≪序論・背景・世界情勢2≫
ここでドラジドが、最も優れた最高の生物である人間とは有無種の事である、と主張した根拠について言及していく。
彼の根拠とは、魔法技術において他のどの種族よりも有無種が最も進歩していたから、という一点のみであった。
当時、有無種の魔法技術は他種族の少なくとも100年先をいっていた、との事である。
魔法技術が甚だ進んでいるのだから有無種こそ最も優れた最高の生物である人間、という理屈である。
幼子でも理解できる、単純明快な理屈である。
非の打ち所がない完全無欠の根拠であると言える。
だがしかし、私はこの根拠に異を唱える。
有無種である私が神君の主張に反論すれば非国民扱いされることになるのだが、敢えて言おう。
ドラジドは間違っている、と。
まだ志望ではあるが、歴史家としての私の持論をこれより展開していく。
魔法技術において有無種が圧倒的に進歩していたのは、最も優れた最高の生物だからでは決してない。
前の項目にて述べたように、魔法は魔物を研究する事によって得る事が出来た技術である。
それすなわち、多くの魔物に接触すればするほど、多くの魔法技術を取得する事が出来るという事である。
ここでジスモード大陸における有無種の領土の形を思い浮かべて頂きたい。
極めて横長である。
各種族の領土は大なり小なり魔界と接触しているのだが、有無種は非常に横長な領土ゆえ、段違いで魔界と接しているのである。
これにより何がもたらされるのか。
それは、魔界は魔物の生息地ゆえ、必然、有無種は魔物と接触する頻度が圧倒的に増えるという事である。
繰り返すが、多くの魔物に接触すればするほど多くの魔法技術を取得する事が出来る。
よって、有無種は技術革新が頻繁に起こるようになったのである。
結果、他種族と100年以上にも及ぶ魔法技術格差が生じたのであった。
つまり、有無種の魔法技術が進歩していたのは、
【その領土が他種族と比べてこの上なく横に長かったという地理的要因】
の賜物であって、最も優れた最高の生物だったからではないのである。
以上より、魔法技術が甚だ進んでいるのだから有無種こそ最も優れた最高の生物である人間、というドラジドの理屈は間違いとなるのである。




