ミモザ村のお花図鑑
「今日は第二の秘密基地に行くにゃ!」
ティアナを先頭に秘密基地へ向かう。
魔物よけもちゃんと付けた。
古い狩猟小屋は森の奥にひっそりと建っていた。
立て付けが悪くなった重い扉を開ける。
「おぉ…」
「これは…」
部屋の中央には大きな机があり、その周りに椅子が四脚並んでいる。
机の上には古い地図が広げられ、ランプが重りがわりのように置かれていた。
古くなった紙と空のインク瓶。先の潰れた羽ペン。
本棚は隙間だらけで、歯抜けのように数冊だけ本が残っている。
ガラス窓はところどころ割れていて近づくのは危険だとわかる。部屋の中は薄暗いが、窓から差し込む陽光に照らされ、埃がきらきらと舞っていた。
壁にはいつから止まっているかわからない壁掛け時計が掛かっていた。
「ロマンだ」
「ロマンですね」
アルベルトとエリアスの反応を見たティアナとアリアが顔を見合わせて笑った。
◇
最近アリアとアルベルトの距離が近い。
順調なのにゃ。
「ティアナちゃん、どうしたんですか?」
「花ならまだ種なのにゃ。」
エリアスは一瞬、困惑したがアリアとアルベルトが同じ本を寄り添って2人で見る姿を見て納得した表情をする。
「なるほど…では、ティアナちゃん。お兄さんと本でも読みますか?」
「胡散臭いのはお断りなのにゃ。」
「ティアナちゃんが、お兄さんをいじめる。」
事実なのにゃ。
二人は植物図鑑を見ているようだ。
私のオススメは月鈴花。
銀色の小さな鈴のような花で、風が吹くと鈴の音が鳴る。
アリア、それアルベルトに教えてあげるのにゃ。
二人が楽しそうに同じページをのぞき込む。
……なるほど。
これが推しカプ。
◇
雨……
今日はアリアと二人お家でのんびり遊ぶことにした。
「図鑑を作ろうと思うの!」
「急にどうしたにゃ?」
アリアが突然、図鑑を作ると言い出した。ほんとどうした?
「アルにミモザ村のことを覚えててほしいなって…」
「ほーん?」
いつの間にか愛称で呼ぶようになってるし、図鑑はアルベルトのためなんだ…ふーん。
そんなの手伝う以外の選択肢がないよね!
「手伝うにゃ?」
「うん!ありがとう!」
この後2人で図鑑を作り始めた。
「最初はミモザ」
「ベリーベリーの花も載せるにゃ!」
「雨が止んだら虹露花を見に行こう!」
「アルベルトにも見せるのにゃ!」
「うん!アルにも見せよう!」
2人で図鑑を見ながら花を選ぶ。
この村のシンボルのミモザ。
夜明けだけに咲き、朝露が星のように輝く星雫草。
銀色の小さな鈴のような花を咲かせ、風が吹くと鈴の音が鳴る月鈴花。
雨上がりだけ7色に光る虹露花。
森の木漏れ日にしか咲かない木漏れ日花。
白い小花が咲いたあとベリーベリーの実になるベリーブロッサム。
載せたい花が多すぎて選ぶだけで一苦労した。
「雨…止んだにゃ!」
「行こうティア!」
まずは虹露花。うちの庭にも咲いているのを思い出した。
「虹露花ウチにもあったのにゃ!」
「ほんと!?」
「花束にしてもらうのにゃ!」
ママにお願いして虹露花を小さな花束にしてもらった。アリアのメッセージカード付きの花束をアルベルトに届けにいった。
◇◇◇
『あめのあとだけにじいろ。はれたらしろになるよ。』アリア&ティアナ
◇◇◇
「次は何の花を見に行くにゃ?」
「ティアナのおうちには他に何の花があるの?」
「よく覚えてないけど…月鈴花はあるにゃ!」
「じゃあそれ以外で!」
「木漏れ日花とベリーブロッサムは森に行かないとだから…」
「雨が降ったあとは危ないね!村の中で見られるのにしよう!」
「わかったのにゃ!」
村を歩いて実物を見ながらスケッチ。花のスケッチは難しいのにゃ。アリアは上手。
家に帰ってスケッチした花のコメントを考える。
「この花、なんて書こうかな?」
「月鈴花にゃ!?」
「うん!」
「コメントは『ロマンなのにゃ!』」
「それだけ!?」
「大事なことなのにゃ!」
「じゃあ下に小さく書くね。」
◇◇◇
『月鈴花』
かぜがふくとりんりんなるよ!
よるのほうがきれい!
ティアがだいすき!
*ティアより
「ロマンなのにゃ!」
◇◇◇
「おやつよー」
「「はーい!」」
「二人とも頑張ってるわね。」
「アルベルト様喜んでくれるかな?」
「きっと喜ぶわ。」
「そっかー!えへへ。」
ママのおやつがおいしい。おかわりをした。
◇
机いっぱいに並んだ花の絵。
「まだ途中だけど……。」
「絶対喜ぶにゃ!」
「うん!」
机いっぱいに並んだ花の絵を見つめる。
まだ途中だけど、これからちょっとずつ頑張ればいいのにゃ。
アリアの頑張る姿が少しだけ眩しかった。
私も早く最推しに会いたいのにゃ。




