんなことをしているかというと…


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


――2時間前 リアッツォ 住宅区


「すみません戦士様!」


カインは後ろから呼び止められる。最初は自分だと思わなかったが回りを眺めても戦士に見える服装をしているのが自分だけだと気付き振り返る。


「どうしたんすか?」


声色から困っている様子が見て取れたので話を聞いてあげることにした。


「じ、実は…。」


話によると男は料理人でこれから店を開こうとしていたのだが肝心の食材が何かの手違いで届かなかったそうだ。それは店の看板料理の材料でもあるらしくいたく困っていた。


「はぁ…それで俺は何を。」


「幸い食材の元になるコボルトはバロック平原で姿が確認されたそうです。どうか討伐して食材を集めてきていただけませんか?」


「はぁ…まぁ…。」


困っている人間を目の前に断る気にもなれずに受けてしまったのだ。コボルトの強さを聞いたところ群れていなければ大したことないとのことだったので経験値稼ぎを兼ねて向かったのだ。


一人で依頼を受けるのは、思えば随分と久しぶりだった。誰の許可も要らず、誰の心配も掛けない。その身軽さが妙に新鮮で、平原へ向かう足取りは我ながら軽かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

――現在 バロック平原


「こいつら途中で仲間呼びやがって…」


初めは3体の群れだったのでよかったのだが、最後の1匹を仕留める時に遠吠えで仲間を呼ばれてしまいぞろぞろと増えたので苦戦を強いられたのだ。


「まぁいい。とりあえず討伐できたんだ。個数もこれで問題ないし…っておいおい…」


断末魔を聞きつけたのかまたコボルトの群れがやってくる。遠目からみて2体見えるのでその後ろに更に2体はいるだろう。


「ここで逃げてもどうせ追いつかれるしな…」


カインは覚悟を決める。


(俺もウェイルさんのように…)


もう1本のヒーリングポーションを飲み干してビンを投げ捨てる。


「うしっ!やってやらぁ!」


こっちから攻め込む。多対一は基本的に不利だ。少しでも数を減らすことを目指す。

今日は後ろに誰もいないので陣形を気にする必要はない。先手必勝、コボルトの攻撃範囲外からの攻撃をすればいい。


「一閃!」


いつもより気合を入れて切り込む。


「ギィエ!」


手応えはあったがそこまでのものではない。振り返ると先頭のコボルトの右腕を切り落とすまでで終わったようだった。


「速さが足りないか…。」


カインが通り抜ける瞬間、サイドステップをし始めているのが見えた。それでクリーンヒットを外されたのだろう。


「しかたねぇ、奇襲は戦力の低下だけか…。」


呟きながら盾を構える。


「最後だ、かかってこい!」


挑発をすると腕を切断されたコボルトを除く3体が飛び掛ってくる。


「だっしゃああ!!」


最初の一体をシールドで後方へ弾き、2体目に剣を突き刺しそれを薙いで3体目を吹っ飛ばす。剣を突き刺された2体目が絶命しているのを確認して剣を引き抜いて再度構えを取る。


(ライン鉱山での特訓を思い出すな…)


「ガウッ!」


コボルトが持っていたナイフを投擲してくる。


「うお!あぶねぇ!余計なこと考えてる暇じゃねぇな…」


気合を入れなおして対峙する。


「ふぅ……ふっ!」


強く踏み込む、コボルトはその踏み込みから一閃を警戒したようだが、あくまでフェイクだ。剣を持ち上げて袈裟切りをするように構えなおす。突然の構えの変更にコボルトが固まる。


「爪痕!」


2体を同時に攻撃する。フェイクに反応したコボルトは攻撃が最も強くなる攻撃範囲の末端に飛んでしまい腹部を切り裂かれる。


「ギィイイイイイイイ!」


切り裂かれた腹部から中身が零れている。もう戦闘に参加することはできないだろう。もう1体も外皮を切り裂くことは出来なかったが深手を負わせることが出来た。


「よし、追加で食材回収させてもらうぜ…!」


カインは追撃を重ね、無事食材の回収をすることができた。


静かになった平原で、カインはしばらく肩で息をしていた。ポーションは2本とも空で、腕には盾越しの衝撃の痺れがまだ残っている。あの人なら、この数を傷ひとつ負わずに終わらせるのだろう。差し引きの勘定を頭の中でしながら、それでも今日の自分は悪くなかったと思うことにした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

――リアッツォ 住宅区


「あ、ありがとうございます……!!!」


「おう、いいってことよ。」


料理人の男性に舌を受け渡す。


「これは報酬です、お受け取りください。」


そう言って差し出された金貨2枚を受け取る。


「おいおい、こんな貰っちまっていいのか?飯の稼ぎ以上だろ。」


「確かにそうなのですが、それよりも評判が大事なのです。『いつでもこの料理を出してくれる』という店と『出していない日もあるかもしれない』という評判ではお客様の信頼も違いますので、今回は食材と店の信頼を買ったということで。」


(なるほど、店の信用を金で買ったと考えるのか、面白いな。)


「よしわかった。じゃあこれは受け取ろう。でも舌を全部渡さなくてもよかったのか?」


「ええ、大丈夫です。全部いただいても保管が出来ないので…。…あっそうだ!」


男性は何かを思い出したかのように声を上げる。


「私の店、中央広場のほうにあるのですがちょっと来てくれませんか?よいものを差し上げることが出来ると思います。」


「お、おう、それはかまわねぇが…。」


「ささ、こちらへ。」


カインは男性に連れられて中央広場へ向かう。男性の店は中央広場の端のほう、こじんまりとしているが小奇麗な店構えをしている。立派過ぎないその雰囲気は気軽に入れそうな料理店を演出している。


「ここでお待ちください。」


CLOSEDと札がかけられているドアを開けて男性が中に入る。10分ほどすると男性が帰ってくる。手には羊皮紙が丸められたものが握られている。


「こちらをどうぞ。」


「これは…魔法のスクロールか?」


「いえいえ、当方そのようなものは扱っておりませんので、これは『コボルトのタンカレー』のレシピです。私が考案したオリジナルでございます。」


「料理のレシピか…。」


「お気に召しませんでしたか…?」


「いや、使い道を考えただけだ。俺は料理はからっきしだがパーティーに料理人をしているやつがいる。そいつに作ってもらうさ。」


「それはようございました。是非当店にもお越しください。おもてなしをさせていただきます。」


「おう、ありがとな!そん時はいっぱい注文して困らせてやるから覚悟しとけ!」


「はっはっは!面白い方だ。是非お待ちしていますよ。」


男性はカインの冗談に笑って返す。カインは男性に手を振り店を背にして歩き出す。


「んじゃこのレシピはYujiにでも…」


中央広場の真ん中を通り抜けようとしていると後ろから声がかかった。


「あの!」

コボルト(モンスター)

平原に生息するモンスター、2足歩行の犬のような風体をしている。大きさは成人男性の胸の高さくらいだが群れで行動するのが特徴である。知能の高い個体になると武器を使用することもある。遠吠えで仲間に危険を知らせたり救援を求めたりするので討伐をする際には早くするべきである。あえて呼び込んで一網打尽…というものもあるがメンバーとの連携が必要である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ