≪付録・急2≫
ギガアの大穴は、多段式縦穴式ダンジョン、という構造になっていた。
大穴の中に一回り小さな大穴があり、その一回り小さな大穴の中に更に一回り小さな大穴があり、といった具合で段々になっていたのである。
私達はダンジョンの奥底に達するまで計七回、大穴にダイブした。
イェンの直感は的中し、私達パーティ424は何物にも襲われる事は無かった。
ギガアの大穴の最底部に到達すると、そこには見た事もない景色が広がっていた。
どこまでも真っ白で、どこまでも真っ平なのである。
白色の正体は塩であった。
ギガアの大穴の底は塩の平原となっていたのである。
私達は塩平原の中心を目指して移動を開始した。
途中で、気絶していたコスタニコが目を覚ました。
私達が何をしようとしているのかを彼女に説明し、同行させた。
「……」
コスタニコは憮然としていたが、とりあえず大人しく従った。
歩くコスタニコの背後には常にオウタが陣取った。
彼女が不穏な動きを見せたなら、即座にミラクルケツパンチで制圧できるようにしているのである。
「……くっ」
コスタニコは頗る居心地悪そうな表情を浮かべ、両手でお尻を押さえながら歩いている。
不意にオウタが、コスタニコに向かって、
「ピッチリ横分けケツデカねえさん」
と呼び掛けた。
彼女の事をイジり出したのである。
一方的にこちらの世界へ召喚し、騙くらかし、酷い目に遭わせた事に対する意趣返しを、という性格ではオウタはないので、単にラスボス系女子に対するサドっ気が出てしまっているだけのようである。
「誰がピッチリ横分けケツデカねえさんだ」
コスタニコが振り返ってオウタをギロリと睨む。
「私のお尻はそんなネタにされるほど大きくない。普通だ」
「いやいや、その大きさで普通と言い張るのは無理ですよ」
「普通だ。私は背が高いから相関関係上、このサイズになってしまうのだ。だから普通だ。身長の事を考慮すれば、ケツデカと言えるのはマクシアだ」
マクシアに飛び火させるコスタニコ。
「確かにマクシアは巨尻です。が、コスタニコみたく100オーバーはしていません。100オーバーは巨尻を超えた爆尻に分類されます」
「ば、爆尻……」
オウタの指摘に絶句するコスタニコ。
「爆尻であるがゆえ、僕の癖[へき]的にそこを狙わざるを得ず、ミラクルパンチはミラクルケツパンチとなってしまったのです」
「……」
二の句を継げないでいるコスタニコであったが、どうにか抗弁を試みる。
「た、確かに100を超過している事は認めるが、ほんのちょびっとだけだ」
「108で、ほんのちょびっとだけと言い張るとはおこがましい」
「おい! 具体的な数値を口に出すのは止めろ!」
声を荒げるコスタニコ。
「まあ尤も114あるうちの嫁さんの敵ではないですけどね」
「何の情報だよ……」
「コスタニコもマクシアも二人とも巨乳ですけど、あなたは胸より尻の方が大きいですから」
「なっ!」
「その点と爆尻である点を合わせて、ピッチリ横分けケツデカねえさんの称号は、コスタニコにこそ相応しい」
「くっ……」
屈辱で顔をしかめるコスタニコは、
「私がピッチリ横分けケツデカねえさんなら、マクシアは私より胸のサイズが1センチだけ大きいから彼女は、ピッチリ目隠しチチデカねえさん、じゃないか!」
と再びマクシアに飛び火させた。
「そもそも今私がこんな目に遭っているのは、ピッチリ目隠しチチデカねえさんが悪いんだ。あの女が、生体ユニット化されたオウタは不要な部位をすべて切除されパッケージングされているからもう死んでいる、等という恐ろしい事を言い出すから、リーダーがそれを信じて万物腰斬が発動してしまったんだ。あの発言が無ければ私はイャッハーされる事もなく、計画は上手くいっていた。ピッチリ目隠しチチデカねえさんの所為で全部台無しだ!」
コスタニコの意見は正鵠を射ていた。
確かにマクシアによるあの彼女らしい見解の発言が無ければ、コスタニコの計画はつつがなく進行し、ジェノサイドは実行されていただろう。
つまりマクシアは全他種族の生命をあまねく救ったのであった。
流石はマッ女様である。
憤っているコスタニコの側に、そのマッ女様が音も無くスーッと接近していった。そして、
「そのピッチリなんとかっていう呼び方、止めてもらえますか」
と間延びさせないハッキリとした言葉で諫めたのである。
先刻のミラクルケツパンチのとばっちりでマッパにされた時も、マクシアはいつものように間延びした喋り方をしなかった。
私の分析力を以て察するに、どうやらマクシアにとって自身が性的対象となる言動は断固NGであり、そういった事をされるとガチになってしまうようなのである。
キッパリ毅然と警告してくるマクシアは、圧が凄かった。
コスタニコは圧倒されてしまい、
「あ、はい」
と答え、二度とピッチリ目隠しチチデカねえさんというワードを使う事は無かったのである。
そんなこんなで、私達は塩平原の中心へ到着したのであった。




