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その恋、賭けですよね? ~地味OLは全部知った上で三ヶ月後に叩き潰す~  作者: ぶるどっく


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第二十九話



「……牛頭部長」


 葵の提示した録音を皮切りに事態が動き出す。


「何だ?」


「此方の若いモンを営業部に差し向けて構いませんね?」


「問題ない。

 ……吉村課長、私は社長室へ向かう。

 新しい情報が分かり次第、連絡を頼む。」


 吉村が牛頭へと声を掛ければ、牛頭も動き出す。


「佐山くん、犬飼くん。

 すまんが君達で営業部に出向いてくれるかい?

 特に犬飼くん……俺の命令と言ってくれて構わん。

 営業部の奴ら相手に、その体格を活かして圧を掛けといてくれ。

 …………証拠隠滅に走られたら敵わんからな。」


「了解です!

 営業部のデスクの鍵は準備完了してます!」


「自分も了承しました。」


 体格が良いからこそ、余計に威圧が出来ると吉村は彰良に指示を出した。


「そ、それなら!

 営業部の課長として立ち会います!」


 管理職の一人として鼠川が声を上げた。


「……そうですな。

 営業部責任者として立ち会う方が宜しいでしょうな。

 …………佐山くん、犬飼くん、鼠川課長と一緒に宜しく頼むよ。」


「わかりました!

(……鼠川課長を見張っとけ、って……ことかな?)」


「……はい」


 保身に走られては困る、という吉村の裏を二人は感じ取る。


「あとは、念のためにロッカー内の私物も保管しておきましょうか。

 ……なに、近々ロッカーを開ける必要が有るので、各部署の管理者の承諾のもとに私物を移し替えるに過ぎませんがね。」


「そ、そうだね……いつまでも私物を放置しておくわけには行かないな。

 有馬くん、ロッカーの方は君が立ち会ってくれ。」


「分かりました。」


 溢れ出す汗を拭きつつ、鼠川が有馬に指示を出す。


「鼠川課長の許可も得た。

 総務の何人かで()()()()()()()()()()()()()()()()()しっかりと段ボールに封をしといてくれ。

 その上で、触った人間が特定できるように、施錠できる重要機密室に運んで置いてくれ。

 ……彼処なら出入り口に監視カメラが有るからな。」


 吉村の指示に従って、何人かの総務社員が動き出した。

 同時に、鼠川を先頭に彰良と佐山も営業部へと向かった。


「立花さん、兼子さん。

 USBが発見された時のために、オフラインのPCの準備を……」


「すでに準備終了しています。」


「……流石だな。」


 吉村が葵へと視線を向ければ、すでに立ち上がったオフラインのPCが準備されていた。


「……鬼が出るか、蛇が出るか……」


 吉村は小さく呟き、総務課の入り口を見つめるのだった。





 総務課にて待つ面々にとっては、長く感じる時間。


「吉村課長っ!

 言っていた通りの場所にあった!

 確認するために、PCを貸してくれないか……!」


「既に準備しています。

 鼠川課長、此方へ。

 ……立花さん、頼んだ。」


 慌てた様子で戻って来た鼠川。

 その後ろには、佐山と彰良の姿もあった。


「…………」


 鼠川から渡されたUSBを接続し、画面に現れたデータファイルを確認していく。


「………………有りました」


 背中に刺さる数多の視線を感じつつ、集中して作業すれば数分と掛からずに目的のファイルを見つけ出した。


「猿渡産業……に、ついてのファイルを紙面に出す前に……別のUSBにデータをコピーしておきます。」


 言うが早いか、準備していたUSBにコピーを開始した葵。

 

「吉村課長、別のオフラインPCで中身を確認後に金庫隔離で宜しいですか?」


「あぁ、頼んだ。」


「佐山さん、此方の操作を交代して頂いても?」


「わかった」


 吉村へ確認後に、流れるように佐山へとPCの操作を交代した葵。


「先輩!

 此方のPCで確認して下さい!」


「ありがとう、兼子さん。

 …………コピーしたUSB内のファイルも問題なく開けますね。」


 USBのコピーが問題ないことを確認後に、速やかに華乃と共に金庫へと保管する。


「吉村課長、USB内の猿渡産業の契約書をオフラインで紙面印刷しときます。

 ……悪い、犬飼……ありがとう」


「業務ですので、問題ありません」


 佐山が頼む前に、さっさとオフラインで印刷が出来るように彰良が準備していた。


「……印刷ができ次第、俺と鼠川課長で社長室へ運ぼう。

 その間の業務に関してだが……」


 コピー機が低い稼働音をたてる。


 吉村が総務課の面々を見渡す。


「まず、立花さんは有馬主任と共に本日の経緯を書面に大至急で纏めてくれ。

 すぐにでも、管理委員会の会議が招集されるはずだ。」


「わかりました。」


「……はい」


 有馬と葵が頷いたことを確認し、視線を佐山と華乃に向けた。


「書面の整理が終わり次第、有馬主任が営業部に戻るが……現時点で営業部は大混乱に陥っている。

 佐山くん、兼子さん、君達は営業部の面々とも仲がいい。

 それを生かして、営業部の電話対応など出来る業務のフォローをしつつ、黒木が関わっていそうな書類の確保・保全に努めてくれ。」


「わかりました!」


「……はぁい……。

 (……コレ……残業コース確定じゃない……?

 折角……せっかく!

 葵先輩がお泊りに前向きだったのにぃぃぃっっ!!

 ……おのれ、黒木……月夜ばかりと思うなよ……!)」


 問題なく返事を返す佐山の影。


 華乃は内心で歯噛みする。


「それ以外の総務課社員は、一般業務を遂行しつつ、黒木が猿渡産業以外で関わった他社の確認作業を頼む。

 出来るならば、リスト化まで終わると有難い。」


 皆、宜しく頼むと頭を下げる吉村に、総務課社員達は力強く頷くのだった。


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