出立に向けて
――カプランド大森林 入り口
「…お、来たか。ってなんだ、その生き物。」
馬車の場所には、先にカイン達が到着していた。アリスの肩周辺で遊びまわるカーバンクルを見て、不思議そうに疑問を飛ばしてくる。
「いや、色々あってな。…そっちはまた随分と集めたな。」
「こっちも色々あってな。ほぼフルールのおかげなんだがよ。」
「採っちゃダメなものまで採って無ければいいさ。分類は馬車の中で、みんなでやってくれ。」
「わかりました。じゃあ、こっちのメンバーだけじゃなくて、Aliceさんやミーナさんにも手伝ってもらいましょう。」
「「はーい。」」
「んじゃ、馬車に乗ってくれ。街に戻る。」
悠仁の指示で馬車に乗り込む。御者は相変わらず悠仁、他は荷台である。
「わわ!そこは入っちゃダメなところです!」
「…カインさん、目がえっちです。」
「いや、大声出したら誰でもそっちに注目するだろ。」
「いや、その目は性的なものを感じたわ。」
「勘弁してくれ…。」
後ろでは、早速カーバンクルがいたずらをしているようだ。
「ま、元気ならそれでいいさ。」
悠仁は喧騒をBGMに、街へと馬車を走らせる。
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――カプランド
「それじゃあアリス。後は任せていいか?」
「はい、大丈夫です。今から依頼すれば、明日には出来ると思いますので。」
「分かった。じゃあ、これを持っていってくれ。」
悠仁はパーティーの資金が入っている革袋を手渡す。
「分かりました。これで払ってきちゃいますね。」
「そうしてくれ。多くて持てないようだったら、一旦こっちに戻ってきてくれれば一緒に取りに行くから。」
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきますね。」
アリスは馬車から降りて、すっかり懐いたカーバンクルと共に醸造所へ歩いていく。
「じゃあ俺達は、バーグさんのところに戻って、今後のことについて伝えておかないといけないな。」
「あー、まだリアッツォに行くこと話してなかったか。」
「あぁ。突然だと向こうも驚くだろうから、今日くらいに話しておこう。」
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――カプランド バーグ邸
「…そうですか…、リアッツォに。残念ですが、仕方がありませんね。」
バーグが心底残念そうに呟く。
「えぇ、領主の招待なら、おいそれと断ることも出来ないと思いまして。」
「ウェイル領の領主は、とても見識のある方だとお聞きしています。私も仕事でリアッツォに行ったときに聞いただけなのですが。」
「見識が…。」
(もしかしたら、フルールの記憶についての話とかも聞けるかもしれないな…)
「何でも、元冒険者とか。元々領主の家系ではないのに領主になるには、相当の努力をされているはずです。何か、他の人よりも秀でているものがあるのでしょう。」
「元冒険者なのですね。」
(冒険者が領地を持つなんてことが出来るのか…。)
知らないことばかりで、やや頭が追いついていかないが、整理しながら話を聞くことにする。
冒険者から、領主へ。剣を置いた者が、今度は街を守る側に回る。どんな旅をすれば人はそこまで辿り着くのだろう。会ったこともない相手の来歴が、なぜだか妙に耳へ残った。
「はい、その方が領主になってから街も大きくなり、交易も盛んだとか。この街のように森が境界線になっているのではなく、しっかり外壁で覆われているのですよ。」
「それは凄い。ヴァリエスタもそんな感じでしたが、この自然の多い場所にそのようなものを作るなんて、相当に凄い方なのですね。」
「はい、それはもう。」
NPCからの信頼も篤いようだ。
「慣れてきたところでここを離れるのは少し残念ですが、まだしばらくはここでお世話になると思いますので、私たちに出来ることがありましたら何でも仰ってください。」
「そんな!もうカインさんにネイトを救っていただいただけで…!むしろ、いただいている宿泊代もお返ししたいくらいです…。」
「いえいえ、あいつの好きでやったことですから。」
「そういっていただけると。出立の日まで、どうかゆっくりと過ごしてください。家のことで何かありましたら、妻に言っていただければ何とかしますので。」
「ご丁寧にありがとうございます。では、私は上で仲間と準備をするので。」
「はい、ごゆっくり。」
バーグに見送られ、上へ向かう。
(リアッツォでは、色々情報収集が出来そうだ…。領主に聞くことも整理しておかないとな…。)
フルールの件で進展があるかもしれないということで、前向きにリアッツォ行きを考えるのだった。




