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≪付録・急5≫

大怪柱の話は途方もないスケールの内容であった。


(……)


私はしばし放心してしまった。


(……と、とりあえず人類史の謎に対する解答の取り扱いについては一旦置いておくとして、今はコスタニコの事だ)


私は再び視線を彼女の方へと向けた。

先ほど人類皆人間という真相によってレイシストは全否定された。

続いて、人類という人間は最高の生物を生み出すための参考データとなる多様性の怪物、という事実が明かされ、ドラジドが掲げた「人間は最も優れた最高の生物」というレイシズムすらも誤りである事が判明してしまったのである。



人間は最高の生物ではなかった。


人間は最高の生物を創り出すための、踏み台、に過ぎなかったのである。



(ドラジドの思想は、その根底からして間違っていた。この事実を受けてコスタニコは信条を改めざるを得ないだろう。これで彼女を殺さずに済む)


私はそう期待し、コスタニコを注視した。


他のメンバー達の視線も彼女に集中している。


「……」


コスタニコは俯き、沈黙したままでいる。


「……アハ」


不意に彼女の口から音が漏れた。


「アハハ……アハハハハ……アハハハハハハハハ!」


コスタニコは哄笑し出したのである。


ショックの余り、頭がおかしくなってしまったのかと思ったが、そうではなかった。


俯いていた彼女は俄かに顔を上げ、隠れていたその表情が明らかとなる。


コスタニコは尊大でふてぶてしい顔付きをしており、強い意思の光を宿したその瞳に一切の迷いは無く、正気を失った者の形相では決してなかったのである。


彼女は私達をねめつけながら、


「それがどうした!」


と叫んだ。


「人類史の謎に対する解答など知った事ではない! 私はドラジド様の末裔として、彼の御方を崇拝していくのみ! それが私のすべて! ドラジド様のお考えが誤りであるというのなら、正しくするだけ! 解答の方を隠蔽改竄する事によって! そうして私は神君の遺志を! ジェノサイドを正義として実現していくのだ!」


解答を知ってなおコスタニコは何一つ変わっておらず、超危険人物のままだったのである。


(駄目だこの女……。止めるためにはもう殺す以外に選択肢は無い……)


私はそう判断するしかなかった。


『人類史の謎に対する解答を受けて、公開するでもなく黙殺するでもなく、まさか捻じ曲げようとするとは。流石は多様性の怪物です』


大怪柱がそうコメントする。


その時であった。


「あの、ちょっといいですか?」


挙手し、そう声をかけた者がいたのである。


オウタであった。


そして声をかけた相手は、大怪柱であった。


『何でしょうか』


応答する大怪柱。


「質問なのですが、全人類の全人生の情報が保存されているデータベースには、固有名があるのですか?」


急に話題を転換するオウタ。


『あります。私の名称の一部が引用されて【アカシッコレコード】といいます』


「わかりました。では、要求させてもらいます」


『? なんの話ですか?』


「アンダーグラウンドウォーカーとなった事に対する恩賞として、僕にアカシッコレコードを参照する権利を、すなわち【アカシッコレコードアクセス権】をください」


オウタは突然、何の脈略もなく、理不尽な要求を吹っ掛けたのである。


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