≪付録・急7≫
オウタは、そのサドっ気も全開にする。
「これで気兼ねなく暴力を以て脅迫行為に及べる! 何が、行きたいところへ行けばいい、だ! ぼくはブンブー、かってんだ! 一昔前の野沢雅子さんの髪みたいな色しやがって!」
オウタはマクシアへ視線を向け、
「忍法を使います、協力を!」
と要請する。
「は~い」
応じるマクシア。
『核融合反応の術ですか? 無駄です。先ほどお伝えした通り、そのエネルギーを以てしてもウォリハルコンは砕けません』
「否!」
大怪柱からの指摘を否定するオウタ。
「俺が用いようとしているのは核融合反応によるエネルギーの方じゃない。こっちの方だ!」
そう言い放った途端、握り締めていた彼の拳から謎の液体がブシャアッと噴出した。
その液体は黒く光っていた。
黒とは、すべての可視光が吸収された結果の色である。
ゆえに理論上、黒い光、というものは存在しないのだが、その液体はどう見ても黒としか呼べない光を放っていたのである。
そして、その液体は地面へ滴り落ちる前に空中で霧散していた。
『それはまさか! 【反物質】!?』
明らかに狼狽している大怪柱。
反物質とは、通常の物質を構成する反対の性質を持つ原子からなる物質の事である。
何を言っているのかわからないと思うので、読者の方は、とにかく凄い物質である、と認識してもらえればいい。
「そうさ、反物質さ!」
不敵な笑みを浮かべるオウタ。
「核融合反応を行えば反物質が発生する。だから忍法:核融合反応の術を応用して反物質を生成し、それを俺の拳にまぶしているのだ!」
『反物質をオニギリにゴマみたいな感覚で!? なんということでしょうか!』
大怪柱は驚きを隠せないでいる。
「そして今から、この拳で貴様を殴る!」
『!!』
「反物質を知っているのなら、何が起こるかわかるだろう。反物質は物質と衝突すると双方が完全消失するという現象を生じさせる。物質であれば、どんな物質であろうと、それが物質である限り、その現象から逃れる事は不可能だ。ウォリハルコンだかなんだか知らないが、それも物質であるなら然り! 消失という形で破壊可能! 俺はこの攻撃を、その消失現象に因んで、こう名付ける」
オウタは語気を強めて技名を叫んだ。
「【ミラクル対消滅パンチ】!」
反物質で殴る、という究極の暴力に曝されそうになった大怪柱は大いに取り乱した。
『正気ですか!? 対消滅は超膨大なエネルギーを発生させる現象です! 核融合反応すら遥かに凌ぐほどのエネルギーを! あなた死にます! 周囲の人間も死にます! それどころか、この大陸が消し飛びます!』
「一向に構わんッッ!」
強気の姿勢を微塵も崩さないオウタ。
「止めて欲しくば、俺にアカシッコレコードアクセス権を寄越せ。さもなくばミラクル対消滅パンチで、この世界のすべてが失われるという最悪の形で貴様の大切な人類保管計画が大失敗する事になるぞ!」
『拒否です! 拒否します! そんなこと出来る訳がありません! 常識的に考えて、周囲を巻き込む自殺行為など出来る訳が無いのです!』
そう指摘されたオウタの態度が急に鎮まる。
「それ本気で言ってるの? ちょっとアカシッコレコードを参照してみ? これまで人類が周囲を巻き込む自殺行為をやらなかったかどうか」
『大量にありました』
大怪柱からの答えは即座に返ってきた。
『人類は周囲を巻き込む自殺行為をする唯一無二の生物です。了解しました。人類保管計画保護のため、特別対応を行います。要望通り、オウタ・ウエタにアカシッコレコードアクセス権を付与します』
こうして大怪柱はオウタの暴力による脅迫に屈したのであった。




