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また会えるな

「祭りにゃ!」


夏の終わりが近づく今日。ミモザ村では夏祭りが行われる。


「ママー!リボン!」


黄色いリボンやスカーフをどこかに必ず取り入れるのが決まりだ。


「はいはい。リボンは髪につけるの?」


「そうにゃ!」


ママは鏡の前でティアナのツインテールを優しく整え、黄色いリボンをきゅっと結ぶ。


「はい、できた。」


「かわいいかにゃ?」


「ママのティアナは世界一可愛いわよ。」


「えへへ。」


「ティアー!」


「アリアなのにゃ!」


玄関の外ではアリアが頬を紅潮させティアナを待っていた。ハーフアップにしたプラチナブロンドの髪には、黄色いリボンが結ばれていた。


「可愛いのにゃ!」


「ありがとう!ティアも可愛いよ!」


「「おそろい!」」


二人は顔を見合わせて笑い合う。


手を繋いで、アルベルトを迎えに向かった。



「おはよう。2人ともよく似合っている。」


「可愛らしいおふたりがさらに可愛らしくなりましたね。」


「ありがとう!2人も素敵だよ!」


「ありがとなのにゃ!2人ともかっこいいのにゃ!」


アルベルトとエリアスは腕にスカーフを巻いていた。


「お手をどうぞ。ティアナちゃん。」


胡散臭いけど今日は特別だ。


「ありがとなのにゃ。エリアス。」


アリアとアルベルトが手を繋いでお祭りに行く準備ができた。4人は夏祭りに向かって歩き出した。



「初めはどこに行きます?」


「まず最初に焼きとうもろこしなのにゃ!」


ティアナが人差し指をぴんと立てる。


「いきなり焼きとうもろこしか?」


「そうにゃ!」


得意げに胸を張った。


「最初にいい匂いをいっぱい吸うのにゃ!」


「食べるんじゃなくて?」


「匂いもごちそうなのにゃ!」


「なるほど……」


アルベルトが素直に頷く。


「それから綿あめ!」


「順番があるの?」


「あるのにゃ!」


ティアナはさらに指を一本立てた。


「綿あめは最後だとベタベタになるにゃ!」


「……確かに。」


エリアスが思わず納得する。


「次は金魚すくい!」


「その次は?」


「その次は焼きそば!」


「食べてばかりじゃないか。」


アルベルトが笑う。


ティアナは首を横に振った。


「違うのにゃ。」


「?」


「焼きそばを食べながら花火を見るのが通なのにゃ!」


「なるほど。」


「なるほどですね。」


アルベルトとエリアスが真面目に頷く。


アリアはくすっと笑った。


「ティア、それ毎年言ってるよ?」


「毎年大事なのにゃ!」


一軒の屋台から元気な呼び込みが聞こえてきた。


「風待ちリリィの花びらを模した風車だよー!」


風が吹く。


くるくるくる。


「わぁ!」


「買うにゃ!」


「綺麗だな。」


「殿下もいかがです?」


「私も一本いただこう。」


4人で色違いの風車を買った。

 

◇◇◇


『風待ちリリィ』


かぜがふくとはなびらが


ゆっくりまわるよ!


かざぐるまみたい!


おまつりでは ふうしゃもあるよ!


◇◇◇


「あっ!ポヨの実なのにゃ!」


「ウチのポヨはよく跳ねるよ!」


皮をむく。


ぽよん!


ぽよん!


ぽよん!


「逃げたー!」


ティアナとアリアは逃げたポヨを追いかける。


「初めてご覧になりますか?」


「ああ。」


エリアスが皮をむく。


ぽよん。


「……。」


ぽよん。


ぽよん。


「……面白い。」


◇◇◇


『ポヨの実』


みどりのかわをむくと


ぽよぽよはねるよ!


にげるからきをつけてね!


◇◇◇


風車を買って、ポヨの実で遊んで、ティアナのオススメの屋台をまわり、すっかりあたりが暗くなる。——花火だ。


「みんな焼きそばの準備にゃ!」


「バッチリよ!」


「花火を見ながら食べるのは難しくないか?」


「ものは試しですよ。殿下。」


風が吹き、4人の風車が一斉に回る。


ヒュ〜〜〜


ドーーーーーン!!!


光の花が大輪を咲かせる。


「わぁ…」


「きれい…」


赤。


黄。


青。


紫。


次々に色を変え形を変える。


「綺麗だな」


「はい。美しいです」


みんなが空を見上げ花火に見惚れる。


途中アルベルトがアリアを見つめているのを私は見逃さなかった。甘酸っぱいにゃ。



最近、アリアの元気がない。理由はわかっている。


「もうすぐお別れだね」


「お別れなのにゃ」


半年間のアルベルトの療養が終わる。アルベルトは城に帰り私たちはいつもの生活に戻る。


「決めた!私、ブルーム王立学園の特待生になる!」


「おー!ファイトなのにゃ!」


「なに言ってるの?ティアも受験するんだよ?」


「ふぇ?」


待てよ…


ヒーローとヒロインの前に現れる謎の最推し…


ヒーローとヒロインはブルーム王立学園在籍。


最推しに会うにはブルーム王立学園の生徒でいた方が都合がいい?


「任せるにゃ!私も特待生になるのにゃ!」


ティアナ、五歳。


最推しに会うため、ブルーム王立学園特待生への道を歩み始めた。


「がんばろうね!」


アリアに笑顔が戻った。



——お別れの日


「半年間…とても楽しかった。ありがとう。」


「私もとっても楽しかった。」


沈黙が2人を包む。

先に沈黙を破ったのはアリアだった。


「私、ブルーム王立学園の特待生になる!」


アルベルトを目を見開き驚くがすぐに笑顔になる。


「なら、また会えるな。」


「うん!」


「待っている。」


「うん!」


あ、甘酸っぱい。


「エリアス。これママが作ったベリーベリーパイにゃ。馬車の中ででもどうぞって。」


「ありがとう。ティアナちゃん。」


「ちなみに私もブルーム王立学園の特待生を目指すにゃ。」


「はい。頑張ってください。応援しています。」


今回もエリアスのウィンクを躱わす。


「また躱されてしまいました。」


アリアがアルベルトに包みを渡す。


「これ、ティアと一緒に作ったの。ミモザ村のお花図鑑。いつでも思い出せるように。」


「ありがとう。大切にする」


アルベルトはアリアから両手でしっかりと包みを受け取る。


「この村が…大好きだよ。」


「うん!」


あー。アルベルトがアリアを泣かせた!


アルベルトとエリアスが馬車に乗り込む。

来た時よりさらに大きな人だかりができ、アルベルトを惜しみながらも送り出す。


「この村が…大好きだって。」


「嬉しいにゃ。」


「嬉しいね。」


夏の終わりの風が、黄色いリボンを優しく揺らしていた。



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