ふたりの師匠
『ブルーム王立学園』
王国最高峰の魔法学園。
王族や貴族の子弟、そして厳しい試験を突破した特待生だけが入学を許される名門校である。
この学園の目的は、貴族の責務である魔物討伐を学び、国と民を守る人材を育成すること。
通常クラスでは魔法学、剣術、戦術、歴史などを幅広く学びながら実践演習を重ねていく。
一方、特待生は入学と同時に特級クラスへ所属する。
特級クラスでは座学の多くが論文提出によって代替され、その分、実践訓練が中心となる。
生徒は単独、あるいは自由にパーティーを組み、学園が指定するダンジョンや演習地を攻略しながら実力を磨く。
卒業生は王国騎士団、宮廷魔導士団、冒険者ギルド、各領地の守護騎士など、それぞれの道へ進み、王国を支える存在となる。
ここは、未来の英雄たちが花開く場所――ブルーム王立学園。
「学園の校訓が『花は一人では咲かない。』だって。」
「なるほど?特待生を狙うから私たちは特級クラスに入るのにゃ?」
「試験内容は座学と実技と面接だよ。がんばろうね!」
「座学……。」
エリアスが送ってくれたブルーム学園の入学試験の過去問からそっと目を逸らす。これ、去年の分だけじゃないよね?何年分の過去問?たぶん10年分くらいあるよね?胡散臭いけど仕事が早いな。思わずエリアスからの手紙を破りそうになった。
「問題は実技だよね…。」
「魔法ってどうやって使うのにゃ?」
困った時はママに相談なのにゃ!
◇
「あらあら、ブルーム学園の入学試験に魔法が必要なのね?でも入学試験の実技は魔法だけじゃないのよ?」
「「……?」」
「実技は大きく四つあるの。」
指を一本立てる。
「魔法。」
二本。
「武器。」
三本。
「実戦。」
四本。
「面接よ。」
「面接!?」
「魔物とお話するの?」
「違うわ。」
さらにママが続ける。
「どんなに強くても、人を守れない人はブルーム王立学園には入れないの。」
「「なるほどー。」」
「武器はもう決まってるのにゃ!」
「ティアナはなにを使いたいの?」
「双剣にゃ!」
「どうして?」
「ロマンだからにゃ!」
「…ティアナらしいわ。」
「それなら…魔法のことはトムじいに、剣術のことはガロンじいに相談しましょう」
「「トムじい!ガロンじい!」」
「きっと力になってくれるわ」
ママは優しく微笑んだ。
◇
「断る」
「そこをなんとかお願いするのにゃ!」
「トムじいお願い!」
「ふん!」
ママ…トムじいは力になってくれそうにありません。
「トムじい。私どうしてもブルーム学園に入学したいの!」
「私もどうしても(最推しに会うために)ブルーム学園に入学したいのにゃ!」
「理由は?なんでブルーム学園に入りたいんじゃ?」
「アルベルトに、アルベルトに会いたいから。それにアルベルト達だけに魔物を任せて私だけ安全なところで暮らすなんてできない!」
「はわわ…叶えたい夢(最推しに会いたい)があるのにゃ。それにはブルーム学園に入学しないといけないのにゃ!」
トムじいは2人を交互に見ると。大きなため息をついた。
「魔法の適性を見てやる。着いて来い。」
◇
「ブルーム学園に入学したい。いいだろう。」
「そのためにわしの力を借りたい。いいだろう。」
「ただし、一度始めたら最後までやり遂げること。いいな?」
ガロンじいはトムじいよりあっさりと引き受けてくれた。だけどそれから先が地獄だった。
「走れぇぇぇ!!」
「ふえぇぇぇ!!」
「ティア待ってー!!」
——
「腕立て百回!!」
「腕がもげるのにゃ!!」
——
「素振り千回!!」
「双剣より私が折れるのにゃ!」
——
「ティア、あと十回だよ!」
ティアナ。
「アリアが筋肉側に寝返ったのにゃ……。」
——
「筋力は目的じゃない。」
「武器を最後まで振れる体を作る。」
「仲間を背負って走れる足を作る。」
「なにより…」
「逃げ切る体力を作る。」
「筋肉は努力の証じゃ。」
……ちょっとかっこいいのにゃ。
「よし、もう百回!」
「ふえぇぇぇ!!」
◇
アリアが手のひらに小さな光を灯す。
淡い星のような光がふわりと浮かび、辺りを優しく照らした。
「綺麗なのにゃ……。」
「その光を揺らすことなく保ち続けるんじゃ」
「次はティアナ。索敵を使ってみい。」
「はいなのにゃ!」
精神を統一し集中する……
「右上の棚にベリーベリーパイ!」
「左の戸棚にマドレーヌ!」
「中央の机にチーズケーキ!」
「冷蔵庫にプリン!」
トムじいは一瞬だけ目を見開いた。
トムじい。
「……全部わしのおやつじゃ。」
「ティア……。」
「索敵成功なのにゃ!」
「違う。」
トムじいは大きなため息をする。
「敵を探す魔法じゃ。」
「おやつも敵なのにゃ?」
「違う。」




