≪付録・急1≫
アルティメッツ・コスタニコ撃破後、気絶している彼女の処遇をどうするか話し合いが持たれた。
ドラジドの末裔であり、その遺志であるジェノサイドに取り憑かれた恩知らずの極レイシストにして核融合反応アクセス権持ち、という超危険人物である。
世のため人のためを思うのであれば、もはや殺す以外に選択肢は無いのだが、彼女に二度も殺害されかけたイェンは、
「殺さない。何があろうと仲間は絶対殺さない。コスタニコは陰で俺達を利用していた裏切り者だけれども、これまで一緒に冒険し、生死を共にしてきた一蓮托生の仲だ。彼女はパーティに大きく貢献し、何度も窮地から救ってくれた。コスタニコがいなければ、この中で今ここに存在しないメンバーもきっと出ていただろう。だから俺は背かれ、恩を仇で返されても、彼女は仲間であると思ってしまうんだ」
と主張したのである。
「心優し、アトムかよ」
オウタは異世界ネタと思しき所感を述べていた。
では、コスタニコを殺さないとして、かといってこのまま逃がす訳にもいかないので、どうするのかという話になるのだが、リーダーのイェンは、
「この大穴の底へ行ってみよう」
と提案した。
「現存するすべての大魔王が潜んでいたという事実から考えて、この大穴の底には必ず重大な何かがある。人知も及ばない程の何かが。その何かがコスタニコの件を解決する切っ掛けになってくれるかもしない」
私は歴史家志望として、このラストダンジョンの奥底に一体何があるのか大変興味があったので、一も二もなくイェンの案に同意したいところではあったが、一旦冷静になり、
「けれども今のこの状況のパーティで、底を目指すのは危険過ぎやしないか?」
と懸念を口にした。
核融合反応アクセス権を持つアルティメッツ・マクシアがいる。
マクシアと二身一体となれば、忍法:核融合反応の術を使えるオウタがいる。
なので、エネルギー源的には恵まれ過ぎている程であるが、そのエネルギーを攻撃に利用できるのが一刀剣士のイェンしかいないのである。
もし残存している四体の大魔王が同時襲撃してきたり、さらには、まだ見ぬ未知の強敵が出現したりしたなら、イェンの剣一本だけで対処していくのは極めてリスキーである。
そして何より危ういのが、コスタニコという爆弾を抱えている事であった。
この油断も隙も無い酷薄女は、戦闘が発生して、私達の気が自身から逸れた瞬間、確実に牙を剥いてくるであろうから。
私の危惧に対してイェンは、
「大丈夫だ、問題ない。このダンジョンで五体の大魔王を退けてみせた俺達がこれ以上襲われる事は無いだろう。だからもうバトルは起こらない」
と答え、
「俺の直感がそう告げている」
と、その答えの根拠を述べたのであった。
未知が満ち満ちたメイデンダンジョンにおけるイェンの直感は、十傑集をファーストペンギンへと導いた要因の一つでもあるので、信頼できた。
私達はリーダーの提案に従う事にしたのである。




