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料理人/夜のお供

――カプランドから2時間 休憩兼夕飯時


「…えっ!お前、料理人スキル取ったの!?」


「あぁ、幸い時間あったからな。」


突然のカミングアウトにカインが驚く。


「いやまぁ、誰かが取らないととは思ってたけど、お前がか…。いや、それが一番自然か…?」


「わぁ!すごいです!じゃあ、携帯食料なんかも作れるんですか?」


アリスが興味津々で聞いてくる。


「あぁ、まだレベルが低いから、大したものは作れないけどな。」


「料理人スキルとは、そんなにすごいのですか?」


スキルについて深く理解していないフルールが質問をすると、ステラが説明を始める。


「……そうだね。いなくても、問題は起きない。でも、経費の削減に繋がったり、ステータスの一時向上なんかに役立つ。それと、何より……」


「何より?」


ややもったいぶって、言葉を続ける。


「……旅が、楽しくなる。」


「まぁ、それは大切ですね。」


「旅の途中で取る食事は、士気に大きく影響するから。暗くてジメジメしたダンジョンの中にいても、おいしい食事が取れて、ステータスも向上したら……それだけで少し、救われた気持ちにならない?」


「確かに…。」


ステラが実体験のように語ると、皆もうんうんと頷きながら同意する。気だるげな声に、この時ばかりはわずかな熱が乗っていた。


「……私は、周りのメンバーがやってくれてたから取らなかったけど。Yujiが取ってくれて……正直、助かる。」


「いやいや、まだまだレベル2だからな。そんなに大したものは作れないぞ。」


「……それでもいいの。おいしい食事が取れると保証された時点で、旅の先が明るくなるんだから。」


ステラはいつもの眠たげな半眼に戻っていたが、どこか機嫌がよさそうだ。なんだかんだで、この旅を気に入っているのだろう。


「でも、料理人のスキルって、レベルが上がるとどんなことが出来るんですか?美味しく調理できれば、それはそれで問題ないと思うし、私も料理は出来ますが…。」


フルールが質問を続ける。


「確かに料理自体は誰でも出来るんだが、まず第一に、料理人スキルがないと、そこにステータス向上の効果が乗らない。」


悠仁がバトンタッチして説明をする。


「そして、レベルが上がると、この料理に乗る効果が上昇する。」


「なるほど。第一にということは、他に何か利点があるのですか?」


「あぁ、そうだ。他にも、料理の耐久度を上げるという効果がある。高位の料理人が作った料理は保存性に優れており、耐久度が高く傷みにくい。HOPE最高の料理人が作る料理は、その辺のポーションよりも効果が高くて、保存も2週間くらいできるそうだ。」


「それはすごいですね。ポーションよりもすごい料理なんて、興味がそそられますね。」


「あぁ…、なんでも、その料理を食べてしまうと、向こうの世界やこちらにある他の料理が味気なく感じてしまうほどだとか…。」


「まるで麻薬ね、それ…。」


ミーナがぼそりと呟く。


「料理にも依存性はあるって聞きますし、美味しい料理にはそれくらいの魅力があるってことじゃないですかね。私も一度食べてみたいですね。」


アリスも興味があるようだ。


「ま、そこまで行かなくても、旅先でみんなが美味しい料理が食べられるように頑張るさ。」


美味しい料理宣言をして、悠仁は寸胴の中身をかき混ぜる。今日の夕食は、カール羊の肉を使ったシチューだ。


湯気の向こうで、五人分の顔が鍋を覗き込んでいる。焚き火と、シチューの匂いと、気の早い催促。スキルを取ったのは経費のためのつもりだったが、この眺めが手に入るなら、試験料の元はもう取れた気がした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


――夕食から4時間後


「先輩、すごいですね…。よくもまぁ、こんな静かなのに御者を続けられますね…。」


「だって、他にできるやつがいないんだから仕方ないだろ。」


夕食も食べ終わり、皆が寝静まった頃、ミーナが悠仁の隣にやってくる。皆がいないことと、2人しかいないことから、口調が現実世界のようになっている。


「御者って、何かスキル必要なんですか?」


「いや、特に必要ないけど…。」


「じゃあ、誰かに任せればいいじゃないですか。」


「立候補でもしてくれれば任せるんだけどな…。」


「はぁ…。難儀な性格してますね…。」


やれやれといったように、ミーナが頭を振る。


「まぁ、先輩らしいというか…、なんというか…。」


「なんだそれ。」


「変に面倒見がいいというか、みんなのために自分が頑張ればいいや、みたいな考え方が先輩らしいってことですよ。」


「それ、褒めてんのか?」


「…半分?」


「なんだそりゃ。」


2人の間に静寂が流れる。


夜の街道は月明かりの帯が延びるばかりで、車輪の音と馬の鼻息のほかに音はない。こういう静けさは、気心の知れた相手とでないと持たないものだ。


「先輩は…。」


「ん?」


「先輩は、どこまで行きますか?」


「どこまでって、リアッツォまでだろ?」


「そうじゃなくてですね…。」


言葉足らずだったことを反省し、ミーナは言い直す。


「このまま冒険をし続けて、どこまで行きたいかって事です。ステラに聞いたら、果ては神々の闘いが行われている場所があるらしいですけど…。そこまで行きますか?」


「神々って…。現実感無いけど…。」


空を見上げて考えてみる。


「みんなで楽しく行けるなら、きっと行くし、誰かのために必要だとしても、行くなぁ…。」


「…そうですか。そうですね。でも、きっと遠いですよ?」


「だろうなぁ…。ここってまだ、地図の東も東だろ?」


平地で尚且つ街と街の間が狭いから移動が出来ているが、これからはきっと道も険しくなり、敵も強くなり、距離も伸びていく。もっとゲームに割く時間も増えるし、死のリスクも上がっていくだろう。


「ま、行けるところまで行ってみるさ。お前はどうするんだ?」


「そうですねぇ…。先輩が行くなら、私もついていきますかねぇ。」


「そんな他人任せな感じでいいのか?」


「先輩を支えるのが、後輩の仕事ですからね。」


「…そうか。」


「はい!」


その笑顔は現実世界で見た石橋の笑顔そっくりだった。


「んじゃ、少なくともリアッツォまでのお供は頼んだ。…試験的にクッキー作ってみたんだが、食べるか?」


「おぉ!先輩、お菓子作りなんて出来たんですか!」


きっと大変なこともあるし、これからもっと増えていくだろう。それでも、俺達ならなんとかなる。そう思いながら手綱を握り、悠仁は地平線を眺めるのだった。

料理人(生産スキル)

料理をすることで貢献をするスキル。通常の料理はどのプレイヤーでも行うことが出来るが、作った料理に特殊効果を乗せるのは、料理人スキルを持っている者に限定される。旅先での食事や携帯食料の製作で貢献をする。行軍中の食事の出来は士気に大きな影響を与える。この世界では直接戦闘力に影響するため、いなくても旅は出来るが、一人いるだけで旅の色がガラッと変わるスキルである。レベルが上がると付与される特殊効果も強くなっていき、持ちも良くなる。

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