≪付録・破3≫
イェンは視線をマクシアへと向けた。
「渡した核融合反応アクセス権の事なんだけど……」
彼は苦笑を浮かべ、
「正直、俺もよくわかっていないんだ」
と言った。
「え~、私、なんだかとんでもない状態になっているんですけど~」
困惑するマクシア。
イェンの説明によると、火の三連急にて大魔王を討った後、突如として頭の中に謎の声が聞こえてきたそうである。
声曰く、
『聞こえますか……あなたの脳に直接語りかけています。本来ならこのような事はしないのですが、イレギュラーが発生したため特別対応を行っています』
声曰く、
『大魔王は、この大地の奥深くで行われている核融合反応からエネルギー供給を受けられる核融合反応アクセス権を所持しています。大魔王を倒した者には恩賞として、その核融合反応アクセス権が与えられる仕様になっています』
声曰く、
『ですが、あなたは既にその能力を所持しています。あなたが大魔王を討った力を発現させた時、一時的ではありますが、核融合反応にアクセスし、エネルギーを受け取るのを確認しました』
声曰く、
『恒常的と一時的の違いはありますが、仕様上、同じ人物に同じ権限を付与する事は出来ません。イレギュラーです。この事態に対して、あなたに代案を提示します。あなたが受けるはずであった核融合反応アクセス権を、指名した他の人物に譲渡する権利をあなたに与えます。ですので指名してください』
当時のイェンは万物腰斬発動による覚醒効果の副作用に苛まれている状態であったため、突然このような話をされても、それを理解して返答するなど出来るはずもなく、無回答のまま気絶してしまったのであった。
さらに副作用の記憶障害で、この話自体を忘却していたのである。
それがフラッシュバックによって記憶が戻った時、この件も思い出し、そして石化したオウタが粉々になってしまったが魔力不足で治せないという事態に直面したので、幻聴の可能性もあったが信じて一か八かやってみたところ、現状のような結果となったのであった。
イェンの話から、二つの事柄が明らかとなった。
一つ目は、大魔王の無限の個体保有魔力量の秘密である。
大魔王は、核融合反応アクセス権なるものを持ち、大地の深淵で行われている核融合反応からエネルギー供給を受けられる魔物だったのであった。
そして大魔王を討った者にはその権限が授与される。
伝説にある、
『其は大量破壊兵器たる魔物達の王、すなわち大魔王なり。大魔王は万夫不倒なり。大魔王を倒せし者には大いなる力が与えられる』
の一節、
『大魔王を倒せし者には大いなる力が与えられる』
は間接的な暗示などではなく、そのまま直接的な意味だったのであった。
二つ目は序論にて述べた、我々の世界では大地の核融合反応のエネルギーを人の営みに活用する試みは成功していない、という事実の否定である。
魔法を使うのと同じで、超能力の使用にも魔力は消費される。
万物腰斬という、防御不能・回避不能・効果範囲広大・射程距離長大・腰あらばすべて斬る、という常軌を逸したオーバースペックを発動させるためには、当然相応の膨大な魔力が必要となる。
そこで超々能力開発計画の研究者達はその魔力を賄うためイェンに、大地の核融合反応からエネルギーを引き出せるようにする、という人体実験も施していたのであった。
実験は限定的に成功しており、イェンは万物腰斬行使時だけ核融合反応にアクセスでき、そのエネルギーを活用した我々の世界における初の事例となっていたのである。




